「危険なので真似しないで」がSNSで大バズり!カステラと日本酒の衝撃マリアージュが示す新ペアリングの時代

10月21日に投稿された菊水酒造の公式X(旧Twitter)「カステラに日本酒を染みこませてはいけません。止まらなくなります。危険なので真似しないように。」という『警告』が、SNS上で爆発的な話題を呼んでいます。特に同社の代表銘柄である「ふなぐち 菊水一番しぼり」とカステラを合わせた短い動画は、多くの日本酒ファンやスイーツ愛好家の好奇心を刺激し、試す人が続出。その結果、賛同と驚きの声が相次ぎ、「危険すぎる」「まさに禁断の味」といった感想と共に広く拡散され、投稿は一躍、大きな注目を集めることとなりました。

「危険な組み合わせ」が証明した日本酒の多様性

この背景には、消費者の間で高まる「自由で新しい日本酒の楽しみ方」への希求があると考えられます。伝統的な和食とのペアリングが主流だった日本酒の世界に、「スイーツ」という意外な組み合わせが斬り込んできたことは、その固定概念を打ち破る象徴的な出来事と言えるでしょう。

一般的に、濃厚な甘さを持つカステラには、同じく濃厚な甘口や熟成古酒などが合うとされてきました。しかし、菊水酒造が推奨した「ふなぐち」は、フレッシュで濃厚ながらも力強いアルコール感を持つタイプです。このアルコール感が、カステラのバターや卵の風味、そしてザラメの強い甘さを「キレ」で引き締めつつ、同時に日本酒由来の「米の旨み」とカステラの「旨み・甘み」を完璧に融合させます。この絶妙なバランスこそが、「止まらなくなる」という中毒性を生み出した最大の理由だと推察されます。

今後の日本酒ペアリングが目指す「三位一体」

このカステラ事件は、これからの日本酒ペアリングのトレンドを予見させるものです。近年の外食産業では、日本酒とフレンチ・イタリアン・中華といった異ジャンルの料理を合わせる「SAKEペアリングレストラン」が人気を博しています。これは単に料理と酒を並べるのではなく、それぞれの要素を深く理解し、相乗効果で全く新しい味わいを創出する「マリアージュ」を追求する動きです。

ここにスイーツが加わろうとしているわけですが、以下の三つの要素が鍵となると考えられます。

【脱・和食依存】

伝統に囚われず、チョコレート、チーズ、スパイス料理など、多様な食材との組み合わせに積極的に挑戦する姿勢です。今回のカステラは、その一つの成功例と言えるでしょう。

【要素の分解と再構築】

料理と日本酒を、香り・酸味・甘み・旨み・アルコール度数といった個々の要素に分解し、「温度」や「濃度」まで緻密に調整して合わせるプロの技術が、より重要になります。

【情報発信とコミュニティ】

蔵元や飲食店が、SNSなどを通じて新しいペアリングの「発見」をエンターテイメントとして発信し、消費者との双方向のコミュニケーションでトレンドを作り上げていくことが、市場の拡大に不可欠となります。


菊水酒造の投稿は、日本酒の持つ無限の可能性を、遊び心とユーモアを交えて世に知らしめました。「危険」というキャッチーな言葉が、新たな「発見」への扉を開き、日本酒の楽しみ方を大きく広げるきっかけとなったことは間違いありません。日本酒が今後、和食だけでなく世界の食卓を彩る存在となるためにも、こうした自由な発想と発信が、ますます重要になってくるでしょう。

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「浄酎-JOCHU-」とは何か?日本酒が、新たな形で動き出す

ナオライ株式会社が手がける新ジャンルの和酒「浄酎-JOCHU-」が、2025年10月29日から12月1日までの期間、東京・銀座のGINZA SIX地下2階に期間限定ショップをオープンしています。高級商業施設という舞台で、蒸留によって生まれた『新しい日本酒のかたち』を提案するこの展開は、単なる販売イベントにとどまらず、日本の酒文化の進化を象徴する試みとして注目されています。

