クラフトサケの祭典「猩猩宴 in 男鹿」が、今年も秋田を熱くした

8月9日と10日の2日間、秋田県男鹿市で開催された「猩猩宴 in 男鹿」は、全国からクラフトサケの造り手と愛好家が集い、地域全体を巻き込んだ熱気に包まれました。今年で4回目となるこのイベントは、単なる試飲会や酒まつりではなく、地域の文化や人々の営みと深く結びついた“新しい日本酒文化”の発信の場として注目を集めています。

地域と融合するクラフトサケの祭典

昼の部は、稲とアガベが運営する各拠点「土と風」「SANABURI FACTORY」「シーガール」を舞台に開催されました。ブースには、福島、福岡、長野など全国各地からやってきたクラフトサケの造り手が並び、来場者は杯を傾けながら生産者と直接言葉を交わし、それぞれの土地や造りの背景に触れることができました。クラフトサケの魅力は、その味わいの多様性だけでなく、造り手の個性や地域性が色濃く反映されている点にあります。

夜の部は男鹿駅前広場が舞台。地元の盆踊りとクラフトサケが融合し、太鼓の音と涼風の中、老若男女が一体となって踊る光景が広がりました。お祭りの熱気に包まれながら飲む一杯は、まさに地域と酒が一体となった瞬間を感じさせます。こうした地元文化とのコラボレーションは、地域の魅力を再発見し、外からの来訪者にも強い印象を残すものです。

今年初参加となった「早苗饗蒸留所」では、スピリッツやリキュールといった新しい挑戦が披露され、クラフトサケの世界が日本酒の枠を超えて広がっていることを示しました。従来の日本酒業界は全国規模のブランドや大規模イベントが注目されがちでしたが、こうした小規模かつ創造的な動きが、地域を拠点に確実に広がっています。

地方を元気にする新しい日本酒文化

クラフトサケは今、これまでの日本酒文化とは一線を画す存在感を放っています。伝統を踏まえつつ、自由な発想で新しい製法や味わいに挑むその姿勢は、地域資源や食文化との融合を促し、観光や交流人口の増加にもつながります。「猩猩宴 in 男鹿」もまた、単なる酒イベントではなく、地域を元気にし、人と人をつなぐハブとして機能していました。

主催の稲とアガベ代表・岡住修兵氏は、「男鹿の風土を醸す」という理念のもと、このイベントを通して地域と酒造りの未来を紡ごうとしています。その思いは、来場者や造り手、そして地域の人々の笑顔として会場に表れていました。

クラフトサケの盛り上がりは、単なるブームではなく、日本酒文化の新しい地平を切り開く動きです。そしてそれは、地方に眠る資源や文化を再び輝かせ、地域を元気にする力を秘めています。「猩猩宴 in 男鹿」は、その象徴的な舞台でありました。今後も日本各地でこうした動きが広がり、サケの力によって、地域が活性化していくことがイメージできるイベントでした。

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

インド料理と日本酒が出会うとき~カレーに合う和酒が広げる食の世界

インド料理、とりわけカレーはこれまで、ビールや炭酸飲料と一緒に楽しむことが多い食文化として知られてきました。スパイスの効いた濃厚な味わいをさっぱりと洗い流すビールの爽快感は、長年にわたって親しまれてきた組み合わせです。しかし、近年ではこの常識に変化の兆しが見え始めています。日本酒が、インド料理とのペアリングにおいて新たな革命をもたらす可能性があるのです。

インドで日本酒人気が拡大中! カレーと日本酒の意外なベストマリアージュ

まず注目すべきは、インドの都市部で日本酒人気が急速に拡大している点です。ムンバイやデリー、バンガロール、チェンナイなどの大都市では、和食レストランに限らず、現地のスパイス料理店やバーでも日本酒がメニューに登場することが増えています。現地の食通や若い世代を中心に、日本酒の独特の旨みや繊細な味わいが支持を集めているのです。

ではなぜ、日本酒がインド料理、特にカレーと相性が良いのか。その理由は日本酒の多様な味わいのバリエーションにあります。日本酒は、米から作られ、旨み成分であるアミノ酸や乳酸を多く含んでいます。そのため、まろやかで深いコクがありながら、すっきりとした後味を楽しめます。こうした味わいは、スパイスの複雑な香りや辛味、油分の多いカレーの重さと絶妙に調和します。

例えば、コクのある純米酒は、濃厚なバターチキンカレーやラムカレーの旨みを引き立てます。一方で、フルーティーで軽やかな純米吟醸は、魚介や野菜を使ったやさしい味わいのカレーによく合います。にごり酒は、甘みとまろやかさがスパイスの辛さを和らげ、まるでラッシーのような飲み心地を生み出します。日本酒は冷やしても、温めても楽しめるため、飲むシーンやカレーの種類に応じて多様なマリアージュが可能です。

一方、ビールは基本的に炭酸と苦味が強調された飲み物で、スパイシーな料理をすっきりと流す効果に優れています。しかし、ビールだけではカレーの旨みや香りの深みを引き出しきれない場合もあります。日本酒は飲み進めるほどに料理との調和が深まるため、味わいの複雑さや奥行きをより豊かに感じられるのです。

