IWC 2026の最高賞に「天美 純米吟醸 蛍天」

世界的なワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」2026年のSAKE部門で、山口県・長州酒造の「天美 純米吟醸 蛍天」が最高賞となる「Champion Sake」に選ばれました。2026年はIWCの日本酒部門が始まって20周年という節目の年です。さらに今年は、海外の酒蔵を含む457社、1,738銘柄が出品され、過去最多を更新しました。

「蛍天」は、山口県産の酒米のみを使用し、初夏に舞う蛍をイメージした酒です。爽やかな酸味と豊かな味わいが評価され、純米吟醸部門のトロフィーを獲得。そのうえで、各カテゴリーのトロフィー受賞酒の中から頂点に選ばれました。

20年で「日本酒の評価軸」は変わった

IWCのSAKE部門が始まった2007年、出品数は228銘柄でした。それが今年は1,738銘柄です。単純比較すれば、約20年間で出品規模は7倍以上になっています。2025年にも1,476銘柄が出品されており、日本酒への世界的な関心が着実に広がっていることが分かります。

しかも、評価の対象は高級な大吟醸だけではありません。今年のトロフィーを見ると、普通酒、本醸造、純米酒、吟醸、大吟醸、古酒、熟成酒、スパークリングまで幅広いカテゴリーから選ばれています。

つまりIWCは、日本酒を「高精白で華やかな酒」という一つのイメージだけで評価しているわけではありません。日本酒にはさまざまなスタイルがあり、それぞれの個性に価値があるという見方が、世界の評価の中にも定着してきたといえるでしょう。

今年の特徴は「広がり」

2026年に特に注目したいのが、新たに「フレーバー・サケ」部門が設けられたことです。日本酒をベースに果汁や果実、茶などを加えた酒も評価対象になりました。

これは、日本酒の「純粋性」が失われたという話ではありません。むしろ、日本酒を核として、飲み方や楽しみ方をどこまで広げられるのかという、新しい可能性への挑戦です。

一方、最高賞に選ばれた「蛍天」は、山口県産の酒米を使い、土地の情景を感じさせる酒です。世界へ開かれていく一方で、地域性も強くなっている。この二つが同時に存在していることが、今年のIWCを象徴しているように思います。

「世界基準」は日本酒を均質化するのか

海外のコンテストで評価されるようになると、「世界で評価される味」に日本酒が合わせられていくのではないか、という懸念もあります。しかし、今年の結果を見る限り、必ずしもそうとは言えません。

IWC 2026では、長野県の「渓流 吟醸」がGreat Value Champion Sakeに選ばれ、宮城県の新澤醸造店はSake Brewer of the Yearに選出されています。また、茨城、長野、栃木、山口がSake Prefecture of the Yearの候補となっています。地域も酒質も一つではありません。

世界市場に進出するということは、世界に合わせることだけではなく、「自分たちは何者なのか」を世界の評価軸の中で示すことなのかもしれません。

20周年のIWCが日本酒に問いかけるもの

IWCの日本酒部門が始まった2007年、日本酒の海外市場は今ほど大きな注目を集めていませんでした。それから20年。出品数は大幅に増え、海外からの出品も現れ、審査カテゴリーも広がりました。そして今年、最高賞を獲得したのは「天美 純米吟醸 蛍天」でした。

この結果が意味するのは、単に「山口の酒が世界一になった」ということではありません。日本酒は今、「日本国内でどう評価されるか」だけではなく、「世界の人にどのような酒として伝わるのか」を問われる段階に入っています。そのとき重要になるのは、世界に迎合することではなく、日本酒が持っている地域性、季節感、造り手の思想、そして飲む人の体験を、世界に伝わる言葉へ翻訳していくことではないでしょうか。

20周年を迎えたIWCは、日本酒の「世界進出」の到達点ではありません。むしろ、日本酒が世界の酒として次の20年へ踏み出す、その出発点に立っているのだと思います。

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