「浄酎-JOCHU-」とは

「浄酎-JOCHU-」は、ナオライ独自の低温浄溜®という技術で、純米酒を丁寧に蒸留して造られるお酒です。一般的な焼酎やスピリッツと異なり、原料に使用する日本酒の香味を繊細に保ちながら雑味を抑え、アルコール度数を約41度にまで高めています。蒸留によって生まれる透明感と、熟成による柔らかな口当たりが共存し、従来の蒸留酒にはあてはまらない、新しい味わいを実現しています。

ナオライの創業理念は「時をためて、人と自然を醸す」というものです。単に酒を造るのではなく、自然と人、そして時間の流れそのものを味わいとして表現しようとしています。なかでも「浄酎-JOCHU-」の大きな特徴は、ワインやウイスキーのように、時の経過が味わいを変化させる点にあります。消費の即時性を重視しがちな現代社会において、「時間を飲む」という発想は、日本的な熟成美を現代的に再定義する試みでもあります。

「浄酎-JOCHU-」の未来

今回のGINZA SIXでの出店は、その哲学を都市空間で体験してもらう貴重な機会といえます。高級ブランドが並ぶ銀座の中心において、伝統的な酒文化の枠を超えたクラフトスピリッツとしての日本酒を発信することで、従来の日本酒ファンだけでなく、ワインやウイスキーを愛する層、さらには海外の観光客にもアプローチできる構成となっています。

また、「浄酎-JOCHU-」は、国内外のサステナブルな酒造りへの関心の高まりにも呼応しています。使用される日本酒は、地域の酒蔵が造った純米酒であり、その副産物である酒粕や米も無駄なく活用されています。ナオライは広島県・三角島を拠点に、地域の自然循環の中で発酵文化を育むプロジェクトを展開しており、「浄酎-JOCHU-」もその延長線上にあるプロダクトです。自然との共生を掲げたブランド哲学が、酒という嗜好品を通じて社会や環境にポジティブな影響を与えようとしているのです。

総じて、「浄酎-JOCHU-」は、伝統の延長ではなく、未来の和酒を創る挑戦です。日本酒の香りを残しながらも、アルコール度数や熟成の深みでスピリッツのような余韻を生み出す。和と洋、伝統と革新を架け橋のように結ぶこのお酒は、日本酒を世界にどう発信していくかを示す、一つの象徴的な存在になるかもしれません。銀座の街で、その『時を飲む』体験がどのように受け止められるか、今後の展開に大きな注目が集まります。

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【棚田×日本酒の新潮流】土地と人がつながる酒造りの現在地

近年、日本各地で棚田を活かした酒造りに取り組む酒造が増えてきています。急峻な地形に段々と広がる棚田は、農村文化の象徴であるだけでなく、寒暖差や水はけの良さなど、酒米栽培に適した環境条件を備えていることが再評価されています。人口減少により棚田の維持が難しくなる地域が増える中、酒蔵が棚田米を用いることで農地の保全に貢献し、地域のストーリーを酒に乗せて発信できる点が大きな魅力となっております。

こうした流れの象徴的な事例として、生酛造りで知られる大七がリリースした純米酒「西谷棚田」が挙げられます。福島県二本松市の美しい棚田で栽培された米を用いた同作は、単なる地域限定酒ではなく、棚田という文化景観そのものを味わう酒として注目を集めています。

『物語』を醸す酒造り

棚田を活かした酒造りの広がりは、日本酒が「ただ飲むもの」から「土地や人とつながる体験」に変化していることを示しています。かつては酒造が米を購入するだけで成り立っていた関係が、いまや農家と共同で米作りから関わる取り組みへと進化しつつあります。

この物語性を求める動きは、若い世代を中心に大きな支持を得ています。棚田という里山文化が持つ懐かしさ・美しさ・環境価値が、酒の背景として消費者に強く響いているためです。日本酒が地域文化のアンバサダー役を担い始めたことで、酒蔵もまた「どんな土地の米を、どんな思いで醸すのか」を積極的に発信するようになっています。

持続可能な地域づくりの一翼としての酒造

棚田再生に酒蔵が関わるメリットは、文化的価値の継承にとどまりません。棚田は水源涵養や景観保全など多面的な機能を持つため、その維持は地域の環境保護とも直結します。酒蔵が棚田米を使用することで、農家に安定した収入源をもたらし、耕作放棄地の減少にもつながっています。

