全国燗酒コンテスト2026から見える日本酒の新しい温度感

8月4日、「全国燗酒コンテスト2026」の審査会が行われ、この度、その結果が発表されました。17回目となる今回は、全国227社から971点が出品され、54名の審査員がブラインドで審査。最高金賞51点、金賞251点、推奨186点が選ばれました。前年の2025年は230社・939点、最高金賞50点、金賞237点でしたから、出品数は32点、金賞以上の受賞数は15点増えています。燗酒への関心そのものが、少なくとも出品という形では衰えていないことが分かります。

しかし、今回の結果で注目したいのは、単純な出品数の増減ではありません。実は「燗酒とは何か」という考え方そのものが、少しずつ変わっているように見えるのです。

2024年のコンテストは237点の「お値打ちぬる燗」、237点の「お値打ち熱燗」など、価格帯と温度を軸にした5部門構成でした。最高金賞は全体で48点。受賞酒を見ると、「本仕込 浦霞」「開華 純米酒」「特別純米 北秋田」「和香牡丹 福貴野」など、いわゆる食中酒として親しまれてきたタイプが目立ちます。

2025年になると、出品は939点へ増加。さらに「お値打ち」と「プレミアム」を分けながら、にごり酒、古酒、樽酒などを対象とする「特殊ぬる燗部門」が設けられました。最高金賞には「澤乃泉 普通酒 CLASSICラベル」「北鹿 本醸造 生酛」「瑞鷹 純米にごり酒」などが選ばれています。つまり、燗酒は「昔ながらの普通酒や本醸造を温めるもの」だけではなくなりつつありました。

そして2026年、その傾向はさらに明確になります。今年は7部門へ拡大され、「極上お値打ちぬる燗」「極上お値打ち熱燗」「プレミアム燗酒」「にごり酒」「古酒」が独立しました。特に最高金賞を見ると、「羽陽錦爛 純米大吟醸 雪女神40」「純米大吟醸 善祥」「作 穂乃智」「紀土 無量山 純米吟醸」など、従来なら「燗より冷酒」というイメージを持たれやすい吟醸系・高価格帯の商品が並びます。これは重要な変化です。

燗酒の進化とは、「熱くしてもおいしい酒」が増えたことだけではありません。むしろ、「この酒は冷やして飲むもの」という固定観念が崩れ、酒質に合わせて温度を選ぶ時代になってきたことに意味があります。実際、2026年の最高金賞には「菊水の淡麗甘口」「大吟醸 越後桜」のような商品が「お値打ちぬる燗」で選ばれています。

一方、「一ノ蔵 四段仕込特別純米酒」「からくち 浦霞」「上撰 白鶴」などは「お値打ち熱燗」で評価されています。つまり現在の燗酒は、「熱燗」という一つの飲み方ではありません。42~45℃で香りや旨味を開かせる酒もあれば、50~55℃でキレや力強さを引き出す酒もある。そして、純米酒、本醸造、吟醸、大吟醸、にごり酒、古酒まで、その対象は広がっています。

2024年から2026年への変化を見ると、燗酒は「伝統への回帰」ではなく、むしろ日本酒の温度設計を自由にする方向へ進んでいるのではないでしょうか。

冷酒だけでは分からなかった香りや旨味が、温度を変えることで姿を現す。そう考えると、燗酒は古い飲み方なのではなく、日本酒をもう一度発見するための新しい方法なのかもしれません。

秋から冬に向かうこれからの季節、「燗酒を飲む」のではなく、「この酒は何度で一番面白くなるのか」と考えてみる。2026年の全国燗酒コンテストが示しているのは、そんな日本酒の楽しみ方の広がりなのです。

日本酒好き注目!おいしい地酒が飲める全国のおすすめ旅館一覧(温泉宿からビジネスホテルまで)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA