『古酒』ANA国際線ファーストクラスに初採用~2026年、飛躍の年となるか熟成日本酒

長期熟成させた日本酒、いわゆる「古酒」が、新たなステージへと踏み出しました。2025年12月1日から、熟成酒専門ブランド「古昔の美酒(いにしえのびしゅ)」によるブレンド古酒「INISHIE 匠 No.1 -Doux-」が、ANA国際線ファーストクラスで機内提供されることになったのです。日本酒の古酒が同クラスの正式採用となるのは初めてで、国際的な場で古酒が本格的に評価され始めた象徴的な出来事といえます。

採用された古酒は、1990年代から2010年代初頭にかけて醸造された異なる酒蔵の熟成酒をブレンドした一本で、長い時間が生み出す蜜のような甘みや、穏やかな酸、余韻の深さが特徴とされています。新酒にはない「時が造る味わい」を、世界中の富裕層やビジネストラベラーが体験することになる点は、古酒の価値が国際的に広がるきっかけとなりそうです。

ただし、日本酒の古酒は決して新しい存在ではありません。歴史を遡れば、平安時代にはすでに熟成させた酒が珍重され、江戸時代になると「三年物」「五年物」といった長期熟成酒が上層階級に好まれていました。むしろ、現在一般的な「しぼりたて」や「フレッシュさ」を重視する酒文化のほうが近代的であり、古酒はかつての主流のひとつだったともいえます。

ところが、戦後の大量生産や嗜好の画一化、冷蔵技術の発達により、日本酒は「新しいほうが良い」とされる傾向が強まりました。結果として、古酒は一部愛好家の世界に留まり、一般市場では長らくマイナーな位置付けに甘んじてきました。

その状況を変え始めたのが、ここ10年で急速に進んだ多様化の波です。ワインやウイスキーなど、熟成を価値とする酒の人気が世界的に再び高まり、消費者の受容度が高まったこと、さらに日本酒の海外展開が進み、「複雑さ」や「深化」を持つ味わいが求められるようになったことが追い風になりました。古酒を扱う蔵元やブランドも増え、熟成専用倉庫の整備、ブレンド技術の向上など、産業としての基盤も整いつつあります。

今回、ANAファーストクラスに採用されたことは、この流れが一段階進んだことを示す出来事だといえるでしょう。国際線のファーストクラスは、世界中の高級酒が並ぶ舞台であり、各国のエアラインソムリエが厳格に選定を行います。その席に日本の古酒が選ばれたことは、味わいの個性はもちろん、熟成酒としての完成度が世界基準で認められたことを意味します。

さらに、国際線という「発信力の強い場」で提供されることで、興味をもった海外客が日本で古酒を探す、あるいは輸出商社が新たな商材として扱うなど、実需の拡大にもつながる可能性があります。これまで古酒は「日本酒の中の小ジャンル」とされてきましたが、この出来事は市場の位置付けを変える転機になるかもしれません。

2026年、日本酒の古酒はさらに注目が高まると見られます。熟成技術の進化、蔵元による新シリーズの展開、外食産業でのペアリング提案など、古酒が活躍する場は拡大しつつあります。今回のANA採用は、その流れを加速させるひとつの象徴です。

『時を味わう日本酒』 が、来年はいよいよ本格的に飛躍する一年となるかもしれません。

▶ INISHIE 匠 No.1 -Doux-|国際線ファーストクラスに搭乗する初の日本酒古酒

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ドジャース優勝記念「純米大吟醸 八海山」発売~祝いの記念品として新たな価値を拓く日本酒

新潟県の八海山酒造が、ロサンゼルス・ドジャースのワールドシリーズ制覇を祝して「純米大吟醸 八海山」の記念ボトルを12月1日より限定発売します。今回の商品は日本国内向けに展開されますが、これは決して内向きの施策ではありません。むしろ、日本酒が本来持つ『祝いの文化』を国内から丁寧に発信し、その価値を世界へと自然に広げていくための基盤づくりと捉えることができます。