また、棚田米を使用した日本酒は、観光コンテンツとしても魅力が高い存在です。田植え体験や収穫祭、棚田を望む蔵見学など、体験型の酒ツーリズムが生まれやすく、地域全体の活性化に波及していきます。酒が『』地域を回すエンジン』へと役割を広げている点は、現代の日本酒文化の重要な変化といえるでしょう。

棚田酒が描く日本酒の未来像

大七「西谷棚田」のような取り組みは、今後さらに広がっていくと見られます。気候変動や農業人口の減少が続く中で、酒蔵が原料生産から関わることは、品質向上だけでなく持続可能な仕組みづくりとしても不可欠です。そして、棚田という舞台は、自然・文化・人を結びつける象徴的な存在として、日本酒の新たな価値を生み出しています。

日本酒は今、単なる嗜好品ではなく、『地域の物語を体験するためのメディア』へと進化しつつあります。棚田から生まれる一杯は、土地の記憶、人の営み、そして未来への願いをそっと湛えています。こうした流れは、日本酒が再び地域の中心に戻り、人と人をゆるやかにつなぐ存在へと変化していることを物語っています。

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KURA ONE®の常温生酒缶が始動──新シリーズ〈Re:Local〉が導く日本酒の新時代

日本酒缶ブランド「KURA ONE®」が、新シリーズ〈Re:Local〉をクラウドファンディング「Makuake」にて展開し、常温流通可能な『生酒缶』を含むラインナップを発表しました。200mLの飲み切りサイズを採用し、地域ごとの水・米・醸造文化をそのまま缶に封じ込める構成で、地名を前面に出した『ローカルの再定義』をテーマにしています。さらに、飲食店や宿泊施設向けの卸販売キャンペーンも同時に進め、国内外への流通拡大を狙っています。

KURA ONE®の歩み──『小さな日本酒』が切り開いた新市場

KURA ONE®は、従来の日本酒が持つ「重い・割れやすい・量が多い」という消費上のハードルを取り除き、持ち運びやすく、世界輸送に適した『小さな日本酒』としてブランドを確立してきました。2023年の登場以来、軽量性と堅牢性、そしてデザイン性の高さによって、様々な酒造の日本酒を、世界50カ国以上に流通させています。

今回の〈Re:Local〉では、単に飲みやすい日本酒を超え、土地の個性をパッケージに織り込み、『その土地の一杯』を手に取る体験を目指しています。テロワールを視覚的に理解できるデザイン力は、KURA ONE®がこれまで培ってきた強みの一つです。

注目の常温生酒缶──鮮度の概念を塗り替える挑戦

最も革新的なのは、生酒を常温流通させる技術的挑戦です。通常、生酒は冷蔵管理が必須ですが、KURA ONE®はアルミ缶の持つ高い遮光性・防酸化性と、独自の充填技術を組み合わせることで、開封時に生酒らしいフレッシュな香味が立ち上がる状態を実現しようとしています。

これにより、旅先への持ち運びや贈答の際に冷蔵環境が確保できないケースでも蔵出しの鮮度を届けることができ、日本酒の流通と体験の幅を大きく広げる可能性を秘めています。

スタイリッシュな日本酒缶がもたらす新たな価値

缶という器は、軽さと安全性に優れながらも、「高級酒は瓶」という固定観念と対峙する必要があります。KURA ONE®はここに、洗練されたデザイン、地域名の大胆な配置、そしてストーリー性の高いブランドコミュニケーションで挑んでいます。

さらに今回のMakuakeでは、「濃厚日本酒アイス」とのセット提案など、缶酒を軸にした新たな食体験にも踏み込んでいます。スタイリッシュな200mL缶は日本酒を『持ち歩ける嗜好品』へと変え、若い世代やインバウンド層にとっての入り口としても機能するでしょう。


