世界における「日本酒の現在地」~VinePair日本酒特集から読み解く世界での評価

米国の酒類専門メディア「VinePair」はこのほど、日本酒入門者に向けた記事「8 Producers You Should Know to Get Into Sake(日本酒を始める前に知っておくべき8つの酒造)」を公開しました。ワインやクラフトビール、スピリッツを主戦場としてきた同メディアが、日本酒を正面から取り上げた点は、世界の酒類市場における日本酒の立ち位置を考えるうえで象徴的な出来事と言えます。

この記事の特徴は、香味成分や製法理論を詳述するのではなく、「どの酒蔵を知れば、日本酒の世界に入りやすいか」という視点で構成されている点です。取り上げられている酒蔵は、海外での流通実績やブランド認知を持ち、かつ味わいの個性が比較的わかりやすい蔵が中心となっています。これは、日本酒がいまだ『専門的で難しい酒』と見られがちな海外市場において、入口の整理が重要であることを示しています。

VinePairはワインや蒸留酒の記事で知られ、「飲むことは文化である」という編集方針を掲げています。その同じ文脈で日本酒が語られていることは、日本酒がエキゾチックな特殊酒ではなく、世界の酒文化の一ジャンルとして認識され始めている証とも言えるでしょう。実際、記事では寿司や和食との相性だけでなく、日常的な飲酒シーンでの楽しみ方にも言及されており、日本酒を「特別な場の酒」から「選択肢の一つ」へと位置付けの見直しが行われています。

一方で、記事の構成からは、日本酒がワインほど体系化された理解をまだ得ていない現状も見えてきます。ワインであれば産地、品種、スタイルで語られるところを、日本酒の場合は酒蔵名が強い軸になっています。これはテロワールや使用米のストーリーが、海外ではまだ十分に共有されていないことを意味します。その分、酒蔵の哲学やクラフト性が、日本酒理解の近道として機能している段階にあると言えます。

世界の酒類市場全体で見ると、日本酒のシェアは依然として小さい存在です。しかし、VinePairのように月間数百万規模の読者を持つメディアが、日本酒を「これから知るべき酒」として扱うこと自体、確実な地殻変動が起きていることを示しています。これは輸出量の増加以上に、「語られ方」が変わってきている点が重要です。

今回の記事は、日本酒がワインやクラフトビールと同じ土俵で比較・選択される段階に入りつつあることを静かに示しています。日本酒はすでに世界で評価される酒でありながら、その魅力の全体像はまだ伝え切れていません。だからこそ、海外メディアによる入門的な整理が意味を持ち、日本酒は今、「発見され続ける酒」として世界の中で位置づけられているのです。

▶ 8 Producers You Should Know to Get Into Sake(日本酒を始める前に知っておくべき8つの酒造)

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド


正月の「ふるまい酒」外国人はどう受け止めているのか――鏡開きに込められた日本文化の体験価値

年始の神社や地域行事、観光施設などで行われる「ふるまい酒」は、日本人にとっては正月の風物詩の一つです。鏡開きとともに振る舞われる日本酒には、無病息災や五穀豊穣を願う意味が込められており、単なるアルコール提供以上の文化的役割を担ってきました。では、この正月のふるまい酒を、訪日外国人はどのように感じているのでしょうか。

近年のインバウンド回復を背景に、年末年始に日本を訪れる外国人観光客は増加しています。彼らが正月行事の中で強い印象を受けるものの一つが、無料で日本酒が振る舞われるこの習慣です。多くの外国人にとって、「知らない人同士が同じ場で酒を分かち合う」という体験は新鮮に映ります。特に欧米圏からの旅行者の間では、「日本人のホスピタリティを象徴する行為」「宗教的儀礼と酒が自然に結びついている点が興味深い」といった声が聞かれます。

また、ふるまい酒が「正月限定」であることも、特別感を高めています。普段は有料で提供される日本酒が、年の始まりという節目に、誰にでも平等に差し出される。この行為を、外国人の中には「コミュニティに迎え入れられた感覚」として受け止める人も少なくありません。言葉が十分に通じなくても、杯を受け取り、周囲と同じ所作で口に含むことで、日本文化の輪の中に入ったと実感できるからです。

一方で、アルコールに対する価値観の違いも浮き彫りになります。宗教上の理由で酒を口にできない人や、昼間から酒を飲む習慣のない文化圏の人にとっては、戸惑いを覚える場面もあります。ただし最近では、ノンアルコール甘酒を提供するところもあり、「選べるふるまい酒」として柔軟な対応が評価されています。こうした配慮があることで、外国人観光客も安心して行事に参加できるようになっています。

興味深いのは、味そのもの以上に「背景」に関心が集まっている点です。なぜ正月に酒を飲むのか、鏡開きとは何か、なぜ樽酒なのか。これらの説明を受けることで、日本酒は単なる飲み物から「文化を語るメディア」へと変わります。実際、簡単な英語解説や多言語の掲示がある会場では、ふるまい酒の満足度が高い傾向が見られます。

正月のふるまい酒は、日本人にとって当たり前の慣習でありながら、外国人の目には非常に象徴的な文化体験として映っています。酒を介して年の始まりを祝うという行為は、日本酒の国際的な価値を伝える絶好の機会でもあります。今後、インバウンド施策の中でこの伝統をどう活かしていくのか。正月の一杯は、日本酒の未来を映す小さな鏡になりつつあります。

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

2025年、日本酒が世界へ飛躍した年 —— 八海山とサマーフォールが示した二つの象徴

2025年は、日本酒にとって「世界の中で語られる存在」へと明確に踏み出した一年でした。昨年末に「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを背景に、日本酒は文化としての価値を世界から認められ、その評価が具体的な動きとして各地に表れました。その象徴的存在として挙げられるのが、「八海山」と「サマーフォール」です。この二つの日本酒は、異なる方向性を持ちながらも、2025年の日本酒を語るうえで欠かせない存在となりました。

八海山 —— 世界の大舞台で「正統」を示した日本酒

2025年、日本酒の国際的存在感を強く印象づけた出来事の一つが、八海山がロサンゼルス・ドジャースとパートナーシップ契約を結んだことです。メジャーリーグという世界最高峰のスポーツエンターテインメントの中で、日本酒が公式に扱われることは極めて象徴的でした。

八海山は、派手さよりも品質と安定感を重視してきた酒蔵です。その八海山がドジャースと結びついたことで、日本酒は「特別な和食店で飲む酒」から、「世界のスタジアムで楽しまれる酒」へと認識の幅を広げました。これは、日本酒がワインやビールと同じ土俵で語られ始めたことを意味します。

ユネスコ登録によって裏付けられた伝統的酒造りの価値を、八海山は極めて分かりやすい形で世界に提示しました。2025年の八海山は、日本酒の「正統性」と「国際性」を同時に体現した存在だったと言えるでしょう。

サマーフォール —— 海外発で日本酒の常識を揺さぶった存在

一方、もう一つの象徴が、米国で人気を集めたスパークリング日本酒ブランド「サマーフォール」です。カリフォルニアで支持を広げたこの日本酒が、2025年に日本市場へと逆輸入されたことは、日本酒史の中でも特筆すべき出来事でした。

サマーフォールは、缶入り、スパークリング、比較的低アルコールという特徴を持ち、日本酒に対する従来のイメージを大きく覆しました。冷やして、気軽に、場面を選ばず飲める日本酒として、若年層やこれまで日本酒に縁のなかった層に受け入れられています。

重要なのは、サマーフォールが「日本酒らしくない」存在であるにもかかわらず、日本酒として認識され、評価されている点です。これは、日本酒が守るべき伝統と、変化すべき表現を切り分けられる段階に入ったことを示しています。2025年のサマーフォールは、日本酒の未来像を提示する存在だったと言えるでしょう。

二つの象徴が示す日本酒の姿

八海山とサマーフォールは対照的な存在です。前者は伝統と品質を武器に世界の中心へ進出し、後者は海外から新しい価値観を携えて日本に戻ってきました。しかし、この二つが同時に注目されたことこそが、2025年という年の本質を物語っています。

日本酒は今、「守る酒」と「広げる酒」の両輪で世界へ向かっています。ユネスコ登録によって文化的基盤が明確になったからこそ、新しいスタイルへの挑戦も許容されるようになりました。

