グランプリは山口の名酒「五橋」──世界が注目する日本酒コンテスト「MONACO SAKE AWARD 2025」

2025年10月6日、モナコ公国の名門施設「Yacht Club de Monaco」にて開催された「MONACO SAKE AWARD 2025」において、山口県は酒井酒造株式会社の「純米大吟醸 錦帯五橋」がグランプリに輝きました。このコンテストは、モナコと日本の文化交流を目的に始まった国際的な日本酒コンクールであり、世界中の美食家やソムリエが審査に参加することで知られています。

MONACO SAKE AWARDの国際的な位置づけ

MONACO SAKE AWARDは、単なる品評会ではなく、日本酒の国際的な認知度向上と市場拡大を目的とした文化的イベントです。審査員にはモナコ在住の宮廷シェフや一流ホテルのソムリエなどが名を連ね、地中海の美食都市モナコで開催されることで、フランスやイタリアなど欧州の食文化との融合が試され、日本酒の新たな可能性が探求されます。

特に今年のマリアージュ賞のテーマは「モッツァレラチーズ」であり、日本酒と西洋食材の相性を評価するユニークな試みが注目を集めました。これは、海外市場における日本酒のポジショニングを強化するうえで重要な指標となります。

今回のグランプリ受賞で、「五橋」の酒井酒造にとっては、海外の一流レストランやホテルでの採用が期待されるほか、輸出拡大やブランド価値の向上につながると見られます。それは、国際的な評価を得る大きな機会となるだけでなく、審査結果が酒造りの現場にフィードバックされることで、日本酒業界全体にも好影響を与えるはずです。

▶ 純米大吟醸 錦帯五橋|モナコ・サケ・アワードの最高賞に輝いた日本酒

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「Oriental Sake Awards 2025」の最高賞が決まる──アジア市場が示した次の日本酒基準

アジア最大級の日本酒コンテストとして知られる「Oriental Sake Awards 2025」(以下 OSA)において、最高賞「サケ・オブ・ザ・イヤー」に新澤醸造店(宮城県大崎市)の「あたごのまつ 鮮烈辛口」が選ばれました。アジア全域から集まった審査員によるブラインド審査を経て決まるこの賞は、その年を代表するたった一本の日本酒に贈られる栄誉です。本醸造酒である同銘柄が、アジアの大規模市場で最も高い評価を獲得したことは、日本酒の未来に大きな意味を持ちます。

アジア市場で求められる食中酒としての完成度

OSAは香港を拠点とし、アジアに広がる日本酒ファン・飲食店・ホテル・輸入事業者から高い注目を集める国際日本酒コンテストです。アジアは現在、世界で最も日本酒消費が増えている地域であり、日本酒の新たな市場を形成する存在になっています。そこで最高賞に選ばれたということは、単に品質の高さだけでなく、「アジアの食文化に適応し、現地で愛される可能性が最も高い酒」として評価されたことを意味します。

「あたごのまつ 鮮烈辛口」は、キレのある辛口設計に加え、柔らかな米の旨味がバランスよくまとまり、食中酒としての対応力が非常に高い日本酒です。–5℃での氷温貯蔵によるクリアな味わいが保たれている点も評価され、寿司や日本料理はもちろん、東南アジアのスパイス料理や中華料理との相性も自然と高まります。国や文化を超えてペアリングの幅が広がることが、アジア市場で強く支持された理由の一つといえるでしょう。

本醸造の価値がアジアで再定義される

今回の最高賞には、もうひとつ重要な視点があります。それは、「本醸造」というカテゴリーがアジア市場において高く評価された点です。日本国内では純米・吟醸系が注目されがちですが、アジアでは日常酒としての飲みやすさや、料理に寄り添う万能性が求められ、本醸造の持つ「軽快さ」や「キレ」が強い武器になります。

OSAという大舞台で本醸造酒が頂点に立ったことは、日本酒の国際展開において「高価格帯・華やかさ」だけが評価軸ではないという、新たなメッセージでもあります。「毎日の食卓に合わせやすい味」こそが、アジアの日本酒需要を押し上げる原動力であることを示した結果といえます。

アジア発の評価が日本酒の未来を動かす

日本酒の輸出額の伸びをけん引しているのは中国・台湾・香港・シンガポール・タイなど、アジアの国々です。こうした市場では、現地の味覚や酒類文化を踏まえながら、その土地で選ばれる酒であるかどうかが重要になります。