祝いの酒としての日本酒

日本酒は古くから「祝い」と深く結びついてきました。婚礼の三々九度、祭礼の振る舞い、神事の御神酒、新年の御屠蘇など、晴れの席には必ず日本酒が寄り添ってきました。この背景には、「酒=神聖な媒介」という日本的精神があり、日本酒は特別な瞬間を象徴化する飲み物として位置づけられてきたのです。

今回の記念ボトルは、そうした伝統的意味合いを現代に再提示するものといえます。スポーツの勝利という世界的なハレの瞬間を、日本の『祝いの酒』で祝うという構図は、伝統文化を軽やかにアップデートする試みでもあります。

国内向け展開がもつ意図と記念品としての可能性

今回の商品が国内向けであるのは、「記念酒」という文化の原点を国内でしっかり提示したいという意図が読み取れます。日本酒の祝い文化に最も共鳴するのは、日本の生活文化を知る国内の消費者です。まず国内市場で「記念酒としての日本酒」の存在価値を再認識してもらい、その文脈を確立することが、世界展開においても説得力を持つ土台になります。

つまり、内向きではなく文化の整備としての国内展開なのです。このステップによって、日本酒が「祝いの象徴」として持つ文化的ストーリーが、より明確で力強いものになります。

また、今回のドジャース記念ボトルは720mlで展開されますが、今後は記念品としての側面をより拡張するために、容量やボトルデザインの柔軟性を持たせることも期待できます。たとえば、「ディスプレイ向けの少容量ボトル」「コレクション性を高めたシリーズ化」「チームカラーやイベントごとのラベル変更」「ギフトボックスや限定刻印の導入」などは、祝いの場面や贈答文化の多様化に寄り添う手法として有効でしょう。

スポーツ記念品の多くがバリエーションを多層化することで市場を拡大してきたように、日本酒も同じアプローチが可能です。特に、日本酒ボトルは飾って楽しめる工芸性を持つため、記念品としてのポテンシャルが非常に高いジャンルといえます。

祝いの心を世界へ

今回の記念ボトルは国内向けですが、その存在はやがて海外にも波及するでしょう。ドジャースファンやスポーツ文化に親しむ層を通じて、「日本では特別な瞬間に日本酒で祝う」という文化が自然と広がる可能性があります。

海外での日本酒人気が高まりつつある中、『祝いを象徴する特別な酒』という文化的価値を伝えられる点は大きな強みです。今回の取り組みは、そうした文化価値を国内から丁寧に築き上げ、将来の国際的展開へとつなげる第一歩となるでしょう。

八海山のドジャース優勝記念ボトルは、日本酒が持つ本質的価値『祝い』『節目』『喜びの共有』を改めて浮かび上がらせる取り組みです。そしてその価値は、記念品という形を得ることでさらに広い層に届く可能性があります。容量やデザインの柔軟化を含め、今後の展開次第では、日本酒が「世界中の祝いの場に並ぶ記念の酒」として存在感を高める未来も想像できます。

今回の限定発売は、その未来に向けた小さくも意味深い一歩といえるでしょう。

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【緊急発売】ミスから生まれた日本酒――飯沼本家『甲子 酒々井の諸事情』が示した誠実な酒造りの姿

千葉県酒々井町の老舗酒蔵・飯沼本家が、2025年12月中旬に「今季限り」の特別酒『甲子 酒々井の諸事情』を発売すると発表しました。22年ぶりに発生した醸造ミスをきっかけに、本来であれば廃棄されてもおかしくなかったもろみを、蔵人たちの試行錯誤によって商品化に導いた事情ありの一本です。

ミスの発端は、同蔵で最も売れる人気商品「酒々井の夜明け」用のタンクに、隣で仕込んでいた普通酒用の「四段用蒸米」と「醸造アルコール」が誤投入されたことでした。結果、本来は純米大吟醸となるはずだった醪が、予定と大きく異なる組成になり、発酵停止や酵母死滅の危険もあったといいます。