日本酒ペアリングの広がりとカレーの可能性

この流れは、日本の酒蔵やブランドも認識し始めています。例えば、朝日酒造の「久保田」ブランドは公式サイトで、「暑い夏にこそ食べたいスパイスカレー。日本酒と無印良品のカレーをペアリングしてみた」という記事をアップし、カレーと日本酒の新しい楽しみ方を提案しています。東京・渋谷の「KUBOTA SAKE BAR」では、AIを用いて来店者の味覚タイプを判定し、それに最適な「久保田」の銘柄を提案するサービスも提供。スパイス料理との組み合わせを体験できる場として話題を呼んでいます。

さらに、日本とインドの文化交流の一環として開催される晩餐会などでも、日本酒とインド料理のペアリングが注目されています。南インドの伝統的なカレーに純米酒を合わせることで、料理の奥行きが増し、食事がより豊かな体験になると好評です。このように、日印の食文化をつなぐ架け橋として、日本酒の存在感はますます大きくなっているのです。

カレー×日本酒が世界の新定番に?

総じて、日本酒はインド料理、特にカレーと組み合わせることで、従来の飲み物とは一線を画す新たな味覚体験を提供することが分かってきました。日本酒の持つ多様な表現力と、カレーの多彩な味わいが融合し、世界中の食卓で愛されるペアリングへと進化していくことが期待されています。

つまり、カレーとビールの組み合わせが長年支持されてきた中で、日本酒はその常識に挑戦し、新たな“革命”を起こす可能性を秘めているのです。スパイスの刺激を包み込みながらも、旨みや香りを豊かに感じられる日本酒は、これからのグローバルな食シーンでさらに注目されることでしょう。

近年勢いを増し続けるインドパワー。その熱量を、日本酒が新たな形で支える日が来るかもしれません。

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幻の米「雄町米」とともに歩む日本酒の未来 ― 第16回雄町サミット、最優等賞決定

2025年8月7日、ホテル椿山荘東京で「第16回雄町サミット」が開催され、全国から集まった雄町米を原料とする自慢の酒が一堂に会しました。今年も、吟醸酒部門から純米酒部門、そして新設の燗酒部門まで、多彩な銘柄が競い合い、各部門の最優等賞が決定しました。結果は次の通りです。

  • 吟醸酒部門:㈾杉勇蕨岡酒造場(山形)「純米吟醸 嵐童 雄町」
  • 純米酒部門(精米歩合60%以下の部):相原酒造(広島)「元平 MOTOHIRA yellow」
  • 純米酒部門(精米歩合60%超の部):利守酒造(岡山)「酒一筋 番外」
  • 燗酒部門(今年新設):三冠酒造(岡山)「三冠 和井田 雄町 生酛純米」

なかでも注目したいのは、純米酒部門(精米歩合60%超の部)で最優等賞に輝いた利守酒造です。同蔵は1965年頃、ほぼ姿を消していた雄町米の復活に挑み、4代目蔵元の手で見事に蘇らせたことで知られています。雄町は背丈が高く倒れやすいため栽培が難しく、一時は農家からも敬遠されていました。しかし、その酒質の高さに魅了された利守酒造は、種籾の確保から栽培農家の協力体制づくりまで、地道な取り組みを重ね、ついに幻と呼ばれた米を復活させたのです。

利守酒造は今も雄町への情熱を失っていません。今年7月30日には、「幻の米 雄町酒米物語ファンド」の募集を開始しました。これは雄町米の安定生産と後継者育成を目的とし、支援者と共にこの貴重な酒米を未来へつなぐ取り組みです。雄町米の発祥地であり復活の地でもある岡山から、全国にその魅力を発信し続けています。

雄町米の歴史と特性

雄町米は1859年、岡山は雄町の農家が発見した日本最古の純系酒米品種とされています。現代の人気酒米「山田錦」や「五百万石」のルーツにあたる存在で、芳醇な香りと奥行きのある旨味を引き出す特性を持っています。粒が大きく心白が発達しており、吸水性や蒸し上がりの均一さが醸造家に愛される理由です。その一方で、栽培には高度な技術と手間が必要で、長らく希少な酒米として扱われてきました。

今回のサミットに集まった蔵元の多くは、雄町ならではのふくよかな旨味と滑らかな口当たりを生かすため、精米歩合や酵母選びに工夫を凝らしています。特に燗酒部門での評価は、雄町米の温度変化に強い味わいの深さを証明したといえます。

酒米がブランドをつくる時代

近年、日本酒ファンの間では「どんな酒米を使っているか」が銘柄選びの大きなポイントになっています。かつては精米歩合やアルコール度数が注目されていましたが、今では酒米の品種そのものがブランド価値を持ち、ラベルに大きく記載されることも珍しくありません。
これは、ワイン業界でいう「テロワール」の概念が日本酒にも浸透してきた証拠です。産地の気候や土壌条件が酒米の味に反映され、それが最終的に酒の個性を形づくります。雄町米はまさにその典型例で、岡山県産雄町と他県産雄町では風味の表情が変わることも多いのです。消費者は「この蔵の雄町だから飲みたい」という動機で選び、蔵元はそれを差別化の武器として活用します。