2025年は、日本酒が世界の中で自らの立ち位置を見定めた転換点でした。八海山が示した正統な日本酒の強さと、サマーフォールが切り拓いた新しい入口。その両方が共存し評価されたこの一年は、日本酒が「日本の酒」であると同時に、「世界の酒」へと確実に歩み出した年として記憶されるでしょう。

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

2025年の日本酒ニュース総括 —— 世界的評価と試練の中で進む「しなやかな進化」

2025年の日本酒業界は、明るい話題と厳しい現実が同時に存在する一年でした。昨年末、「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことで、日本酒は世界的に注目を集め、文化としての価値が改めて認識されました。その一方で、国内では米をめぐる問題が深刻化し、多くの酒蔵が苦境に立たされる状況も浮き彫りになりました。

ユネスコ登録がもたらした国際的な追い風

ユネスコ無形文化遺産への登録は、日本酒を「飲み物」から「文化」へと引き上げる象徴的な出来事でした。麹菌を用いた発酵技術や、季節と向き合う酒造りの思想が評価され、海外では日本酒が日本文化そのものを体験する存在として語られる機会が増えました。2025年は、この評価の流れを受け、日本酒が国際的な文脈で扱われる場面が確実に増えた一年だったと言えます。

酒ハイと低アルコール日本酒

国内では、酒ハイ(日本酒ハイボール)や低アルコール日本酒が注目を集めました。酒ハイは、日本酒の香味を活かしながら軽快に楽しめる飲み方として、若年層やライトユーザーに受け入れられ、日本酒への心理的なハードルを下げる役割を果たしました。

また、低アルコール日本酒は「飲めない人」「少しだけ楽しみたい人」に寄り添う存在として評価されています。度数を抑えながらも満足感を追求する商品開発は、日本酒の価値を量や強さから体験へと移行させる動きの表れと言えるでしょう。

深刻化する米問題

一方で、2025年の日本酒ニュースを語るうえで避けて通れないのが、酒造好適米をめぐる問題です。近年続く米の生産量減少や気候変動の影響に加え、主食用米との需給バランスの変化により、酒米の確保が難しくなっています。さらに価格の上昇は、酒蔵の製造コストを大きく押し上げました。

特に中小規模の酒蔵にとって、原料米の高騰は経営を直撃する問題です。価格転嫁が容易ではない中、利益を圧迫し、製造量の調整や商品構成の見直しを迫られる蔵も少なくありません。世界的評価が高まる一方で、足元の基盤が揺らいでいるという現実が、今年はより明確になりました。


2025年は、ユネスコ登録によって日本酒の価値が世界に認められた一方で、米問題という根本的な課題が酒造現場を苦しめた一年でした。その中でも、日本酒は酒ハイや低アルコールという柔軟な形で生活に寄り添おうとしています。

国内消費の長期的な減少傾向も続いていますが、2025年は単なる縮小ではなく、市場の再構築が進んだ年だったとも言えます。酒ハイや低アルコール日本酒、小容量商品などは、日本酒を日常に引き戻す試みであり、将来への布石でもあります。

文化としての誇りと、現実的な課題への対応。その両立こそが、これからの日本酒業界に求められる姿です。2025年は、日本酒が試練の中で次の時代へ向かう方向性を模索した、重要な転換点だったと言えるでしょう。

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

『古酒』ANA国際線ファーストクラスに初採用~2026年、飛躍の年となるか熟成日本酒

長期熟成させた日本酒、いわゆる「古酒」が、新たなステージへと踏み出しました。2025年12月1日から、熟成酒専門ブランド「古昔の美酒(いにしえのびしゅ)」によるブレンド古酒「INISHIE 匠 No.1 -Doux-」が、ANA国際線ファーストクラスで機内提供されることになったのです。日本酒の古酒が同クラスの正式採用となるのは初めてで、国際的な場で古酒が本格的に評価され始めた象徴的な出来事といえます。

採用された古酒は、1990年代から2010年代初頭にかけて醸造された異なる酒蔵の熟成酒をブレンドした一本で、長い時間が生み出す蜜のような甘みや、穏やかな酸、余韻の深さが特徴とされています。新酒にはない「時が造る味わい」を、世界中の富裕層やビジネストラベラーが体験することになる点は、古酒の価値が国際的に広がるきっかけとなりそうです。