OSAはまさにその指標となるコンテストであり、そこで最高賞を受けたということは「あたごのまつ 鮮烈辛口」がアジアで最も伸びる潜在力を持った銘柄であると評価されたに等しいのです。今後、アジアの飲食店やラグジュアリーホテルで採用が進む可能性も高く、海外販路の拡大に直結する成果となるでしょう。

地域の蔵からアジアの『日常酒』へ

「あたごのまつ 鮮烈辛口」の受賞は、地方の蔵元が生み出す「日常に寄り添う酒」が、アジアの巨大市場へと橋を架けた瞬間でもあります。華やかさではなく、食卓に溶け込む味わいが選ばれたことは、日本酒文化が次の段階へ進みつつあることを示しています。

アジア最大級のコンテストで生まれたこの結果は、これからの日本酒の海外展開において大きな指標となり、さらなる市場拡大と文化交流の鍵を握るものになるでしょう。

▶ アジア最大級の日本酒コンテスト「Oriental Sake Awards 2025」

▶ あたごのまつ 鮮烈辛口|アジア最大級の日本酒コンテストで最高賞を獲得

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福山雅治ゆかりの名酒「残響」がルクセンブルク酒チャレンジ2025最高賞受賞

10月28日、国際日本酒品評会「ルクセンブルク酒チャレンジ2025」にて、新澤醸造店 の「超特選 純米大吟醸 残響 2024」が、最高賞にあたる「Best Award」に選出されたことが明らかになりました。なお、本コンテストのプラチナ/金/銀賞の受賞結果は、6月17日付で既に発表されており、最高賞の発表は10月末日としていたものです。

コンテストの特徴と意義

「ルクセンブルク酒チャレンジ」は、2022年に第1回が開催され、ヨーロッパにおける日本酒の魅力を発信し、新たな市場開拓を目的とした国際日本酒品評会です。本コンテストの主な特徴は以下の通りです。

  • 審査員にはヨーロッパ各国で活動する「酒ソムリエ」やホテル・レストランの専門家が含まれ、日本酒の香り・味わいだけでなく「現地の料理とのペアリング適性」も評価ポイントとなっています。
  • 審査基準においては、外観、香り、味わい、調和、パッケージの優雅さなど多角的に評価されており、単純な技術醸造だけでなく市場適合性を重視している点が注目されます。
  • ルクセンブルクを拠点に、ベルギー・ドイツ・フランスといった欧州主要市場にアクセスできることから、日本酒の欧州市場参入における「重要な入り口」として位置づけられています。

こうした特色をもつ本コンテストにおいて、最高賞を獲得することは、単なる受賞にとどまらず、対外的な評価・ブランド発信の大きな転機となるものです。

「残響」が示した新しい日本酒の姿

今回、最高賞を受けた「残響」は、単なる技術的な到達点を超えた、日本酒文化の象徴的存在です。その誕生は2009年。新澤醸造店の蔵元と、俳優でありミュージシャンでもある福山雅治氏との親交から生まれました。当時、世界最高とされた精米歩合7%という前人未踏の挑戦から誕生したものです。

以後、「残響」は国内外の主要コンテストで数々の受賞を重ねてきました。ロンドン酒チャレンジやIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)SAKE部門では、ワインの専門家たちから「最も繊細で詩的な日本酒」と評され、すでに国際的評価を確立していました。今回、欧州の中心地であるルクセンブルクで最高賞に選ばれたことは、世界の味覚の一部として認められた象徴的な出来事と言えるでしょう。

それはまた、「残響」が体現する『磨きの哲学』が、欧州の審査員の深い共感を呼び込んだということでもあります。単なる技術競争ではなく、素材と向き合い、心を込めて限界まで磨き抜く姿勢――それはクラフトマンシップと精神性を重んじるヨーロッパの文化とも響き合います。その意味で、今回の最高賞は日本酒が文化として成熟し、共感の言語を世界と共有し始めたことを象徴しています。

この受賞によって、「残響」は再び世界の舞台で脚光を浴びました。今回の受賞を契機に、「残響」は単なるプレミアム日本酒を超え、日本酒の芸術的到達点として国際市場で新たな価値を創出していくはずです。そしてその余韻は、まさに名の通り、世界中の酒席に静かに、しかし確かに響き続けていくことでしょう。