今後、日本酒業界では優れた酒米の確保がますます重要になるでしょう。農業者と蔵元の連携、そして消費者への情報発信が、酒米ブランドの価値を高める鍵となります。雄町米のように歴史と物語を持つ酒米は、単なる原料以上の存在として、地域文化や産業振興にも貢献し続けるはずです。

▶ 「酒一筋 番外」販売サイト 岡山県の利守酒造による地酒専門店「赤磐雄町」

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海外から逆輸入される日本酒文化──KATO SAKE WORKSの挑戦

2025年7月、東京都江東区に本社を構えるファイブ・グッド株式会社は、アメリカ・ニューヨークで誕生したクラフト日本酒ブランド「KATO SAKE WORKS(カトウ・サケ・ワークス)」の輸入販売を日本国内で開始しました。

同ブランドは、日本酒をルーツに持ちながらも、既存の枠組みにとらわれない自由な発想で「SAKE」を再定義する注目の存在です。今回の日本上陸は、伝統と革新が交錯する日本酒業界において、ひとつの大きな転換点となり得るでしょう。

ブルックリン発、「ローカルSAKE」の精神

KATO SAKE WORKSは、東京出身の加藤忍氏が「地元で愛される酒を自分の手で造りたい」という想いから、2020年にニューヨーク・ブルックリンで創業したマイクロ酒蔵です。創業当初から一貫して、麹造りから瓶詰めまでをすべて手作業で行い、地元産の素材を活用しながら地域との密接な関わりを大切にしてきました。

使用する主原料は、アメリカ西海岸で栽培される長粒米「カルローズ米」と、ニューヨーク州北部キャッツキル山地の軟水。これらローカルな素材に、日本で学んだ酒造技術を掛け合わせ、すっきりとした酸やフルーティな香りを持つ、個性豊かな酒を生み出しています。

代表的なラインナップは、シンプルに「Junmai(純米)」「Nigori(にごり)」「Nama(生)」と名付けられており、それぞれが現地の料理やカルチャーと結びつきながら日常に溶け込んでいます。こうした肩肘張らないスタイルが共感を呼び、アメリカ国内では若年層や非アジア系層にも着実に支持を広げています。

今回の日本への逆輸入は、こうした「ローカルSAKE」の哲学が、いよいよ本場日本に届いたことを意味します。

制度が縛る、日本の酒造りの未来

KATO SAKE WORKSが生み出す酒の魅力は、単なる味わいにとどまりません。小規模だからこそ可能な柔軟さと、地域密着型のアイデアをすぐに実行できるフットワークの軽さは、多くの日本の酒蔵が本来持っていたはずの姿でもあります。

ところが、日本国内では現在もなお、年間最低製造量(いわゆる最低石高)制度が足かせとなり、こうした自由な発想の酒造りを実現するのは困難です。たとえば、「家庭の裏庭で米を育て、少量を手造りする」といったごく自然な営みでさえ、法律の壁に阻まれるのです。

加えて、地元に根差した小規模なSAKEが育つには、税法や流通の制度的な緩和が欠かせません。KATO SAKE WORKSがすでに実現しているような活動が、日本国内では「制度の外」でしかできないという現実に、業界関係者からは危機感も広がっています。

このままでは、日本発祥の酒が、日本では造りにくく、海外の自由な現場でこそ伸び伸びと花開くという本末転倒な状況に陥る可能性も否定できません。

「逆輸入」時代の到来にどう向き合うか

KATO SAKE WORKSの日本上陸は、単なる輸入商品の話ではなく、新しい価値観が海の向こうからやってきたという事実そのものが持つ意味に注目すべきです。

今後、日本国内でも取扱店の拡大やレストランでの提供、オンラインショップでの流通が進めば、KSWのような自由な酒が生活に浸透していく可能性もあります。

一方で、日本の酒造制度や市場がその柔軟さを受け入れる準備ができているかが問われる時期でもあります。KSWの躍進は、日本酒業界にとって「自分たちの足元」を見直す契機になるかもしれません。

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クラフトサケの波に乗って「サケグリア」がやってくる~新たな日本酒の楽しみ方

近年、日本酒業界に「クラフトサケ」という新たな潮流が生まれ、多様な味わいや自由な発想のお酒が次々と登場し、愛飲家を魅了しています。このクラフトサケの台頭は、既存の日本酒の枠にとらわれない柔軟な発想を促し、その影響は、にわかに「サケグリア」への関心をも高めているようです。伝統的な「清酒」のイメージを刷新し、日本酒の裾野を広げる二つの動きは、それぞれ異なるアプローチながらも、新たな飲酒文化の創造に貢献しています。

クラフトサケとは何か? 革新的な醸造の世界

まず、昨今の日本酒市場を語る上で欠かせないのが「クラフトサケ」です。これは、簡単に言えば「日本酒の製造技術をベースとしながらも、酒税法上の『清酒』の定義に縛られずに、多様な原料や製法を取り入れて造られたお酒」を指します。一般社団法人クラフトサケブリュワリー協会が提唱する概念であり、その最大の特徴は、以下の点に集約されます。