廃棄ではなく『挑戦』を選んだ蔵人たち

蔵人たちは諦めることなく、追水による酵母の再活性化や温度管理を続け、発酵を持ち直すことに成功。最終的に白麹を用いた麹四段でクエン酸を補い、甘味と酸味のバランスを調整することで、日本酒として成立する味わいに仕上げました。

酒質は「普通酒(生酒)」となり、アルコール度数15%、日本酒度は-13.1。非常に甘みの強い味わいでありながら「醸造アルコール感が控えめ」という予想外の特徴も見られたとのことです。

このような大きなトラブルから商品化に至った背景には、原料・人手・時間といった資源を無駄にしないという観点だけでなく、「失敗を隠さず伝える」透明性へのこだわりが見て取れます。

ミスを公表して商品化するという選択の意味

一般的に製造ミスは伏せられるものですが、飯沼本家はあえて詳細を公開し、「今回限りの一本」として世に出します。これは、蔵としての誠実さを示すだけでなく、ストーリーを重視する現代の消費者に向けた、新しいコミュニケーションの形でもあります。

さらに、本来の規格から外れたことで生まれた『唯一無二の香味』を楽しんでもらうという提案でもあり、限定商品としての価値も高まっています。

もちろん、「ミスの酒」を商品化することにはリスクも伴います。しかし、丁寧な説明・数量限定・品質管理を徹底することで、不安を払拭しながら新しい価値の提供を実現した点は、他蔵や食品業界にも示唆を与える事例といえるでしょう。

一期一会の味わいが市場へ

『酒々井の諸事情』は、1.8Lが3,000本、720mLが15,000本の限定販売。二度と再現できない『事情のある酒』として、酒好きの間で話題を呼ぶことが予想されます。

飯沼本家がミスを恐れず公開し、挑戦し、価値に変えた今回の取り組みは、透明性の時代にふさわしい新たな酒造りの姿と言えるでしょう。今後、この一本がどのように受け止められるか、注目が集まります。

▶ 甲子 酒々井の諸事情|醸造中のトラブルによって偶然生まれた一回限りの限定酒

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日本酒成分分析が開く新時代──科学技術が醸造にもたらす変革と、分析機器開発の重要性

日本酒造りの世界に、科学技術を起点とした新たな潮流が生まれようとしています。高知県の司牡丹酒造が、高知大学と共同で「糖・酸・アルコールを1台の機器で同時分析できる世界初の分析方法」を実用化し、新商品のスパークリング純米吟醸酒「幸先」を誕生させたというニュースは、その象徴的な事例として注目を集めています。これまで酒造の現場では、主要成分を把握するために複数の装置を使って分析する必要があり、測定にかかる時間やコスト、設備のスペース、担当者の専門知識といった負担が、特に中小規模の酒蔵の醸造設計に大きく影響してきました。

今回の新しい分析方法は、そうした従来からの課題を根本から見直し、リアルタイムかつ低コストで成分変化を追跡できる環境を整えるものです。醸造中の糖・酸・アルコールの推移は、味わいの骨格や香りの印象、発泡の度合いや余韻の長さといった、酒の性格を形成する重要な要素です。しかし、小規模蔵にとって高精度の分析環境を整備することは難しく、経験値と職人技に依存せざるを得ないことが多くありました。今回の取り組みは、分析機器の技術革新が醸造の「選択肢」を拡張し、蔵の規模に左右されない酒造りを後押しする可能性を示しています。

また、単に効率を向上させるだけではなく、「新しい酒質を生み出すための自由度」を高める点も見逃せません。司牡丹酒造といえば、長年にわたり端麗辛口のスタイルで知られています。しかし「幸先」では、甘味とフルーティーさ、さらに発泡感を備えたまったく異なる方向性を打ち出しました。この挑戦を無理のない精度で実施できた背景には、成分変化を科学的に把握しながら設計することが可能になった技術基盤があると考えられます。つまり、分析機器の導入は「味を管理する道具」であると同時に、「新しい味わいを開拓する装置」にもなり得るのです。