▶ 残響|熟成しても燗にしても美味いプレミアム日本酒

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「梵」、INTERNATIONAL SAKE CHALLENGE 2025で4冠

2025年の INTERNATIONAL SAKE CHALLENGE(ISC) の審査結果がこのほど発表され、福井県鯖江市の加藤吉平商店による銘酒「梵(BORN)」が、7部門中4部門で最高賞である TROPHY(トロフィー) を獲得しました。

この結果は、単なる受賞の枠を超え、「梵」というブランドが改めて世界の審美眼に通用する品質を持つことを証明したものとして注目されています。

INTERNATIONAL SAKE CHALLENGEとは

ISCは、2007年に設立された日本酒の国際審査会で、世界的なワインコンペティション「International Wine Challenge(IWC)」の姉妹大会に位置づけられています。

しかし、IWC SAKE部門とは異なり、ISCは完全に日本国内で開催される国際基準の官能評価会である点が特徴です。審査員には日本国内の酒類鑑定士や蔵人だけでなく、海外のマスター・オブ・ワイン(MW)やワインジャーナリスト、ホテルソムリエなど、非日本人審査員が多数参加しており、評価基準はワインやスピリッツの世界基準と同等の枠組みで運営されています。

他の主要コンクール――たとえば全国新酒鑑評会やSAKE COMPETITIONなどが「技術力」を基準にした美味しさを評価するのに対し、ISCは世界の消費者が感じる美味しさという普遍的基準を軸に置いています。
香味の完成度・熟成バランス・温度変化による味の展開、さらには輸出市場での可能性まで含めた「総合的国際評価」が行われるため、世界で売れる日本酒を見極める場ともいわれます。

世界に知られる「梵」が、再び世界基準で認められた

そんな審査の中で、梵が4部門でトロフィーを獲得したのは極めて異例です。

梵はすでに、海外では「BORN」というローマ字表記で高級レストランや一流ホテルに流通しており、国際的名声を得ているブランドです。1998年の国際酒祭り(カナダ・トロント)ではグランプリを受賞、カンヌ国際映画祭で日本酒として初めて晩餐酒として使われるなど、国際的な舞台に度々登場してきました。

つまり、世界市場での名声をすでに持つ酒が、あえて世界標準の審査に挑み、とんでもない快挙を達成したのです。しかも「梵・天使のめざめ」は、毎年のようにトロフィーを獲得しています。

このように、「評価されるべき酒が、再び評価された」ことは、一見当然のようでいて、実は非常に難しいことです。なぜなら、知名度のある酒ほど期待値が高く、厳しい目が向けられるからです。そんな中でも、「梵」が純米大吟醸・吟醸・純米酒・熟成酒と複数のカテゴリーで最高賞を得たことは、蔵としての総合力と品質維持力の高さを、あらためて世界に示した形です。

今後への影響

今回のISC2025での「梵」の快挙は、「世界に認められた日本酒」が我が国の日本酒コンテストで認められたということであり、日本酒の評価軸が定まってきたことを象徴しています。

これまで日本酒は、国内で高い評価を受けても必ずしも海外で理解されるとは限らず、また逆に、海外で人気を博す銘柄が国内審査で埋もれることもありました。しかし今回、「梵」が世界の舞台で培った信頼と、日本の酒としての完成度を両立させ、「世界品質の日本酒」として再確認されたことは、業界全体にとって大きな意味を持ちます。

この結果は、単に「梵」にとっての栄誉ではなく、日本酒という文化そのものが「国境を越えて通じる味」として成熟したことの証でもあります。今後、「梵」が築いたこの評価の橋を渡るように、多くの蔵が世界と対話しながら、新たな日本酒像を描いていくことになるでしょう。

【TROPHY(トロフィー)受賞酒一覧】

最優秀大吟醸・吟醸酒出羽桜 大吟醸酒出羽桜酒造山形県
最優秀純米大吟醸酒五橋 純米大吟醸50%酒井酒造山口県
最優秀純米吟醸酒會津宮泉 純米吟醸宮泉銘醸福島県
最優秀純米酒梵・純米55加藤吉平商店福井県
最優秀熟成酒梵・天使のめざめ加藤吉平商店福井県
最優秀スパークリング酒梵・ささ雪加藤吉平商店福井県
最優秀プレミアム酒梵・夢は正夢加藤吉平商店福井県
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雪国から生まれる循環の酒──津南醸造が描くサステナブルな日本酒の未来