【多様な副原料の使用】
通常の清酒が米、米麹、水、そして少量の醸造アルコールのみを原料とするのに対し、クラフトサケは仕込みの段階でフルーツ(柑橘類、リンゴ、ベリーなど)、ハーブ(ミント、レモングラスなど)、スパイス(シナモン、カルダモンなど)、さらにはコーヒーや茶葉、野菜などを加えることが許容されます。これにより、これまでの日本酒にはなかった、斬新で個性豊かな風味や香りが生まれます。

【製法の多様性】
「搾り」の工程を経ないどぶろくのような形態や、発酵方法に工夫を凝らすなど、酒税法で定められた清酒の製法以外の方法を用いることで、テクスチャーや口当たりにも多様性が生まれます。

【法的分類の変化】
これらの製法上の特徴から、クラフトサケの多くは酒税法上「その他の醸造酒」や「雑酒」に分類されます。つまり、厳密には「日本酒(清酒)」ではないものの、その根底には日本酒造りの精神と技術が息づいています。

【小規模醸造と個性】
「クラフト」の名の通り、多くは小規模な醸造所(クラフトサケブリュワリー)で、醸造家の自由な発想と探求心に基づいて造られます。これにより、大量生産品にはない、それぞれの蔵元の個性や地域性が強く反映されたお酒が生まれます。

クラフトサケは、日本酒の伝統的なイメージを打ち破り、新たなファン層を獲得することに成功しています。特に若い世代や海外の消費者からは、その多様な味わいや、食事とのペアリングの面白さが高く評価されています。

にわかに注目を集める「サケグリア」とは?

一方、「サケグリア」は、クラフトサケとは異なるアプローチで、日本酒の新たな可能性を切り開いています。サケグリアとは、完成した日本酒をベースに、フルーツ、ハーブ、スパイスなどを漬け込んで作られる、いわば「日本酒カクテル」です。ワインをベースにするサングリアの日本酒版と考えると、イメージしやすいでしょう。

サケグリアが注目を集める背景には、クラフトサケによって「日本酒は自由な発想で楽しめる」という認識が広がったことが大きく影響していると考えられます。クラフトサケが醸造段階で多様な素材を取り込むことで、日本酒の味の可能性を広げたのに対し、サケグリアは飲用段階でのアレンジによって、その魅力を引き出すことを目指します。

手軽なアレンジ性
クラフトサケが専門的な醸造設備と知識を必要とするのに対し、サケグリアは飲食店はもちろん、家庭でも簡単に作ることができます。好きな日本酒に、旬のフルーツや手軽なスパイスを漬け込むだけで、手軽にオリジナルのサケグリアが完成します。

飲みやすさと華やかさ
日本酒特有の風味をフルーツの爽やかさや甘みで和らげることで、日本酒初心者や、これまであまり日本酒を飲まなかった層でも親しみやすく、カクテル感覚で楽しめます。見た目の彩りも豊かで、SNS映えすることから、パーティーシーンや女子会などでの需要も高まっています。

日本酒の新たな消費提案
サケグリアは、既存の日本酒に新たな価値を付加し、消費の機会を創出します。低価格帯の日本酒でも、フルーツとの組み合わせで新たな魅力を引き出すことができ、家庭での日常的な飲酒シーンにも日本酒を広めるきっかけとなります。

クラフトサケとサケグリア:異なるアプローチが生む相乗効果

クラフトサケとサケグリアは、どちらも日本酒の多様化を促し、市場を活性化させる点で共通しています。しかし、その違いは明確です。

【クラフトサケ】
「醸造段階」で伝統の枠を超え、新しいお酒を「生み出す」こと。

【サケグリア】
「飲用段階」で既存の日本酒に手を加え、新たな「楽しみ方」を提案すること。

クラフトサケが醸造家による創造性と技術革新の象徴であるならば、サケグリアは消費者自身が日本酒をアレンジし、自分好みの味わいを創り出す「DIY的な楽しみ」を創出します。

クラフトサケの登場が、消費者の「日本酒に対する固定観念」を打ち破り、「日本酒はもっと自由で多様なもの」という認識を広げたことで、サケグリアのような既存の日本酒のアレンジも、より受け入れられやすくなったと言えるでしょう。

この二つの動きは、それぞれが独立しつつも、日本酒が「伝統的な飲み物」から「多様なライフスタイルに寄り添う飲み物」へと進化していく過程において、互いに相乗効果を生み出していると考えられます。クラフトサケによって生み出される個性豊かな日本酒が、さらにサケグリアのベースとして活用され、無限の組み合わせが生まれる可能性も秘めています。

日本酒の未来は、伝統を守りつつも、こうした自由な発想と新しい試みが交差する中で、ますます豊かに、そして魅力的に広がっていくことでしょう。

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大石酒造、ダム本体で日本酒熟成! サステナビリティでも注目される天然の冷蔵庫