KURA ONE®〈Re:Local〉は、ブランドが次のフェーズへ進んだことを象徴しています。生酒缶という技術的革新、地域の個性を前面に出したストーリーテリング、そして缶ならではの機動力。この三つを武器に、地方の小さな酒蔵が世界へ直接声を届けるための新しいプラットフォームとなり得ます。

今後は、品質管理の明確な説明と、高付加価値化のためのブランド戦略が鍵となるでしょう。『缶だからこそ生まれる価値』をどこまで高められるか──KURA ONE®の次の挑戦に注目が集まります。

▶ KURA ONE

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グランプリは山口の名酒「五橋」──世界が注目する日本酒コンテスト「MONACO SAKE AWARD 2025」

2025年10月6日、モナコ公国の名門施設「Yacht Club de Monaco」にて開催された「MONACO SAKE AWARD 2025」において、山口県は酒井酒造株式会社の「純米大吟醸 錦帯五橋」がグランプリに輝きました。このコンテストは、モナコと日本の文化交流を目的に始まった国際的な日本酒コンクールであり、世界中の美食家やソムリエが審査に参加することで知られています。

MONACO SAKE AWARDの国際的な位置づけ

MONACO SAKE AWARDは、単なる品評会ではなく、日本酒の国際的な認知度向上と市場拡大を目的とした文化的イベントです。審査員にはモナコ在住の宮廷シェフや一流ホテルのソムリエなどが名を連ね、地中海の美食都市モナコで開催されることで、フランスやイタリアなど欧州の食文化との融合が試され、日本酒の新たな可能性が探求されます。

特に今年のマリアージュ賞のテーマは「モッツァレラチーズ」であり、日本酒と西洋食材の相性を評価するユニークな試みが注目を集めました。これは、海外市場における日本酒のポジショニングを強化するうえで重要な指標となります。

今回のグランプリ受賞で、「五橋」の酒井酒造にとっては、海外の一流レストランやホテルでの採用が期待されるほか、輸出拡大やブランド価値の向上につながると見られます。それは、国際的な評価を得る大きな機会となるだけでなく、審査結果が酒造りの現場にフィードバックされることで、日本酒業界全体にも好影響を与えるはずです。

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「Oriental Sake Awards 2025」の最高賞が決まる──アジア市場が示した次の日本酒基準

アジア最大級の日本酒コンテストとして知られる「Oriental Sake Awards 2025」(以下 OSA)において、最高賞「サケ・オブ・ザ・イヤー」に新澤醸造店(宮城県大崎市)の「あたごのまつ 鮮烈辛口」が選ばれました。アジア全域から集まった審査員によるブラインド審査を経て決まるこの賞は、その年を代表するたった一本の日本酒に贈られる栄誉です。本醸造酒である同銘柄が、アジアの大規模市場で最も高い評価を獲得したことは、日本酒の未来に大きな意味を持ちます。

アジア市場で求められる食中酒としての完成度

OSAは香港を拠点とし、アジアに広がる日本酒ファン・飲食店・ホテル・輸入事業者から高い注目を集める国際日本酒コンテストです。アジアは現在、世界で最も日本酒消費が増えている地域であり、日本酒の新たな市場を形成する存在になっています。そこで最高賞に選ばれたということは、単に品質の高さだけでなく、「アジアの食文化に適応し、現地で愛される可能性が最も高い酒」として評価されたことを意味します。

「あたごのまつ 鮮烈辛口」は、キレのある辛口設計に加え、柔らかな米の旨味がバランスよくまとまり、食中酒としての対応力が非常に高い日本酒です。–5℃での氷温貯蔵によるクリアな味わいが保たれている点も評価され、寿司や日本料理はもちろん、東南アジアのスパイス料理や中華料理との相性も自然と高まります。国や文化を超えてペアリングの幅が広がることが、アジア市場で強く支持された理由の一つといえるでしょう。

本醸造の価値がアジアで再定義される

今回の最高賞には、もうひとつ重要な視点があります。それは、「本醸造」というカテゴリーがアジア市場において高く評価された点です。日本国内では純米・吟醸系が注目されがちですが、アジアでは日常酒としての飲みやすさや、料理に寄り添う万能性が求められ、本醸造の持つ「軽快さ」や「キレ」が強い武器になります。