新潟県津南町に蔵を構える津南醸造は、2025年10月23日から25日にかけて開催されたフードテックカンファレンス「SKS JAPAN 2025」の街中展示企画「食のみらい横丁」に出展しました。同蔵が紹介したのは、純米大吟醸「郷(GO)GRANDCLASS 魚沼コシヒカリEdition」です。雪国のテロワールを象徴する一本として注目を集めましたが、今回の展示で特に焦点となったのは、その味わいだけでなく「サステナビリティ(持続可能性)」というテーマでした。

雪国の気候を生かす「自然冷蔵庫」

津南町は日本有数の豪雪地帯として知られています。冬には積雪が3メートルを超えることもあり、その雪は厳しい自然環境であると同時に、津南醸造にとっては貴重な資源でもあります。蔵では雪室を利用した貯蔵や温度管理を行っており、電力使用量を大幅に抑えています。つまり、雪の冷気がゆるやかに温度を安定させることで、機械による制御を最小限にし、エネルギーコストを削減しながら酒質の安定を実現しているのです。

この「雪の冷蔵庫」は、自然エネルギーを活かした地域ならではの持続可能な仕組みといえます。雪を敵ではなく味方にする発想が、雪国テロワールの根幹にあります。

米・水・人がつなぐ地域循環

「郷(GO)」シリーズの大きな特徴は、原料米に魚沼産コシヒカリを使用している点です。一般的には食用米として知られるコシヒカリですが、津南醸造はその香味の豊かさに注目し、酒造好適米ではなく地元農家と連携して栽培した食用米を用いています。これにより、農家の販路拡大につながり、地域経済の循環を促しています。

また、仕込み水には信濃川源流域の伏流水を使用しています。この清冽な水は雪解けとともに山々から流れ込み、町の水田を潤します。その水が再び酒となって人々の手に戻るという循環こそ、津南醸造が掲げる「雪国サステナビリティ」の象徴です。

フードテックと伝統の融合

今回のSKS JAPANでは、「未来の食」をテーマにテクノロジーと環境への配慮を取り入れた食品が多く出展されました。その中で津南醸造は、伝統的な日本酒という枠組みを超え、自然環境との共生を軸に据えた「地域循環型のフードシステム」としての酒造りを提示しました。

蔵では再生可能エネルギーの導入や廃棄物削減の取り組みも進めています。酒粕は堆肥化され、再び米作りへと還元されます。さらに、瓶や包装資材にもリサイクル素材を積極的に活用し、輸送過程でも二酸化炭素の排出を抑える努力を続けています。

雪国から世界へ──持続可能な味わい

津南醸造の挑戦は、単に環境に優しい酒造りというだけではありません。地域の自然と人の営みを一体化し、未来に継承できる「酒文化の生態系」をつくることを目指しています。

雪国が抱える厳しい気候を逆に資源として捉え、地域全体で支え合う循環のモデルは、世界のサステナブルフードの潮流にも通じます。「郷(GO)GRANDCLASS 魚沼コシヒカリEdition」は、雪国の恵みを凝縮した一本であり、環境と共存する新しい日本酒の在り方を示す『未来の郷土酒』といえるでしょう。

▶ 食卓に寄り添う魚沼の新風:津南醸造「郷(GO)TERRACE」始動

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「堅あげポテト あさりの酒蒸し味」登場──『あまいすえひろ』に寄り添う、日本酒専用スナックの誕生

カルビーが発表した10月27日からの新商品「堅あげポテト あさりの酒蒸しバター仕立て」が、いまにわかに注目を浴びています。その理由は、単なる新フレーバーの登場ではなく、会津若松の老舗・末廣酒造の純米酒「あまいすえひろ」に合わせて開発された『日本酒専用スナック』だからです。これまでの「食に合わせて日本酒を選ぶ」発想から、「日本酒に合わせて食をデザインする」発想へ──日本酒文化が新たなフェーズに入ったことを象徴する一品と言えます。

『あまいすえひろ』のやさしい甘みに寄り添う味設計

末廣酒造は嘉永3年(1850年)創業の老舗蔵で、「伝統を守りながら新しさを創る」姿勢で知られています。その純米酒「あまいすえひろ」は、まろやかな米の甘味と軽やかな酸味が調和する、優しく包み込むような味わいが特徴です。アルコール度数はやや低めで、食中酒としてもデザート酒としても楽しめる柔軟さを持っています。