京都丹波に位置する老舗蔵元、大石酒造が、画期的な日本酒の熟成方法に乗り出し、注目を集めています。同社は、市内のダム本体が持つ年間を通じて約15℃という安定した天然冷却環境を利用し、7月下旬に日本酒の熟成を開始しました。この取り組みは、近年高まる熟成酒への需要、特に中国市場での人気に呼応するものでもあり、日本酒の新たな価値創造への可能性を秘めています。

自然の恵みを活かした日本酒熟成への挑戦

日本酒の熟成は、ワインやウイスキーと同様に、時間とともに酒質が変化し、より複雑で奥深い味わいを生み出します。特に長期熟成させた日本酒、いわゆる「熟成古酒」は、琥珀色に輝き、ナッツやドライフルーツのような芳醇な香りと、まろやかで円熟した口当たりが特徴です。しかし、熟成には温度と湿度の安定した管理が不可欠であり、大規模な設備投資や維持コストが課題となっています。

大石酒造が着目したのは、ダム本体が持つ自然の冷却力です。ダム内部は、分厚いコンクリートと大量の水に囲まれているため、外気温の影響を受けにくく、年間を通じて安定した低温を保つことができます。今回は、熟成が好影響をもたらすと考えられる銘柄が選定され、ダム内の特定の区画に搬入されました。15℃前後という温度は、日本酒の熟成にとって理想的な環境です。この天然冷却による熟成は、環境負荷の低減だけでなく、コスト面でも大きなメリットをもたらすはずです。

高まる熟成酒の需要とヴィンテージ市場の可能性

さらに重要なのは、熟成期間を経た日本酒が、ワインのように「ヴィンテージ」としての価値を持つようになることです。近年、中国をはじめとするアジア圏では、富裕層を中心に高品質な日本酒への関心が高まっており、特に限定品や希少性の高い熟成酒は、贈答品としても高い人気を博しています。ヴィンテージ市場が形成されれば、日本酒のブランド価値向上に大きく貢献し、新たな収益源となることが期待されます。

現在、日本酒は多様な楽しみ方が提案されていますが、ワインのようなヴィンテージの概念はまだ浸透していません。今回の取り組みは、日本酒に新たな価値観をもたらし、コレクターズアイテムとしての魅力を高める可能性を秘めています。長期保存が可能で、時間の経過と共に味わいが深まる熟成酒は、消費者にとって新たな選択肢となり、日本酒市場全体の活性化に繋がるでしょう。

全国に広がる天然冷却熟成の動きと新たな観光資源化への展望

今回の取り組みは、大石酒造だけの専売特許ではありません。日本全国には、ダムに限らず、廃坑になったトンネル、歴史的な石蔵、地下水が豊富な鍾乳洞など、年間を通じて安定した低温を保つことができる天然冷却空間が数多く存在します。そして、このような場所を熟成に活用する動きは、少しずつ広がりを見せています。例えば、佐渡の尾畑酒造は金山の坑道を、神奈川県の熊澤酒造では防空壕を利用して日本酒を熟成させるなど、各地の酒蔵がそれぞれの地域の特性を活かした取り組みを進めているのです。

これらの場所は、これまで有効活用されてこなかったのですが、今回の事例を参考に、日本酒やワイン、さらにはチーズや生ハムといった食品の熟成庫として活用する動きが広がる可能性を秘めています。

さらに、これらの天然冷却空間は、新たな観光資源としての可能性も秘めています。熟成庫の見学ツアーや、そこでしか味わえない熟成酒のテイスティングイベントなどを開催することで、地域の活性化にも繋がるでしょう。ダムや廃坑、地下貯蔵庫といった場所に、新たな価値を与えることで、これまでとは異なる視点での地域振興が期待されます。

大石酒造のダム熟成は、単なる日本酒造りの進化に留まりません。それは、日本全国に眠る豊かな自然環境と、日本の伝統文化である日本酒が融合することで生まれる、新たな産業と観光の可能性を示す試金石となるでしょう。

今回の大石酒造の取り組みは3か月という比較的短い熟成時間を設定しているようですが、この試みを長期熟成への試金石とし、新たな市場を切り拓くことを期待したいものです。

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タイ最大級の酒類展示会で日本酒が存在感

2025年7月24日から27日にかけて、タイ・バンコクでアジア屈指の酒類展示会「Pub Bar Asia 2025」が開催されました。本イベントはアジア全域のバイヤーや飲食業関係者が集う大規模な場として知られ、今年も例年以上の来場者数を記録しました。その中で特に存在感を放っていたのが、日本酒の展示ブースでした。
今回は小西酒造など、全国から15の酒蔵・関連団体が参加し、純米酒からスパークリングタイプ、さらには低アルコール商品まで、多くの日本酒が並びました。来場者の約7割が飲食業界関係者とされる中で、日本酒への関心は非常に高く、「食中酒としての可能性が広がっている」といった声が複数のバイヤーから聞かれています。
中でも現地メディアが注目したのがスパークリング日本酒です。爽やかな口当たりと美しいボトルデザインが好評を博し、「現地の若年層や女性層にも訴求できる」と高く評価されました。