OSAという大舞台で本醸造酒が頂点に立ったことは、日本酒の国際展開において「高価格帯・華やかさ」だけが評価軸ではないという、新たなメッセージでもあります。「毎日の食卓に合わせやすい味」こそが、アジアの日本酒需要を押し上げる原動力であることを示した結果といえます。

アジア発の評価が日本酒の未来を動かす

日本酒の輸出額の伸びをけん引しているのは中国・台湾・香港・シンガポール・タイなど、アジアの国々です。こうした市場では、現地の味覚や酒類文化を踏まえながら、その土地で選ばれる酒であるかどうかが重要になります。

OSAはまさにその指標となるコンテストであり、そこで最高賞を受けたということは「あたごのまつ 鮮烈辛口」がアジアで最も伸びる潜在力を持った銘柄であると評価されたに等しいのです。今後、アジアの飲食店やラグジュアリーホテルで採用が進む可能性も高く、海外販路の拡大に直結する成果となるでしょう。

地域の蔵からアジアの『日常酒』へ

「あたごのまつ 鮮烈辛口」の受賞は、地方の蔵元が生み出す「日常に寄り添う酒」が、アジアの巨大市場へと橋を架けた瞬間でもあります。華やかさではなく、食卓に溶け込む味わいが選ばれたことは、日本酒文化が次の段階へ進みつつあることを示しています。

アジア最大級のコンテストで生まれたこの結果は、これからの日本酒の海外展開において大きな指標となり、さらなる市場拡大と文化交流の鍵を握るものになるでしょう。

▶ アジア最大級の日本酒コンテスト「Oriental Sake Awards 2025」

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福山雅治ゆかりの名酒「残響」がルクセンブルク酒チャレンジ2025最高賞受賞

10月28日、国際日本酒品評会「ルクセンブルク酒チャレンジ2025」にて、新澤醸造店 の「超特選 純米大吟醸 残響 2024」が、最高賞にあたる「Best Award」に選出されたことが明らかになりました。なお、本コンテストのプラチナ/金/銀賞の受賞結果は、6月17日付で既に発表されており、最高賞の発表は10月末日としていたものです。

コンテストの特徴と意義

「ルクセンブルク酒チャレンジ」は、2022年に第1回が開催され、ヨーロッパにおける日本酒の魅力を発信し、新たな市場開拓を目的とした国際日本酒品評会です。本コンテストの主な特徴は以下の通りです。

  • 審査員にはヨーロッパ各国で活動する「酒ソムリエ」やホテル・レストランの専門家が含まれ、日本酒の香り・味わいだけでなく「現地の料理とのペアリング適性」も評価ポイントとなっています。
  • 審査基準においては、外観、香り、味わい、調和、パッケージの優雅さなど多角的に評価されており、単純な技術醸造だけでなく市場適合性を重視している点が注目されます。
  • ルクセンブルクを拠点に、ベルギー・ドイツ・フランスといった欧州主要市場にアクセスできることから、日本酒の欧州市場参入における「重要な入り口」として位置づけられています。

こうした特色をもつ本コンテストにおいて、最高賞を獲得することは、単なる受賞にとどまらず、対外的な評価・ブランド発信の大きな転機となるものです。

「残響」が示した新しい日本酒の姿

今回、最高賞を受けた「残響」は、単なる技術的な到達点を超えた、日本酒文化の象徴的存在です。その誕生は2009年。新澤醸造店の蔵元と、俳優でありミュージシャンでもある福山雅治氏との親交から生まれました。当時、世界最高とされた精米歩合7%という前人未踏の挑戦から誕生したものです。

以後、「残響」は国内外の主要コンテストで数々の受賞を重ねてきました。ロンドン酒チャレンジやIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)SAKE部門では、ワインの専門家たちから「最も繊細で詩的な日本酒」と評され、すでに国際的評価を確立していました。今回、欧州の中心地であるルクセンブルクで最高賞に選ばれたことは、世界の味覚の一部として認められた象徴的な出来事と言えるでしょう。