さらに、こうした技術革新は業界全体の構造的な課題にも寄与する可能性があります。日本酒業界では、酒蔵間の格差が拡大しやすい状況が指摘されてきました。資本力や設備の充実度がそのまま商品開発力につながるため、大手と中小の間で技術格差が生まれやすい構造があったからです。コスト面に優れた高度分析手法が普及すれば、少量生産の蔵でも品質と個性を両立させ、新しい酒質への挑戦を継続しやすくなります。国内の酒蔵数は減少傾向にあるなかで、酒蔵の多様性を維持するためにも分析技術の一般化は大きな意味を持ちます。

今後注視すべきポイントは、この技術がどのように普及し、日本酒醸造のスタンダードをどこまで更新していくかという部分です。分析機器の導入しやすさやコスト、他蔵での活用事例の広がり、さらには分析データの共有や標準化といったテーマは、業界の発展に直結します。醸造家の経験と感性を尊重しつつ、科学的裏付けによってより緻密な設計を可能にする技術が浸透すれば、日本酒は味わいの面でも市場戦略の面でも、さらに多様な展開を見せていくでしょう。

成分分析の進化は、日本酒の味の未来を変えるだけでなく、酒蔵の未来を支える技術となりつつあります。その重要性は、今後ますます高まっていくと予想されます。

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お歳暮シーズン注目──富士錦「純米稲穂酒」が示す、日本酒の『文化力』

年末の贈答需要が高まるにつれ、各地の酒造が趣向を凝らしたギフト商品を発表する中で、静岡県富士宮市の富士錦酒造が手掛ける「純米稲穂酒」は、ひときわ異彩を放っています。本物の稲穂を添えた特徴的な装いは、単なる嗜好品の枠を超え、日本酒が持つ文化的価値を再認識させる存在として評価されています。

富士錦酒造は元禄年間に創業し、300年以上にわたり富士山麓の豊かな自然の恵みとともに酒造りを続けてきました。蔵が使用する仕込み水は富士山の伏流水で、軟水特有の柔らかさが酒質にも表れています。また同蔵は、かつて自ら米作を行っていた歴史も持ち、地域の農と酒造りを結びつけてきた「土地に根ざす蔵」として知られています。この背景が、後述する稲穂酒の思想にも色濃く反映されています。

純米稲穂酒の最大の特徴は、酒瓶に実った稲穂が飾られている点です。これは単なる装飾ではなく、「物事が実る」「豊穣を願う」という日本の稲作文化に基づく縁起の象徴です。年の瀬に贈るお歳暮として、相手の一年の労に報い、来る年の実りを祈るという意味を込められる点が、多くの支持を集める理由の一つとなっています。

酒質は純米酒で、米・麹・水のみで醸されます。富士錦らしい澄んだ味わいの中に、米の旨味がしっかりと感じられ、年末年始の食卓にもよく寄り添う設計です。さらに数量限定で仕上げられることから、「特別な相手に贈る一本」としての付加価値も高まっています。

贈答の風習は時代とともに変化しつつありますが、お歳暮文化には「一年の感謝を形にする」「季節の節目を大切にする」といった日本独自の価値観が宿っています。日本酒もまた、単なるアルコール飲料ではなく、祝いの席で用いられ、神事に供えられ、地域文化の核として受け継がれてきた存在です。その意味で、稲穂酒は日本酒の本来的な『文化の器』としての役割をわかりやすく示す好例だといえます。

現代では日本酒のギフトは多様化し、高級路線やデザイン重視、あるいは飲み比べのようなカジュアル路線も増えています。しかし富士錦の純米稲穂酒が伝えるのは、もっと根源的な「贈り物の意味」と「日本酒の文化的原点」です。稲穂を添えるという趣向は、私たちの生活が米作とともにあったことを再認識させ、食文化と季節の感性が連続していることを再確認させてくれます。

お歳暮という習慣がやや形式化しつつある現代だからこそ、文化を伴う贈り物が静かに支持を得ています。「特別な一本に確かな意味を込めたい」と願う人々にとって、純米稲穂酒はふさわしい選択肢となるでしょう。今年の贈り物選びに、静かに光るこの一本を加えてみてはいかがでしょうか。