商談と試飲が盛況、輸入への期待も高まる

展示会場では商談専用スペースが設けられ、日本酒ブースには終日活発な交流が見られました。タイ料理とのペアリングを意識した商品説明や試飲が行われ、来場者からは「果実味が豊かで現地料理に合う」「ワインや焼酎とは違った魅力がある」といった声が寄せられました。
一部の酒蔵は、現地企業との販売提携の可能性について前向きな姿勢を示しており、輸入希望を示すバイヤーも多数出現。特に「日本酒のラベルや商品説明の多言語対応が進んでいる点が安心材料になる」との評価があり、実務面でも着実な進化が見られます。
こうした動きは、東南アジアにおける日本酒の普及にとって重要なステップとなるでしょう。タイは親日的な文化を持ち、食の多様性があることから、日本酒にとって理想的な浸透先と見る声も増えています。

セミナーで技術革新も紹介、参加者の理解が深化

会期中には日本酒の魅力を伝えるためのミニセミナーも複数開催されました。発酵や熟成技術についての解説が行われ、“海底熟成”や“宇宙酵母”といった革新的な事例が紹介されると、会場からは驚きの声が上がりました。「日本酒がここまで進化しているとは思わなかった」との感想もあり、従来の「伝統酒」というイメージを覆す新たな認識が広がりつつあることを実感しました。
このような技術的イノベーションの共有は、日本酒のブランド価値向上につながるだけでなく、今後の海外展開を後押しする要素ともなります。展示会を通じて、日本酒は文化的・技術的側面の両面から海外市場へのアプローチを強化していることが明確になりました。

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日本酒と泡盛が合体:本日発売された「SAKE×AWAMORI 大吟醸2025」とは

本日8月1日、沖縄県那覇市を拠点に企画販売を主な事業とする株式会社OneSpiritから、日本酒の常識を覆す画期的な新商品「SAKE×AWAMORI 大吟醸2025」が満を持して発売されました。この画期的なボトルは、福井県の老舗蔵元である田嶋酒造株式会社が手掛けた上質な日本酒と、OneSpiritの関連会社である沖縄の瑞穂酒造が提供する泡盛を融合させた、驚きの一本です。

革新的なコラボレーション「SAKE×AWAMORI」シリーズの背景

この「SAKE×AWAMORI」シリーズは、2022年に株式会社OneSpiritが立ち上げて以来、毎年異なるコンセプトで展開され、日本酒と泡盛の新たな可能性を追求し続けてきました。 今回発売されるのは、その革新的な試みの第八弾にあたります。異なる風土と歴史を持つ二つの酒文化が、OneSpiritの独創的な企画力のもと、融合することで一体どのような新たな味わいが生まれるのか、大きな注目が集まっています。

田嶋酒造株式会社は、福井県で古くから続く歴史ある酒蔵として、「福千歳」など高品質な日本酒を世に送り出してきました。その卓越した醸造技術によって生み出される日本酒は、繊細でありながらもしっかりとした米の旨味が特徴です。一方、沖縄の瑞穂酒造は、150年以上の長きにわたり泡盛造りに情熱を注いできた老舗であり、その泡盛は奥深いコクと香りで知られています。今回のプロジェクトは、まさに異質の酒造りの匠が、OneSpiritのプロデュースによって見事に合体したものなのです。

「異種ブレンド」が提案する新たな飲用シーン

「SAKE×AWAMORI 大吟醸2025」では、田嶋酒造が精魂込めて醸した日本酒の中でも最高峰とされる「大吟醸」クラスの日本酒をベースに使用。そこに、瑞穂酒造が誇る泡盛が絶妙なバランスでブレンドされています。この組み合わせがもたらす効果は多岐にわたります。まず、大吟醸特有の華やかでフルーティーな吟醸香はそのままに、泡盛が加わることで奥行きのある複雑な香りが生まれます。泡盛が持つ独特の熟成香や力強さが、大吟醸の繊細な香りを包み込み、より一層魅力的なアロマのハーモニーを奏でます。

味わいにおいても、このブレンドは驚くべき変化をもたらします。大吟醸のクリアで洗練された口当たりに、泡盛由来の豊かなコクとまろやかさが加わり、唯一無二のテクスチャーが実現されています。一般的に、日本酒はスッキリとした後味が特徴的ですが、「SAKE×AWAMORI」は、泡盛が持つ余韻の長さや複雑な旨みが加わることで、飲み終わった後にも深い満足感をもたらします。これにより、単なる日本酒でも泡盛でもない、新しいカテゴリーの味わいが確立されたと言えるでしょう。

さらに、この「SAKE×AWAMORI 大吟醸2025」は、「酒ハイ」(日本酒のソーダ割)のベースとしても大いに活躍が期待されています。 大吟醸の持つ洗練された香りと泡盛のしっかりとした骨格が、ソーダで割ることで軽やかさの中に複雑な香りと味わいを保ち、これまでの日本酒ハイボールとは一線を画す、新しい体験を提供してくれるのです。特に、食事のシーンを選ばず楽しめる汎用性の高さは、今年のトレンドを牽引する一本となる可能性を秘めています。

また、泡盛は熟成によってその風味が深まる特性を持つため、この「SAKE×AWAMORI 大吟醸2025」も、時間の経過とともにさらに豊かな表情を見せる可能性を秘めています。購入後も、涼しい場所で寝かせることで、より一層まろやかで奥深い味わいへと変化していく過程を楽しむことができるかもしれません。