ただし、日本酒の古酒は決して新しい存在ではありません。歴史を遡れば、平安時代にはすでに熟成させた酒が珍重され、江戸時代になると「三年物」「五年物」といった長期熟成酒が上層階級に好まれていました。むしろ、現在一般的な「しぼりたて」や「フレッシュさ」を重視する酒文化のほうが近代的であり、古酒はかつての主流のひとつだったともいえます。

ところが、戦後の大量生産や嗜好の画一化、冷蔵技術の発達により、日本酒は「新しいほうが良い」とされる傾向が強まりました。結果として、古酒は一部愛好家の世界に留まり、一般市場では長らくマイナーな位置付けに甘んじてきました。

その状況を変え始めたのが、ここ10年で急速に進んだ多様化の波です。ワインやウイスキーなど、熟成を価値とする酒の人気が世界的に再び高まり、消費者の受容度が高まったこと、さらに日本酒の海外展開が進み、「複雑さ」や「深化」を持つ味わいが求められるようになったことが追い風になりました。古酒を扱う蔵元やブランドも増え、熟成専用倉庫の整備、ブレンド技術の向上など、産業としての基盤も整いつつあります。

今回、ANAファーストクラスに採用されたことは、この流れが一段階進んだことを示す出来事だといえるでしょう。国際線のファーストクラスは、世界中の高級酒が並ぶ舞台であり、各国のエアラインソムリエが厳格に選定を行います。その席に日本の古酒が選ばれたことは、味わいの個性はもちろん、熟成酒としての完成度が世界基準で認められたことを意味します。

さらに、国際線という「発信力の強い場」で提供されることで、興味をもった海外客が日本で古酒を探す、あるいは輸出商社が新たな商材として扱うなど、実需の拡大にもつながる可能性があります。これまで古酒は「日本酒の中の小ジャンル」とされてきましたが、この出来事は市場の位置付けを変える転機になるかもしれません。

2026年、日本酒の古酒はさらに注目が高まると見られます。熟成技術の進化、蔵元による新シリーズの展開、外食産業でのペアリング提案など、古酒が活躍する場は拡大しつつあります。今回のANA採用は、その流れを加速させるひとつの象徴です。

『時を味わう日本酒』 が、来年はいよいよ本格的に飛躍する一年となるかもしれません。

▶ INISHIE 匠 No.1 -Doux-|国際線ファーストクラスに搭乗する初の日本酒古酒

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド


ドジャース優勝記念「純米大吟醸 八海山」発売~祝いの記念品として新たな価値を拓く日本酒

新潟県の八海山酒造が、ロサンゼルス・ドジャースのワールドシリーズ制覇を祝して「純米大吟醸 八海山」の記念ボトルを12月1日より限定発売します。今回の商品は日本国内向けに展開されますが、これは決して内向きの施策ではありません。むしろ、日本酒が本来持つ『祝いの文化』を国内から丁寧に発信し、その価値を世界へと自然に広げていくための基盤づくりと捉えることができます。

祝いの酒としての日本酒

日本酒は古くから「祝い」と深く結びついてきました。婚礼の三々九度、祭礼の振る舞い、神事の御神酒、新年の御屠蘇など、晴れの席には必ず日本酒が寄り添ってきました。この背景には、「酒=神聖な媒介」という日本的精神があり、日本酒は特別な瞬間を象徴化する飲み物として位置づけられてきたのです。

今回の記念ボトルは、そうした伝統的意味合いを現代に再提示するものといえます。スポーツの勝利という世界的なハレの瞬間を、日本の『祝いの酒』で祝うという構図は、伝統文化を軽やかにアップデートする試みでもあります。

国内向け展開がもつ意図と記念品としての可能性

今回の商品が国内向けであるのは、「記念酒」という文化の原点を国内でしっかり提示したいという意図が読み取れます。日本酒の祝い文化に最も共鳴するのは、日本の生活文化を知る国内の消費者です。まず国内市場で「記念酒としての日本酒」の存在価値を再認識してもらい、その文脈を確立することが、世界展開においても説得力を持つ土台になります。

つまり、内向きではなく文化の整備としての国内展開なのです。このステップによって、日本酒が「祝いの象徴」として持つ文化的ストーリーが、より明確で力強いものになります。