今回の「堅あげポテト あさりの酒蒸しバター仕立て」は、この「あまいすえひろ」の持つ米の甘味と繊細な香りを引き立てるように、あさりの旨みと酒蒸しの風味を重ね合わせたといいます。あさりのだし感が日本酒の甘みを引き立て、香ばしいポテトの余韻が酒の酸をやさしく包み込む。まさに、「酒をおいしくするための菓子」として設計された逸品です。

『食が日本酒に寄り添う』という新しい文化の兆し

これまでの日本酒ペアリングは、料理に合わせて酒を選ぶのが一般的でした。刺身には吟醸、煮物には純米、天ぷらには本醸造――というように、食材の特性を基準に酒が選ばれてきました。しかし、この商品はまったく逆。まず特定の日本酒があり、その味わいを最大限に引き出すために、スナックの味が組み立てられています。

この発想の転換は、まさに日本酒の楽しみ方を拡張するものです。スナックという軽やかなフォーマットに日本酒の魅力を組み合わせることで、これまで「日本酒は難しい」「食事の時だけ」と感じていた層にも、新しい入り口を提示しています。特に「あまいすえひろ」のようなやわらかな味わいの酒は、女性層や若年層にも人気があり、その層と親和性の高いスナックとのコラボは、非常に理にかなっていると言えるでしょう。

カルビーの「堅あげポテト」は、厚切りのじゃがいもをじっくり揚げることで生まれる独特の硬質食感と、素材の香りを引き出す低温仕上げが特徴です。今回の「堅あげポテト あさりの酒蒸しバター仕立て」では、その技術が活かされ、咀嚼のたびに広がる貝の旨味が、あまいすえひろのやさしい甘香と重なり合います。

日本酒が主役の時代へ──ペアリングの未来

今回のコラボは、食品メーカーと酒蔵の協業が進む中でも特に象徴的な事例です。ワインやウイスキーでは「ペアリングフード」の発想が定着していますが、日本酒でこれほど明確に『銘柄指定』で味を合わせたスナックは、ほとんど前例がありません。

この動きは、日本酒の「嗜好品としての再定義」にもつながります。すなわち、日本酒が料理を支える脇役ではなく、食体験の中心に立つ主役へと変わりつつあるということです。今後、他の酒造や地域限定銘柄とのタイアップも増えることでしょう。

『カルビー×末廣酒造』という異業種のタッグが生み出した「堅あげポテト あさりの酒蒸しバター仕立て」。それは、スナックの世界に日本酒文化を融合させた『味の交差点』であり、日本酒が日常の中に自然に溶け込む未来を予感させる試みです。

日本酒を主役に据えた一袋──その小さな革命が、家庭の晩酌をより豊かな時間へと変えていくに違いありません。

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シャンパンファイトに変わるか『AWA SAKE』~ドジャースとともに闘う八海山

新潟県南魚沼市の老舗蔵「八海醸造」は、メジャーリーグ・ロサンゼルス・ドジャースのリーグ優勝を記念した限定ボトル「八海山 ドジャース リーグチャンピオン記念ボトル」を発表しました。球団公式パートナーとして契約を結ぶ同社が、優勝の節目に合わせて記念酒をリリースするのは初の試みです。すでにアメリカ国内のファンや日本の野球ファンの間で話題となり、単なる限定酒にとどまらず、『日本酒が世界の祝祭に登場する瞬間』として注目を集めています。

日本酒をメジャーに導く八海山

八海山は、長年にわたり「淡麗辛口」を象徴する銘柄として国内外にファンを持つ蔵です。清冽な南魚沼の水と精緻な温度管理によるキレのある味わいは、アメリカ市場でも『HAKKAISAN』ブランドとして定着し、寿司店や高級レストランなどで高い評価を得ています。

今回の記念ボトルは、そうした国際展開の延長線上にあります。ドジャースという世界的チームとのコラボレーションは、日本酒がもはや「輸出される伝統産品」ではなく、「文化を共有する象徴的存在」へと進化していることを示しています。

スポーツという喜びを共有する舞台で日本酒が祝杯の中心に登場することは、文化的にも極めて意義深いことです。長年、勝利や祝福の瞬間にはシャンパンが定番とされてきましたが、そこに日本酒が並び立つ姿は、日本文化の新たな国際的地位を象徴します。特に八海山には、シャンパンを標榜する『AWA SAKE』があり、その清らかな酒質は、スポーツの美学にもよく似合うと思われます。