伝統と革新が融合する酒文化の未来

この革新的な商品は、日本酒愛好家だけでなく、泡盛ファン、さらにはこれまで日本酒や泡盛に馴染みがなかった人々にも、新たな発見と驚きをもたらすことでしょう。食中酒としてはもちろんのこと、特別な日の乾杯の一杯として、あるいは食後にゆっくりと味わう一杯としても最適です。和食はもちろん、洋食や中華、エスニック料理など、幅広い料理とのペアリングにも挑戦できる可能性を秘めており、食卓に新たな楽しみを提案してくれます。

「SAKE×AWAMORI 大吟醸2025」は、株式会社OneSpiritの情熱とビジョン、そして田嶋酒造と瑞穂酒造の持つ別次元の匠の技術が融合した結晶です。この「新時代の日本酒」は、日本の酒文化に新たな風を吹き込み、醸造アルコールを添加する「本醸造酒」などの復権につながる潮流を生み出すかもしれません。

▶ SAKE×AWAMORI 大吟醸 2025(OneSpirit)

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日本酒がシェイクに!? Shake Shack広島と賀茂鶴がコラボ

2025年8月1日、広島に新たな旋風が巻き起こります。米国発の人気ハンバーガーレストラン「Shake Shack」のミナモア広島店が、広島が誇る老舗酒蔵「賀茂鶴酒造」との異色コラボレーションにより、なんと「日本酒シェイク」を発売するというのです。一見すると意外な組み合わせですが、これは伝統的な日本酒の楽しみ方に一石を投じ、その可能性を広げる画期的な試みとして注目を集めています。

近年、日本酒は国内外でその多様な魅力が再評価され、消費者の裾野も広がりを見せています。しかし、その多くは食事と共に、あるいは単体でじっくりと味わうという従来のスタイルに留まっていました。そんな中で登場する日本酒シェイクは、日本酒をよりカジュアルに、より親しみやすい形で楽しむことを可能にする、まさに「新しい日本酒の楽しみ方」を提案するものです。

日本酒シェイク、その萌芽と進化の軌跡

実は、日本酒とシェイクの組み合わせは、今回のShake Shackと賀茂鶴のコラボが初の試みではありません。日本酒業界では、伝統に縛られず、新しい飲用スタイルを模索する動きが以前から見られました。

その発祥は2010年代の佐渡を含めた新潟周辺にあるようで、「久保田」で知られる朝日酒造は、ホームページにレシピを掲載しています。その久保田は、若年層や日本酒になじみのない層に向けて、カクテルやデザートへの活用など、多様な飲用シーンを提案してきました。このような老舗酒造が、その伝統にあぐらをかかず、新しい価値創造に挑む姿勢は、業界全体に刺激を与えたと言えるでしょう。

また、日本酒の可能性を広げる動きとしては、2020年に始まった山口県の銘酒「獺祭」とモスバーガーのコラボレーションも特筆すべき事例です。こちらはノンアルコールではあったものの、「まぜるシェイク 獺祭」として販売され、日本酒の香りを気軽に楽しめる飲み物として大きな話題を呼びました。アルコールを含まないことで、幅広い層にアプローチできるという利点に加え、日本酒の持つフルーティーな香りをシェイクという形で表現することで、日本酒に対するイメージをより身近なものにしたと言えるでしょう。この獺祭の試みは、日本酒の「香り」をキーにした新しいドリンク開発の可能性を示し、今回のアルコール入り日本酒シェイクへの布石となったとも考えられます。

これらの先行事例を踏まえると、今回のShake Shackと賀茂鶴のコラボレーションは、単なる一過性のトレンドではなく、日本酒の進化における自然な流れの中で生まれた必然的な出会いであると捉えることができます。「日本酒×シェイク」という概念を、より洗練された形で実現し、獺祭が示した「日本酒の香りを楽しむ」というアプローチを、さらにアルコール入りという形で深化させたものと言えるでしょう。

賀茂鶴とShake Shack広島で紡ぐ新たなハーモニー

今回の主役である賀茂鶴酒造は、広島を代表する酒蔵の一つであり、その歴史と品質には定評があります。伝統的な製法を守りつつも、常に新しい挑戦を続けてきた賀茂鶴が、若者を中心に絶大な人気を誇るShake Shackとのコラボレーションに踏み切ったことは、その挑戦的な姿勢の表れと言えるでしょう。

この日本酒シェイクは、日本酒に馴染みのない層、特に若い世代にとって、日本酒に触れるきっかけともなるでしょう。シェイクという親しみやすい形で提供されることで、日本酒に対する敷居が下がり、「日本酒って意外と美味しいかも」「こんな楽しみ方があったんだ」という新たな発見をもたらすはずです。また、すでに日本酒を愛飲している人々にとっても、これまで経験したことのない新しい日本酒の顔を垣間見ることができる、エキサイティングな体験となるでしょう。

