Kura Master最高賞に「七賢 星ノ輝 スパークリング」

フランス・パリで開催される日本酒コンクール「Kura Master 2026」で、山梨銘醸の「七賢 スパークリング 星ノ輝」が、日本酒部門の最高賞となる「プレジデント賞」を受賞しました。9月30日に在フランス日本国大使公邸で発表されたもので、今年で10回目となるKura Masterの歴史の中で、スパークリング日本酒がプレジデント賞に選ばれたのは初めてです。

Kura Masterが始まったのは2017年。特徴的なのは、日本で開催される日本酒の品評会をフランスに持ち込んだものではなく、フランスの地で、フランス人を中心としたヨーロッパの飲食業界関係者が日本酒を評価するという点にあります。

第1回は32人のソムリエ、飲食・ホテル関係者、料理学校関係者、醸造関係者らが審査員となり、550銘柄が出品されました。2026年には約125人の専門家が審査し、日本酒だけでも9部門、決勝進出55銘柄という規模にまで成長しています。しかもKura Masterが重視してきたのは、単純な「酒としての完成度」だけではありません。フランスの食文化を背景に、料理との相性、つまりマリアージュを重要な評価軸としてきました。審査員にはMOF(フランス国家最優秀職人章)を持つソムリエや、一流ホテル、レストランの専門家も名を連ねています。ここに、この賞が日本酒にもたらした大きな意味があります。

日本国内では日本酒を「吟醸香」「旨味」「キレ」など、日本酒固有の言葉で語ることができます。しかしフランスで評価してもらうためには、ワインや料理と同じテーブルの上で、日本酒がどのような価値を持つのかを説明しなければなりません。Kura Masterは、その橋渡しを10年間続けてきたといえるでしょう。

今回の「七賢 スパークリング 星ノ輝」の受賞が象徴的なのは、まさにこの変化です。2026年の日本酒部門では、純米大吟醸、純米酒、大吟醸、クラシック酛、古酒、熟成酒などに加えて「サケ スパークリング」が独立した部門として設けられています。そしてプレジデント賞に選ばれた「星ノ輝」は、そのスパークリング部門の審査員賞を経て最高賞に到達しました。

さらに興味深いのは、今年の受賞酒全体です。審査員賞には、8年熟成の貴醸酒、山廃仕込純米酒、無濾過原酒、大吟醸、純米酒などが並びました。決勝進出酒にも江戸元禄期の酒を復刻した「超特撰白雪江戸元禄の酒」や熟成古酒などが含まれています。つまり、フランスで評価されている日本酒は、単純に「華やかで飲みやすい吟醸酒」だけではありません。伝統的な造り、熟成、濃厚な味わい、そして新しいスパークリングまで、日本酒の多様性そのものが評価され始めているのです。

「星ノ輝」の受賞について、審査委員長のグザビエ・チュイザ氏は、親しみやすさと複雑さ、高い技術性を併せ持ちながら、気負わず楽しめる点を評価しています。そして、こうした酒がフランスの人々を日本酒へ引きつけるとの趣旨を述べています。これは、今後のフランスにおける日本酒の方向性を考えるうえで重要です。

日本酒を「日本の伝統文化だから飲んでもらう」のではなく、フランス料理と合わせたときに何が起こるのかを伝える。そのためには、吟醸酒だけでなく、酸味のある酒、熟成酒、貴醸酒、スパークリングなど、料理によって使い分けられる多様な酒が必要になります。実際、2026年にはスパークリング日本酒を対象に、三つ星シェフ、ヤニック・アレノ氏監修の料理とのペアリングを評価する「アリアンス ガストロノミー賞」も実施されています。

Kura Masterの10年間は、日本酒をフランス人に「知ってもらう」段階から、フランスの食文化の中で「どう使うか」を考える段階への変化だったのではないでしょうか。今回の「星ノ輝」は、その変化を象徴する一本です。

これからフランスで求められる日本酒は、単に日本らしい酒ではなく、フランス料理や現地の食材と新しい関係をつくれる酒になっていくでしょう。伝統を守りながら、ワインとは異なる方法で料理を引き立てる。その可能性を、日本酒自身がどこまで提示できるか。Kura Masterの次の10年は、日本酒を「評価する場所」から、日本酒とフランスの食文化が新しい組み合わせを生み出す「実験の場」へと、さらに進んでいくのかもしれません。

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