信州日本酒が注目される理由~「全国No.1プロジェクト」が生んだ成果と現在地

長野県では、地酒文化をさらに発展させるために、県を挙げて日本酒の品質向上・ブランド化を進める取り組みとして「信州日本酒全国No.1プロジェクト」が展開されています。このプロジェクトは、全国新酒鑑評会における都道府県別の金賞獲得数で全国1位を目指すという明確な目標のもとにスタートしました。もともとは2016年に「信州日本酒全国No.1奪還プロジェクト」として開始され、その後活動内容の拡充とともに「信州日本酒全国No.1プロジェクト」として進化しています。

プロジェクトがスタートした背景には、長野県内の日本酒業界が抱えていた課題と、国内外での評価向上への強い意欲があります。長野県は全国でも第二位の酒蔵数を有する『酒どころ』でありながら、その評価やブランド力は他の有名酒どころ(例えば新潟や灘・伏見など)に比べて見劣りする面がありました。この状況を打破するべく、県の産業労働部が中心となって、蔵元に対する技術支援や研修、人材育成プログラムを積極的に展開することがプロジェクトの主軸となっています。

具体的な取り組みとしては、県内の研究機関である長野県工業技術総合センターが研修会や蔵元への訪問指導を実施しており、醸造技術の底上げを図っています。また、若手蔵人を対象とした「酒造技能士養成講座」を設け、座学と実習を組み合わせたカリキュラムで次世代の醸造技術者育成にも力を入れています。この講座では、参加者が実際にチームごとにタンク一本の日本酒を造る実践体験を通して技術力と現場感を培うほか、完成した酒を一般客に評価してもらう機会も設けられています。これにより蔵ごとの技術向上だけでなく、消費者ニーズを肌で感じる機会も創出されています。

このような取り組みの結果、長野県の日本酒は国内外のコンペティションで着実に評価を高めています。2024年には、国際日本酒コンテスト「International Wine Challenge(IWC)」に初めて設けられた「Sake Prefecture of the Year」を、長野県が受賞する成果を収めました。この受賞は、単一の蔵元のみならず、長野県全体の品質向上とブランド力強化が、全国に先駆けて評価されたものとして大きな意義を持っています。また、各蔵元からもIWCの各カテゴリーで優秀な評価を得る銘柄が多数登場し、最高賞であるチャンピオンサケも輩出するなど、国内外の日本酒愛好家からの注目度も高まっています。

プロジェクトの成果は数字にも表れています。全国新酒鑑評会での金賞獲得数は、プロジェクト開始前と比べて確実に増加傾向にあり、若手蔵人の技術力向上がこれに寄与しているとの分析もあります。また、蔵元同士の交流を深めるためのイベントや試飲会も活発になり、蔵元間の切磋琢磨や情報共有が一層進んでいることも評価されています。

こうした一連の取り組みは、単に数字目標を達成するだけでなく、長野県の酒造業界全体を活性化させる好循環を生んでいます。蔵元側からは「酒造りの理論を学べることが大きい」「他の蔵元と競い合いながら技術を磨ける環境がありがたい」といった声が聞かれ、県全体で日本酒ブランドを育てる意識が共有されています。

今後の展望としては、さらなる全国新酒鑑評会での上位獲得や海外市場での信州ブランドの強化、観光資源としての地酒体験プログラムとの連動など、多角的な戦略が期待されます。長野県の豊かな自然と米、水という恵まれた環境を背景に、技術とブランド力を高めていく「信州日本酒全国No.1プロジェクト」は、日本酒業界の新たなモデルとなる可能性を秘めています。

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