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広島バレルリレー:「龍勢 Lab. Works. HOP & OAK & RICE」発売!異色の挑戦が示す日本酒の未来

藤井酒造(広島県竹原市)は、革新的な挑戦を続ける銘柄「龍勢」の新たなシリーズ「龍勢 Lab. Works. 」から、11月21日、450本限定で「HOP & OAK & RICE」を発売いたしました。この商品は、日本酒の伝統的な枠組みを超え、ホップ(HOP)、オーク樽(OAK)、そして米(RICE)という異色の要素を融合させた、まさに未来志向の日本酒です。

ホップ由来の柑橘系の爽やかな香りと苦味、オーク樽由来のバニラやウッディな複雑味、そして米が持つ日本酒らしい旨味が、これまでにない独自のテロワールを形成しています。このチャレンジは、日本酒ファンのみならず、ビールやウイスキー愛好家の間でも注目されており、発売前から話題になっていました。

「Hiroshima Barrel Relay Project」とは

この「龍勢 Lab. Works. HOP & OAK & RICE」の製造において重要な役割を果たしたのが、「Hiroshima Barrel Relay Project(広島バレルリレープロジェクト)」です。

このプロジェクトは、広島の地で使われた樽を、日本酒、ビール、ウイスキー、ワインといった異なる酒類メーカーがリレー形式で循環させて使用するという画期的な試みです。

例えば、ウイスキーの熟成に使われた樽を、次に日本酒の熟成に使用し、さらにそれをビールの熟成に使う、といった形で、樽に宿る前の酒の風味や個性を次の酒へと引き継いでいくことを目的としています。これにより、それぞれの酒が持つテロワールに、広島の地で生まれた新たな共通の風味(バレルDNA)を加えることができるのです。

今回の「龍勢 Lab. Works. HOP & OAK & RICE」も、このプロジェクトの一環として、特定の酒を熟成させた後の樽を使用することで、より複雑で奥深い香りと味わいを実現しています。このリレー形式は、広島の酒造業界における相互連携を深めると同時に、地域独自のフレーバーを創出するサステナブルな取り組みとしても高く評価されています。

業界に与える影響と日本酒の未来

「龍勢 Lab. Works. HOP & OAK & RICE」の取り組みは、今後の日本酒業界に次のような影響を与えるでしょう。

概念の拡張と新規層の開拓

ホップやオーク樽といった異素材との融合は、「日本酒とは何か」という概念を根本から問い直し、多様なフレーバーの可能性を示しました。これにより、日本酒を普段飲まない若年層や、海外のクラフトドリンク愛好家といった新規顧客層の開拓に直結します。日本酒が世界の酒類市場で戦うための新たな武器となることが期待されます。

地域連携のモデルケース

「Hiroshima Barrel Relay Project」は、競合となりうる異業種(酒類メーカー)が、一つの樽を媒介として協力し合うという、極めて稀有な地域連携のモデルを提示しました。これは、単なる商品の開発に留まらず、地域全体で「バレルリレー」という新たなストーリーと付加価値を生み出し、広島の酒全体への注目度を高める効果があります。今後、このモデルが全国各地の酒造地域へと波及し、地域ブランド力を向上させる起爆剤となる可能性を秘めています。

「熟成」という価値の再認識

日本酒の熟成はこれまで、特定の銘柄や限定的な手法に留まっていましたが、オーク樽の活用は、日本酒における「熟成」という概念を本格的に市場に定着させる後押しとなります。ウイスキーやワインのように、長期熟成による味わいの変化や樽による個性を追求する動きが加速し、日本酒のラインナップに多様性と深みが増すことが予想されます。


「龍勢 Lab. Works. HOP & OAK & RICE」と「Hiroshima Barrel Relay Project」は、伝統に固執することなく、革新的なアイデアと地域連携をもって未来を切り拓くという、日本酒業界の進むべき道を示しました。日本酒は、米と水だけというシンプルな原料の可能性を追求するフェーズから、異素材・異業種・異文化との積極的な交流を通じて、より複雑で奥行きのある酒へと進化する、「グローバル・クラフトドリンク」の次なるステージへと移行しつつあります。