それはまた、「残響」が体現する『磨きの哲学』が、欧州の審査員の深い共感を呼び込んだということでもあります。単なる技術競争ではなく、素材と向き合い、心を込めて限界まで磨き抜く姿勢――それはクラフトマンシップと精神性を重んじるヨーロッパの文化とも響き合います。その意味で、今回の最高賞は日本酒が文化として成熟し、共感の言語を世界と共有し始めたことを象徴しています。

この受賞によって、「残響」は再び世界の舞台で脚光を浴びました。今回の受賞を契機に、「残響」は単なるプレミアム日本酒を超え、日本酒の芸術的到達点として国際市場で新たな価値を創出していくはずです。そしてその余韻は、まさに名の通り、世界中の酒席に静かに、しかし確かに響き続けていくことでしょう。

▶ 残響|熟成しても燗にしても美味いプレミアム日本酒

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「梵」、INTERNATIONAL SAKE CHALLENGE 2025で4冠

2025年の INTERNATIONAL SAKE CHALLENGE(ISC) の審査結果がこのほど発表され、福井県鯖江市の加藤吉平商店による銘酒「梵(BORN)」が、7部門中4部門で最高賞である TROPHY(トロフィー) を獲得しました。

この結果は、単なる受賞の枠を超え、「梵」というブランドが改めて世界の審美眼に通用する品質を持つことを証明したものとして注目されています。

INTERNATIONAL SAKE CHALLENGEとは

ISCは、2007年に設立された日本酒の国際審査会で、世界的なワインコンペティション「International Wine Challenge(IWC)」の姉妹大会に位置づけられています。

しかし、IWC SAKE部門とは異なり、ISCは完全に日本国内で開催される国際基準の官能評価会である点が特徴です。審査員には日本国内の酒類鑑定士や蔵人だけでなく、海外のマスター・オブ・ワイン(MW)やワインジャーナリスト、ホテルソムリエなど、非日本人審査員が多数参加しており、評価基準はワインやスピリッツの世界基準と同等の枠組みで運営されています。

他の主要コンクール――たとえば全国新酒鑑評会やSAKE COMPETITIONなどが「技術力」を基準にした美味しさを評価するのに対し、ISCは世界の消費者が感じる美味しさという普遍的基準を軸に置いています。
香味の完成度・熟成バランス・温度変化による味の展開、さらには輸出市場での可能性まで含めた「総合的国際評価」が行われるため、世界で売れる日本酒を見極める場ともいわれます。

世界に知られる「梵」が、再び世界基準で認められた

そんな審査の中で、梵が4部門でトロフィーを獲得したのは極めて異例です。

梵はすでに、海外では「BORN」というローマ字表記で高級レストランや一流ホテルに流通しており、国際的名声を得ているブランドです。1998年の国際酒祭り(カナダ・トロント)ではグランプリを受賞、カンヌ国際映画祭で日本酒として初めて晩餐酒として使われるなど、国際的な舞台に度々登場してきました。

つまり、世界市場での名声をすでに持つ酒が、あえて世界標準の審査に挑み、とんでもない快挙を達成したのです。しかも「梵・天使のめざめ」は、毎年のようにトロフィーを獲得しています。

このように、「評価されるべき酒が、再び評価された」ことは、一見当然のようでいて、実は非常に難しいことです。なぜなら、知名度のある酒ほど期待値が高く、厳しい目が向けられるからです。そんな中でも、「梵」が純米大吟醸・吟醸・純米酒・熟成酒と複数のカテゴリーで最高賞を得たことは、蔵としての総合力と品質維持力の高さを、あらためて世界に示した形です。

今後への影響

今回のISC2025での「梵」の快挙は、「世界に認められた日本酒」が我が国の日本酒コンテストで認められたということであり、日本酒の評価軸が定まってきたことを象徴しています。

これまで日本酒は、国内で高い評価を受けても必ずしも海外で理解されるとは限らず、また逆に、海外で人気を博す銘柄が国内審査で埋もれることもありました。しかし今回、「梵」が世界の舞台で培った信頼と、日本の酒としての完成度を両立させ、「世界品質の日本酒」として再確認されたことは、業界全体にとって大きな意味を持ちます。