今回のコラボレーションは、単なる話題性だけでなく、日本酒業界全体に与える影響も大きいと考えられます。伝統に安住することなく、異業種との連携を通じて新たな価値を創造していく。この動きは、日本酒の可能性をさらに広げ、その魅力を世界に向けて発信する上で重要な一歩となるでしょう。

2025年8月1日、ミナモア広島店に登場する「Shake Shack広島×賀茂鶴コラボの日本酒シェイク」。この一杯が、広島から全国へ、そして世界へと、日本酒の新しい楽しみ方を提案する、まさに歴史的な一杯となることを期待せずにはいられません。

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

日本酒とPodcastが織りなす新時代の晩酌革命:本家松浦酒造場の挑戦が示す「共に楽しむ」文化の開花

近年、私たちのライフスタイルは大きく変化し、特に「おうち時間」の充実が求められるようになりました。リモートワークの普及や、多様なエンターテインメントコンテンツの台頭により、自宅で過ごす時間は単なる休息の場から、自己表現や自己研鑽、そして何よりも「豊かな体験」を追求する場へと変貌を遂げています。このような社会の変化の中で、日本の伝統文化である日本酒の楽しみ方もまた、大きな転換期を迎えています。単に味わうだけでなく、物語や情報、そしてコミュニケーションを「共に楽しむ」という新たなスタイルが、今まさに花開こうとしているのです。

本家松浦酒造場の挑戦

この新時代の到来を象徴する出来事の一つが、創業200年の歴史を持つ本家松浦酒造場(徳島県鳴門市)が発表した【月巡り、酒巡り。】「毎月1本の限定酒×Podcastで晩酌革命」という新企画です。これは単なる新商品のリリースに留まらず、日本酒の消費体験そのものに革新をもたらす、意欲的なDX(デジタルトランスフォーメーション)への挑戦と言えるでしょう。

【月巡り、酒巡り。】の核となるのは、「毎月1本、その月だけの特別な一杯」を数量限定で提供するというコンセプトです。これは、単なる「飲む」という行為を超え、季節の移ろいやその時々の気分に合わせた「体験」を提案するものです。限定酒であるという希少性は、消費者の所有欲を満たし、その一杯が特別な意味を持つことを際立たせます。さらに、単なる美味しさだけでなく、特別仕様のラベルデザインにもこだわることで、五感で楽しむ日本酒体験を追求している点が特筆されます。これは、現代の消費者が求める「モノ」ではなく「コト」の消費、つまり体験価値の重視に他なりません。

そして、この限定酒をさらに魅力的に彩るのが、連動するPodcast番組「ナルトタイのちょっと語りタイ」の存在です。この音声コンテンツは、単に商品の説明をするだけでなく、お酒に込められた造り手の情熱や苦労、そしてその背景にある物語を深掘りします。なぜこの時期にこの酒なのか、どのような思いが込められているのか、そしてこの酒が最も輝く「ひと皿」は何か――これらの情報が造り手自身の言葉で語られることで、消費者は単に日本酒を味わうだけでなく、その「生い立ち」や「個性」を深く理解し、共感することができるようになるのです。

Podcastというメディアの選択もまた、現代のライフスタイルに合致した優れた戦略と言えるでしょう。視覚的な情報に溢れる現代において、音声コンテンツは耳から情報を得ることで、他の作業と並行して楽しむことが可能です。家事をしながら、あるいはリラックスした環境で、ゆったりと酒の物語に耳を傾ける。これは、かつての酒場での会話のように、知的好奇心と共感を刺激し、日本酒に対する愛着を深める新たな接点となります。ゲストを招いてのトークも予定されており、日本酒を軸としたコミュニティ形成にも寄与する可能性を秘めています。

「共に楽しむ」スタイルが示す日本酒の未来

この本家松浦酒造場の取り組みが示唆するのは、日本酒がもはや単なる飲料ではなく、豊かな暮らしを彩るための「コンテンツ」としての可能性を秘めているということです。日本酒を「共に楽しむ」スタイルとは、単に家族や友人と酌み交わす物理的な行為に限定されません。限定酒という希少性を「共に分かち合う」喜び、Podcastで語られる物語や情報を「共に学ぶ」喜び、そしてその情報に基づいて自分なりの楽しみ方を「共に創造する」喜びへと拡張されていくのです。

この流れは、日本酒業界全体のDXにも繋がるでしょう。デジタル技術を活用することで、酒蔵は消費者との新たな接点を生み出し、ブランドのファンを育成することができます。また、消費者の嗜好や行動データを分析することで、よりパーソナライズされた商品やサービスを提供する道も開かれるでしょう。

本家松浦酒造場の【月巡り、酒巡り。】は、単なる晩酌を「晩酌革命」へと昇華させる試みであり、日本酒が持つ計り知れない可能性を私たちに示してくれています。それは、日本酒を巡る物語を共有し、その価値を共に創造していく、まさに「共に楽しむ」新時代の幕開けを告げる号砲と言えるでしょう。この新たな挑戦が、日本酒文化の更なる発展と、私たちの日々の暮らしにおける豊かな体験の創出に、大きく貢献していくことに期待が寄せられます。

▶ 【月巡り、酒巡り。】(NARUTOTAI SHOP)

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