今後の藤井酒造、そして「Hiroshima Barrel Relay Project」の展開から、目が離せません。

▶ 「龍勢 Lab. Works. HOP & OAK & RICE」(藤井酒造ネットショップ)

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自動運転トラック導入で拓く「日本酒の幹線輸送」──伝統蔵の物流改革が示す未来像

鈴与と月桂冠は、物流スタートアップT2が事業化した自動運転トラックによる幹線輸送の商用運行に参画し、京都・月桂冠物流センターから神奈川・鈴与厚木物流センター間の約420km区間で定期運行を開始すると発表しました。自動運転区間は久御山JCT〜厚木ICで、11月下旬から本格稼働する見込みです。今回の参画は、これまで行ってきた実証実験の成果を踏まえ、既存輸送と同等の品質・安全性が担保できると判断した上でのことです。

背景には、慢性的なトラックドライバー不足と労働環境改革の必要性があります。幹線輸送に自動運転技術を導入することで、運行の安定化や人手依存の低減、長距離輸送時の効率化が期待されます。酒造にとっては、出荷の時間帯や温度管理をより精緻にコントロールすることが可能になり、品質維持の面でもメリットを享受できる可能性があります。

一方で、酒質という繊細な価値を守るための課題も残ります。振動・温度変動、長時間停車時の管理、積載・荷扱いオペレーションなどは自動運転導入後も厳密にモニタリングする必要があります。また、幹線が自動運転に移行しても、最終配送段階のラストワンマイルは人手が中心であり、酒造と物流会社は全工程を通じた連携ルールと品質基準を新たにしなければなりません。

さらに、地域経済や消費者目線での波及効果も注目されます。定期的で予測可能な輸送が確立すれば、遠隔地の小売店や飲食店への安定供給が実現し、地方蔵の販路拡大につながります。逆に、輸送コスト構造の変化は価格や取引条件に影響を及ぼすため、農家・酒造りに関わるステークホルダー全体での適応策が必要です。

総じて、自動運転トラックの商用化は日本酒流通にとって「効率化」と「品質維持」を両立させる大きな転機になり得ます。とはいえ技術は進化段階にあり、レベル4の本格導入までには法整備や安全基準、オペレーション設計の磨き込みが不可欠です。伝統を重んじる酒蔵と先端技術を結ぶ今回の協業は、その実装過程で生じる課題解決のモデルケースとなるでしょう。今後は実運行で得られるデータを基に、品質管理プロトコルやサプライチェーンの再設計が進むことが期待されます。

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櫻正宗が提案する「低アルコール燗酒」が話題に~温めて飲む新スタイルが日本酒文化を変えるか?

老舗酒蔵・櫻正宗は、創醸400年という節目の年を迎え、自らの酒造りの歴史とともに、酒文化の未来に向けた新たな提案を行っております。その中でも特に注目を集めているのが、アルコール度数を5〜10%という低めに抑えながら、燗で楽しむことを前提とした「低アルコール燗酒」の提案です。

同社はこの開発にあたり、「燗酒にした時点で味のバランスが崩れやすい」という従来の低アルコール日本酒の課題を克服すべく、アミノ酸・塩分・有機酸を適切に加えるとともに、温度帯を60℃~70℃と設定することで、飲みごたえと旨みを兼ね備えた『まろや燗』としての新スタイルを確立しました。また、梅干し・昆布・鰹節などの食材を燗酒に浸すことで、同様の風味効果を得られる汎用性も提示されています。

この提案は、健康志向の高まりや飲酒スタイルの多様化と相まって、日本酒の楽しみ方を刷新する動きといえます。まず、アルコール度数を抑えることで「量を控えたい」「翌日を気にしたい」という利用者に向けた安心感を訴求できます。同時に、『燗酒』という日本酒特有の温めて飲む文化を維持・進化させることで、従来の日本酒ファンのみならず、初心者やライトユーザーへの敷居も下げる狙いが感じられます。