この結果は、単に「梵」にとっての栄誉ではなく、日本酒という文化そのものが「国境を越えて通じる味」として成熟したことの証でもあります。今後、「梵」が築いたこの評価の橋を渡るように、多くの蔵が世界と対話しながら、新たな日本酒像を描いていくことになるでしょう。

【TROPHY(トロフィー)受賞酒一覧】

最優秀大吟醸・吟醸酒出羽桜 大吟醸酒出羽桜酒造山形県
最優秀純米大吟醸酒五橋 純米大吟醸50%酒井酒造山口県
最優秀純米吟醸酒會津宮泉 純米吟醸宮泉銘醸福島県
最優秀純米酒梵・純米55加藤吉平商店福井県
最優秀熟成酒梵・天使のめざめ加藤吉平商店福井県
最優秀スパークリング酒梵・ささ雪加藤吉平商店福井県
最優秀プレミアム酒梵・夢は正夢加藤吉平商店福井県
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雪国から生まれる循環の酒──津南醸造が描くサステナブルな日本酒の未来

新潟県津南町に蔵を構える津南醸造は、2025年10月23日から25日にかけて開催されたフードテックカンファレンス「SKS JAPAN 2025」の街中展示企画「食のみらい横丁」に出展しました。同蔵が紹介したのは、純米大吟醸「郷(GO)GRANDCLASS 魚沼コシヒカリEdition」です。雪国のテロワールを象徴する一本として注目を集めましたが、今回の展示で特に焦点となったのは、その味わいだけでなく「サステナビリティ(持続可能性)」というテーマでした。

雪国の気候を生かす「自然冷蔵庫」

津南町は日本有数の豪雪地帯として知られています。冬には積雪が3メートルを超えることもあり、その雪は厳しい自然環境であると同時に、津南醸造にとっては貴重な資源でもあります。蔵では雪室を利用した貯蔵や温度管理を行っており、電力使用量を大幅に抑えています。つまり、雪の冷気がゆるやかに温度を安定させることで、機械による制御を最小限にし、エネルギーコストを削減しながら酒質の安定を実現しているのです。

この「雪の冷蔵庫」は、自然エネルギーを活かした地域ならではの持続可能な仕組みといえます。雪を敵ではなく味方にする発想が、雪国テロワールの根幹にあります。

米・水・人がつなぐ地域循環

「郷(GO)」シリーズの大きな特徴は、原料米に魚沼産コシヒカリを使用している点です。一般的には食用米として知られるコシヒカリですが、津南醸造はその香味の豊かさに注目し、酒造好適米ではなく地元農家と連携して栽培した食用米を用いています。これにより、農家の販路拡大につながり、地域経済の循環を促しています。

また、仕込み水には信濃川源流域の伏流水を使用しています。この清冽な水は雪解けとともに山々から流れ込み、町の水田を潤します。その水が再び酒となって人々の手に戻るという循環こそ、津南醸造が掲げる「雪国サステナビリティ」の象徴です。

フードテックと伝統の融合

今回のSKS JAPANでは、「未来の食」をテーマにテクノロジーと環境への配慮を取り入れた食品が多く出展されました。その中で津南醸造は、伝統的な日本酒という枠組みを超え、自然環境との共生を軸に据えた「地域循環型のフードシステム」としての酒造りを提示しました。

蔵では再生可能エネルギーの導入や廃棄物削減の取り組みも進めています。酒粕は堆肥化され、再び米作りへと還元されます。さらに、瓶や包装資材にもリサイクル素材を積極的に活用し、輸送過程でも二酸化炭素の排出を抑える努力を続けています。

雪国から世界へ──持続可能な味わい

津南醸造の挑戦は、単に環境に優しい酒造りというだけではありません。地域の自然と人の営みを一体化し、未来に継承できる「酒文化の生態系」をつくることを目指しています。

雪国が抱える厳しい気候を逆に資源として捉え、地域全体で支え合う循環のモデルは、世界のサステナブルフードの潮流にも通じます。「郷(GO)GRANDCLASS 魚沼コシヒカリEdition」は、雪国の恵みを凝縮した一本であり、環境と共存する新しい日本酒の在り方を示す『未来の郷土酒』といえるでしょう。