近年、日本酒の海外展開は「飲まれる」から「語られる」段階へと変化しています。八海山のような蔵が、スポーツや文化イベントと連動する動きを見せるのは、単なる販売促進ではなく、「体験価値」を生み出す戦略といえます。

ドジャースとの提携によって、八海山は国際的なブランドとしての存在感を強化しつつあります。これは他の酒蔵にとっても大きな刺激となるでしょう。音楽・映画・アートなど、異業種とのコラボレーションによる文化発信が今後さらに広がれば、日本酒が『文化資産』として世界の舞台に定着する可能性が高まります。

ワールドチャンピオンの瞬間には『AWA SAKE ファイト』を

今回のリーグ優勝記念ボトルの発売は、八海山が次のステージを見据えていることを示しています。現時点でこれほど話題性のある限定品を打ち出してきたことからも、もしドジャースがワールドチャンピオンに輝いた暁には、さらなる特別企画が待っているのではないかと期待されます。

そして、その瞬間には、シャンパンファイトならぬ「八海山 AWA SAKE ファイト」を見たい——そう願うファンも少なくないでしょう。八海山のスパークリング日本酒「あわ 八海山(AWA SAKE)」は、細やかな泡と上品な香りで、まさに祝杯にふさわしい一本です。もしその AWA SAKE がロッカールームで勢いよく開栓され、勝利の喜びを共有する姿が見られたなら、それは日本酒文化が世界に完全に受け入れられた瞬間になるはずです。


日本酒が国境を越え、祝祭の象徴となる未来。その先頭を走るのが八海山であり、今回のドジャース優勝記念ボトルはその道を切り拓く第一歩です。次なる舞台は、ワールドシリーズの頂点。もし再び八海山が勝利の瞬間を彩ることになれば、日本酒の新たな歴史が、世界の歓声とともに刻まれることになるかもしれません。

▶ 「美味しいお酒」が「SAKE」に! 大谷翔平選手MVPインタビュー通訳が生んだ日本酒への熱視線

▶ 日本酒をメジャーに導く、ドジャース公式日本酒「特別本醸造 八海山 ブルーボトル」

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女性審査員が選ぶ美酒コンクール2025『吟天 龍王』が日本酒界の頂点に

今年3回目を迎えた『第3回 美酒コンクール 2025』の審査概要および結果が公表され、「吟天 龍王」(小田切商事株式会社/兵庫県)が、最高賞である「美酒 of the Year 2025」に輝きました。主催の 一般社団法人『日本のSAKEとWINEを愛する女性の会』は、「香り・味わい」という感性を切り口に、女性審査員のみで審査を行う新しい日本酒コンクールとして注目を集めています。

▶ 『女性審査員による日本酒コンクール』ホームページ

今回、国内外から127社293アイテムが出品され、審査員数も海外からの参加者を含め165名に及びました。審査方式も一般的な「特定名称」別ではなく、香りと味わいの特徴に応じて分類された全6部門(フルーティー/ライト&ドライ/リッチ&旨味/エイジド<熟成酒>/スパークリング/ロウ・アルコール)で構成され、酒類資格を保有する『正規審査員』と、一般女性の『アマチュア審査員』の両輪でブラインド・テイスティング形式の評価が行われました。

本コンクールが掲げる三つの理念――「日本の伝統文化の継承」「地域経済の活性化」「女性が活躍する社会の実現」――もあわせて強く打ち出され、特に女性審査員による審査という構造が、これまで日本酒コンクールであまり見られなかった女性の感性を活かした評価基準を提示しており、新たな価値づくりの場となっています。

今回「美酒 of the Year 2025」に選定された『吟天 龍王』は、エイジド(熟成)部門の金賞受賞酒でもあり、熟成という時間を経た酒の深み、香味の重層性、果実的なアロマとコクのバランスなどが、女性審査員の評価軸と好相性を示した結果と言えるでしょう。

今後このコンクールを展望すると、香味を起点とした部門構成によって「自分好みの味わいを選ぶ」消費者動線の構築が進む可能性があります。蔵元にとっても、女性審査員のコメントやアマチュア消費者の意見をマーケティングに活かす機会が増えており、酒造りのブランディングや流通展開にも新たなヒントをもたらしています。たとえば、銘柄ラベルに香味部門を明示することで、消費者にとって敷居の低い選びやすい日本酒となる可能性が開けてきています。