さらに、温度を上げて飲む燗酒というスタイルは、寒い季節や室内の落ち着いた時間にぴったりであり、「低アルコール+温める」という組み合わせによって『ゆったり飲む日本酒』という新たな価値を提供しています。これは、かつて「香りを楽しむ冷酒」「食中酒としての常温」などが主流だった日本酒の消費トレンドに、新たな一手を加えるものと言えるでしょう。

また、同社がこの取り組みを「特許出願中」としており、製法・味わい・サービス提案としての新規性にもこだわっている点が、酒造業界全体への刺激となる可能性があります。

一方で、意味深いのはこの開発が「蔵元自身の文化継承と革新」という文脈に位置していることです。櫻正宗は、1625年(寛永二年)創醸、灘五郷に拠点を置く名門酒蔵であり、名水「宮水」の利用、協会1号酵母の発祥といった革新的歴史を持ち合わせています。その伝統の上に、現代の飲酒環境・ライフスタイルの変化を読み取り、「低アルコール燗酒」という形で次の100年を見据えているとみることができます。

この提案が市場においてどの程度受け入れられるか、また他蔵元・日本酒ブランドが追随するのか、注目されるところです。消費者としても、「燗酒=高アルコール・重い」という先入観から解放され、より軽やかに、かつ温かい日本酒という選択肢を得られるというのは歓迎すべき展開と言えるでしょう。

総じて、櫻正宗の「低アルコール燗酒の新しい飲み方」は、伝統と革新の交差点であり、日本酒文化がより広く、多様に楽しまれるためのひとつの指針になる可能性を秘めています。今後、試飲・商品化・流通の動きなども合わせて、その成果が注目されるところです。

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『鍋と日本酒』を再び食卓の定番へ──昔との違いに見る日本酒文化の転換点

冬の食卓に欠かせない鍋料理と日本酒。この組み合わせは古くから親しまれてきた定番ですが、いま改めてスポットライトが当てられています。

日本酒造組合中央会企画『鍋&SAKE SNS投稿キャンペーン』

日本酒造組合中央会は、11月1日から12月15日まで「鍋と日本酒を一緒に楽しもう」をテーマにしたSNS投稿企画「鍋&SAKE SNS投稿キャンペーン」を展開しています。応募方法は、①中央会公式のX(旧Twitter)またはInstagramアカウントをフォロー、②鍋と日本酒がメインの写真を撮影、③ハッシュタグ「#鍋andSAKE」を付けて投稿する、という流れで、投稿にあたっては「人(顔)は入れない」「20歳未満は応募不可」といった条件が設けられています。賞品は抽選で20名に「鍋に合う日本酒(720ml)」が1本贈られるという内容です。

また、同キャンペーンのウェブサイトでは、全国47都道府県のご当地鍋やアレンジ鍋のレシピ、それに合う日本酒のペアリングを紹介し、『冬の定番=鍋×日本酒』という組み合わせを、現代のライフスタイルの中で再び根付かせる提案を行っています。

日本酒が直面する構造変化と鍋の役割

ここで注目すべきなのは、なぜ『昔からの定番』を再提案しているのかという点です。背景には、日本酒消費量の長期的な低迷、若年層の飲酒離れ、居酒屋利用減少による飲酒機会の縮小といった構造的課題があります。こうした状況の中で、家庭の食卓に寄り添う存在としての地位を復活させることは、業界の大きな課題なのです。その課題解決の入り口として、季節性があり、親しみやすい『鍋料理』が選ばれたことは理にかなっていると言えます。

かつての鍋と日本酒は、宴席・酒席・団らんの象徴として「みんなで囲む」「燗酒で温まる」という情緒的な価値が中心でした。しかし今提案されている形は、明らかに異なる文脈を持っています。それは、①自宅・少人数での飲酒スタイルの浸透、②SNSを通じた発信型コミュニケーション、③料理と酒のペアリングへの関心の高まり、という3点です。つまり、「昔ながらの習慣」ではなく、現代的なライフスタイルと接続可能な体験として『鍋×日本酒』が再編集されているのです。