▶ 食卓に寄り添う魚沼の新風:津南醸造「郷(GO)TERRACE」始動

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「堅あげポテト あさりの酒蒸し味」登場──『あまいすえひろ』に寄り添う、日本酒専用スナックの誕生

カルビーが発表した10月27日からの新商品「堅あげポテト あさりの酒蒸しバター仕立て」が、いまにわかに注目を浴びています。その理由は、単なる新フレーバーの登場ではなく、会津若松の老舗・末廣酒造の純米酒「あまいすえひろ」に合わせて開発された『日本酒専用スナック』だからです。これまでの「食に合わせて日本酒を選ぶ」発想から、「日本酒に合わせて食をデザインする」発想へ──日本酒文化が新たなフェーズに入ったことを象徴する一品と言えます。

『あまいすえひろ』のやさしい甘みに寄り添う味設計

末廣酒造は嘉永3年(1850年)創業の老舗蔵で、「伝統を守りながら新しさを創る」姿勢で知られています。その純米酒「あまいすえひろ」は、まろやかな米の甘味と軽やかな酸味が調和する、優しく包み込むような味わいが特徴です。アルコール度数はやや低めで、食中酒としてもデザート酒としても楽しめる柔軟さを持っています。

今回の「堅あげポテト あさりの酒蒸しバター仕立て」は、この「あまいすえひろ」の持つ米の甘味と繊細な香りを引き立てるように、あさりの旨みと酒蒸しの風味を重ね合わせたといいます。あさりのだし感が日本酒の甘みを引き立て、香ばしいポテトの余韻が酒の酸をやさしく包み込む。まさに、「酒をおいしくするための菓子」として設計された逸品です。

『食が日本酒に寄り添う』という新しい文化の兆し

これまでの日本酒ペアリングは、料理に合わせて酒を選ぶのが一般的でした。刺身には吟醸、煮物には純米、天ぷらには本醸造――というように、食材の特性を基準に酒が選ばれてきました。しかし、この商品はまったく逆。まず特定の日本酒があり、その味わいを最大限に引き出すために、スナックの味が組み立てられています。

この発想の転換は、まさに日本酒の楽しみ方を拡張するものです。スナックという軽やかなフォーマットに日本酒の魅力を組み合わせることで、これまで「日本酒は難しい」「食事の時だけ」と感じていた層にも、新しい入り口を提示しています。特に「あまいすえひろ」のようなやわらかな味わいの酒は、女性層や若年層にも人気があり、その層と親和性の高いスナックとのコラボは、非常に理にかなっていると言えるでしょう。

カルビーの「堅あげポテト」は、厚切りのじゃがいもをじっくり揚げることで生まれる独特の硬質食感と、素材の香りを引き出す低温仕上げが特徴です。今回の「堅あげポテト あさりの酒蒸しバター仕立て」では、その技術が活かされ、咀嚼のたびに広がる貝の旨味が、あまいすえひろのやさしい甘香と重なり合います。

日本酒が主役の時代へ──ペアリングの未来

今回のコラボは、食品メーカーと酒蔵の協業が進む中でも特に象徴的な事例です。ワインやウイスキーでは「ペアリングフード」の発想が定着していますが、日本酒でこれほど明確に『銘柄指定』で味を合わせたスナックは、ほとんど前例がありません。

この動きは、日本酒の「嗜好品としての再定義」にもつながります。すなわち、日本酒が料理を支える脇役ではなく、食体験の中心に立つ主役へと変わりつつあるということです。今後、他の酒造や地域限定銘柄とのタイアップも増えることでしょう。

『カルビー×末廣酒造』という異業種のタッグが生み出した「堅あげポテト あさりの酒蒸しバター仕立て」。それは、スナックの世界に日本酒文化を融合させた『味の交差点』であり、日本酒が日常の中に自然に溶け込む未来を予感させる試みです。

日本酒を主役に据えた一袋──その小さな革命が、家庭の晩酌をより豊かな時間へと変えていくに違いありません。

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