まとめると、第3回となる今回の美酒コンクールは、出品数・審査員数ともに規模を固めつつ、従来の枠を超えた女性審査・香味別部門という切り口で日本酒ジャンルに新風を吹き込みました。そして、その最高賞に選ばれた『吟天 龍王』の受賞は、熟成日本酒の魅力が改めて女性の審美眼によって讃えられた象徴とも言えます。今後、全国各地の蔵元がこの評価制度を刺激源とし、より多彩な味わいを表現していくことが期待されます。

美酒 of the Year 2025
(エイジド部門)吟天 龍王小田切商事兵庫県
TOP OF THE BEST
フルーティー部門作 槐山一滴水清水清三郎商店三重県
ライト&ドライ部門赤城山 本醸造辛口生貯蔵酒近藤酒造群馬県
リッチ&ウマミ部門萬歳楽 石川門 純米 小堀酒造店石川県
エイジド部門夢乃寒梅 古酒 2000鶴見酒造愛知県
スパークリング部門琵琶のささ浪リンゴ印スパークリング麻原酒造埼玉県
ロウ・アルコール部門賀茂泉酒造 COKUN賀茂泉酒造広島県
特別賞
ソムリエ賞CatskillsBrooklyn Kuraアメリカ
客室乗務員/CA賞天賦 純米吟醸西酒造鹿児島県
アマチュア賞越乃雪椿 Grand-Cuvée 純米大吟醸原酒雪椿酒造新潟県
ラベル賞吟天 花龍小田切商事兵庫県

▶ 大吟醸も純米酒も同じ土俵で――美酒コンクール2025の入選酒発表を受けて

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「美味しいお酒」が「SAKE」に! 大谷翔平選手MVPインタビュー通訳が生んだ日本酒への熱視線

ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が、ナ・リーグ優勝決定シリーズの最優秀選手(MVP)に輝いた後のインタビューで、通訳のウィル・アイアトン氏が発した「SAKE」という言葉が大きな話題を呼んでいます。大谷選手が「今日は美味しいお酒を飲んでください」とファンへ向けたメッセージを、アイアトン通訳は「SAKE」と直訳に近い形で伝達。この瞬間に、球場は一層の歓声に包まれました。この粋な計らいは、単なる通訳を超えた文化の発信として、世界中の人々に「SAKE(日本酒)」という言葉を印象づけました。

ドジャースと八海醸造のタッグが追い風に

この「SAKE」の背景には、ドジャースと八海醸造(新潟県南魚沼市)が結んでいる契約があります。八海醸造は、今年からドジャースとパートナーシップ契約を締結し、ドジャースタジアム内で日本酒を提供するなど、積極的なブランド展開を行っています。

大谷選手という世界的スターのメッセージと、それに乗じたアイアトン通訳の「SAKE」という言葉が、この八海醸造の取り組みと相まって、日本酒の存在感を飛躍的に高めました。これは、日米のトップスポーツチームと老舗酒蔵という異業種間の連携が、文化交流という形で実を結んだ好例と言えるでしょう。

日本酒業界への計り知れない影響

今回の出来事が日本酒業界に与える影響は、非常に大きいと考察されます。

【国際的な認知度の向上】

「SAKE」というシンプルな単語が、MVPという輝かしい舞台で、大谷選手という影響力を持つ人物を通じて発信されたことで、英語圏における日本酒の認知度が格段に向上しました。これにより、「SAKE=美味しいお酒」というイメージが、これまで日本酒に馴染みのなかった層にも広く浸透することが期待されます。

【消費拡大への期待】

特にアメリカでは、若者を中心に健康志向が高まっており、日本酒が持つ「グルテンフリー」や「天然の醸造酒」といった特性が、新たな消費層を開拓する強力なフックとなり得ます。ドジャースタジアムという「ハレの場」での提供実績が相まって、アメリカ国内での日本酒の販売拡大に直結する可能性を秘めています。

【プレミアム化とブランド価値の向上】

八海醸造のような、すでに国際的に評価の高い酒蔵だけでなく、他の日本酒ブランドにとっても、今回の出来事はブランド価値向上のチャンスです。スポーツと結びつくことで、日本酒が「洗練された」「セレブが楽しむ」といったポジティブなイメージをまとい、プレミアムなアルコール飲料としての地位を確立する大きな一歩となるでしょう。