今回のキャンペーンは、日本酒を「特別な酒」から「日常の楽しみ」へ引き戻す試みであり、若年層を含む幅広い生活者に向けた参加型のアプローチが特徴です。投稿という行為によって、家庭の鍋と日本酒のシーンが可視化され共有されることは、日本酒のイメージ刷新に寄与すると期待されます。

一方で、投稿数の拡大や習慣定着、若年層の飲酒機会の創出といった課題も残されています。しかし、『昔の定番』を『今の生活の定番』へとアップデートする視点は、日本酒文化の転換期を象徴する動きでもあります。この冬、鍋の湯気のそばに日本酒が自然に寄り添う光景が、再び当たり前のものとして広がるのか、注目が集まります。

▶ 鍋&SAKE SNS投稿キャンペーン

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杉玉(酒林)が彩る冬支度――歴史と意味を踏まえた現代的役割の広がり

酒蔵の軒先に青々とした杉玉が吊るされる時期になると、冬の酒造りが始まったことを実感する人は多いでしょう。杉玉、あるいは「酒林(さかばやし)」とも呼ばれるこの丸い飾りは、日本酒文化を象徴するアイコンとして広く知られています。しかし、その歴史や意味、そして現代における役割は、あらためて見直す価値のある奥深いものです。

杉玉の起源は室町時代にまで遡るとされ、奈良の大神神社(おおみわじんじゃ)の神事に由来するといわれています。三輪山の杉を神聖視する同神社では、酒造りの守護神として崇敬を集め、酒屋がその御神木である杉の葉を丸めて吊るしたことが始まりだと伝えられています。これがやがて日本各地の酒蔵に広まり、新酒ができた合図として杉玉を掲げる文化が定着しました。

特に、青々とした杉玉が徐々に茶色へと枯れていく変化は、新酒の熟成の進み具合を象徴するものとされ、昔は地域の人々が酒造りの進捗を知る「自然の看板」として機能してきました。つまりこれは、酒造と地域社会を結ぶ重要なコミュニケーションツールであり、酒が地域に根づいた暮らしの一部であったことがうかがえます。

現代においても、杉玉は新酒の完成を示すシンボルとして変わらぬ役割を果たしていますが、その存在感は時代の変化とともに広がりを見せています。酒蔵のブランディングや観光資源として活用されるケースが増え、近年はSNSでの発信を意識した大型の杉玉やライトアップされた杉玉など、視覚的な魅力を強調した演出も見られるようになりました。酒蔵見学や蔵開きイベントが再び人気を集めるなかで、杉玉は「写真映え」する象徴として、国内外の観光客にとっても分かりやすい酒文化のアイコンとなっています。

また、酒蔵以外への波及も進んでいます。飲食店や商業施設、地方自治体の観光拠点が杉玉を設置する動きが広がり、「酒どころ」をアピールする町おこしのツールとして活用される例も増加しています。実際、酒蔵の無い地域でも地域産の杉を用いて杉玉を制作し、自地域の森林資源の活用と伝統文化の継承を結びつける取り組みが進んでいます。これにより、杉玉は酒造りのシンボルにとどまらず、林業再生や地域経済の活性化にまで役割を拡大させています。

さらに、近年のクラフトサケブームにより、都市型醸造所でも杉玉を掲げる事例が増え、伝統と革新が交差する象徴として再評価されています。海外でも杉玉を模したディスプレイが用いられ、日本酒文化の国際的な認知にも貢献しています。日本酒の製造工程や季節性を伝える教育的なアイテムとしても活用され、酒文化の理解を深める役割を担い始めています。

古くは新酒の知らせであり、地域の人々にとっての歳時記の一部であった杉玉は、現代では文化発信・観光・地域振興・国際交流にまで広く応用される存在へと進化しています。冬の訪れとともに酒蔵の軒先を飾る杉玉は、時代を越えて受け継がれる日本酒文化の象徴でありながら、今なお新しい役割を生み出し続けています。杉玉が掲げられるその瞬間、私たちは日本酒の未来をも静かに見つめているのかもしれません。

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