ワールドシリーズ制覇で熱狂は最高潮へ

さらに、ドジャースがこの勢いでワールドシリーズを制覇すれば、日本酒への注目度は最高潮に達するでしょう。大谷選手が再びMVPなどの栄誉に輝く場面や、優勝後の祝賀ムードの中で、日本酒がメディアに露出する機会が増えることは間違いありません。

「世界一のチーム」と「公式SAKEパートナー」という強固な結びつきは、日本酒を「勝利の美酒」として世界に印象づけます。この「勝利」というイメージは、日本酒のブランド力をさらに高め、特にアメリカをはじめとする海外輸出に決定的な追い風となります。日本酒業界は、この歴史的な瞬間を、グローバル市場での飛躍につなげる絶好の機会と捉えるべきでしょう。


大谷選手の偉業と、通訳の機知に富んだ「SAKE」という一言は、八海醸造とのパートナーシップを基盤に、日本酒を世界的なアルコール飲料へと押し上げる起爆剤となりそうです。そして、ワールドシリーズ制覇という快挙が実現すれば、その熱狂は一過性のものでは終わらず、日本酒を「クールな日本文化」の象徴として世界に定着させるでしょう。この波を最大限に活かし、日本酒業界全体がグローバルな展開を加速させることが、今後ますます重要になってくるはずです。「美味しいお酒=SAKE」が世界の共通語となる日も、そう遠くないかもしれません。

▶ 日本酒をメジャーに導く、ドジャース公式日本酒「特別本醸造 八海山 ブルーボトル」

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月桂冠『アルゴ』グッドデザイン賞受賞|若者に響く革新で日本酒離れに挑む

月桂冠株式会社(本社:京都市伏見区)が開発したアルコール度数5%の日本酒「アルゴ」が、2025年度グッドデザイン賞を受賞しました。従来の日本酒のイメージを刷新する革新的な商品として、デザイン性と飲みやすさの両面から高く評価されました。

「アルゴ」は、ギリシャ神話に登場する伝説の船「アルゴー号(Argo)」にちなみ、新しい価値の探求から生まれた商品です。爽やかでフルーティな味わいを特徴とし、平日にも気軽に楽しめる日本酒として開発されました。一般的な日本酒のアルコール度数が15%前後であるのに対し、「アルゴ」はその約3分の1。これにより、飲酒のハードルを下げ、若年層やライトユーザーにも親しみやすい商品となっています。

日本酒離れに立ち向かう革新の一手

近年、日本酒業界では若者離れや消費量の減少が深刻な課題となっています。伝統的な酒造りの技術や文化が継承される一方で、現代のライフスタイルや嗜好に合った新たな提案が求められてきました。そうした中で「アルゴ」は、低アルコールという切り口と洗練されたデザインによって、これまで日本酒に馴染みのなかった層へのアプローチを可能にしています。

月桂冠の調査によれば、日本酒は週末に飲まれる傾向が強く、平日の需要は限定的でした。一方で、低アルコール市場は近年急速に拡大しており、ビールやチューハイに加え、日本酒にもその波が押し寄せています。「アルゴ」は、こうした市場の変化に応える形で誕生した製品であり、同社の挑戦的な姿勢がうかがえます。

デザインと味わいで新たな層へ

グッドデザイン賞の審査員は、「非炭酸でアルコール度数5%という新しい日本酒の提案」「ネーミングと数字の“5”による直感的な訴求」「青を基調とした軽やかで上質なパッケージデザイン」などを高く評価しました。これらの要素が相乗的に機能し、従来の日本酒に対する敷居の高さを感じていた層にもアプローチできる点が受賞の決め手となりました。

業界への影響も大きいと考えられます。「アルゴ」のような低アルコール・高デザイン性の商品は、新たな顧客層の開拓につながる可能性があります。また、グッドデザイン賞の受賞は、酒類業界におけるデザインの重要性を再認識させる契機ともなり得ます。

さらに、「アルゴ」は食品ヒット賞にも選ばれており、その商品力と市場での評価は確かなものです。スパークリングタイプや缶入りなど、ラインアップの拡充もあり、日本酒の新しい楽しみ方を提案する存在として注目が集まっています。

月桂冠の「アルゴ」は、単なる新商品にとどまらず、日本酒の未来を切り拓く一歩となるかもしれません。伝統と革新が融合したこの一杯が、より多くの人々の暮らしに寄り添うことを期待したいところです。

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