また、今回のドジャース記念ボトルは720mlで展開されますが、今後は記念品としての側面をより拡張するために、容量やボトルデザインの柔軟性を持たせることも期待できます。たとえば、「ディスプレイ向けの少容量ボトル」「コレクション性を高めたシリーズ化」「チームカラーやイベントごとのラベル変更」「ギフトボックスや限定刻印の導入」などは、祝いの場面や贈答文化の多様化に寄り添う手法として有効でしょう。

スポーツ記念品の多くがバリエーションを多層化することで市場を拡大してきたように、日本酒も同じアプローチが可能です。特に、日本酒ボトルは飾って楽しめる工芸性を持つため、記念品としてのポテンシャルが非常に高いジャンルといえます。

祝いの心を世界へ

今回の記念ボトルは国内向けですが、その存在はやがて海外にも波及するでしょう。ドジャースファンやスポーツ文化に親しむ層を通じて、「日本では特別な瞬間に日本酒で祝う」という文化が自然と広がる可能性があります。

海外での日本酒人気が高まりつつある中、『祝いを象徴する特別な酒』という文化的価値を伝えられる点は大きな強みです。今回の取り組みは、そうした文化価値を国内から丁寧に築き上げ、将来の国際的展開へとつなげる第一歩となるでしょう。

八海山のドジャース優勝記念ボトルは、日本酒が持つ本質的価値『祝い』『節目』『喜びの共有』を改めて浮かび上がらせる取り組みです。そしてその価値は、記念品という形を得ることでさらに広い層に届く可能性があります。容量やデザインの柔軟化を含め、今後の展開次第では、日本酒が「世界中の祝いの場に並ぶ記念の酒」として存在感を高める未来も想像できます。

今回の限定発売は、その未来に向けた小さくも意味深い一歩といえるでしょう。

▶ シャンパンファイトに変わるか『AWA SAKE』~ドジャースとともに闘う八海山

▶ 「美味しいお酒」が「SAKE」に! 大谷翔平選手MVPインタビュー通訳が生んだ日本酒への熱視線

▶ 日本酒をメジャーに導く、ドジャース公式日本酒「特別本醸造 八海山 ブルーボトル」

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド


海を越える日本酒:台湾の信仰と日本の技術が拓く「異文化融合」の新時代

2025年11月17日、茨城県の明利酒類株式会社が、台湾の歴史的な宗教施設である鎮瀾宮と共同開発した新ブランド「五十瀾純米大吟醸」の予約を開始しました。これは単なる新商品の発表に留まらず、日本酒が「和食の傍ら」から離れ、海外の文化・信仰の文脈に深く融合し始めたことを象徴する出来事として、酒類業界内外から注目を集めています。

台湾の魂との出会い:「五十瀾」が示す新たな融合の形

「五十瀾 純米大吟醸」の最大の特筆すべき点は、鎮瀾宮が史上初めて正式に日本酒の共同開発に参画したという点にあります。

鎮瀾宮は、航海の守護神「媽祖」を祀り、台湾全土で絶大な信仰を集める場所です。毎年行われる「大甲媽祖遶境」は100万人以上が参加する世界的な宗教行事であり、台湾文化そのものの象徴と言えます。

明利酒類が誇る「明利小川酵母」などの高い醸造技術と、台湾文化の核となる「信仰と伝統」が結びついた「五十瀾」は、単なる輸出商品ではありません。台湾で縁起の良い色とされる「赤と金」を基調としたデザインや、「人々の力を結集し、海のうねりを起こす」というコンセプトは、日台両国の文化的な背景を共有し、現地の文脈の中に日本酒を深く根付かせようとする強い意志を示しています。

これは、日本酒の国際化が、初期の「和食ブームに乗った輸出」から、「現地文化の精神性を取り込んだ融合」という、より深いステージへと移行したことを示唆しています。

グローバルな食卓で「Sake」として定着する

日本酒の海外進出は、ここ十数年で目覚ましい進展を遂げています。その第一段階は、グローバルな食文化の中での地位確立でした。

特にワイン文化が根付く欧米では、日本酒をワイングラスで提供するスタイルが定着しました。これは、吟醸香や複雑な味わいをより楽しむための提案でしたが、結果として、日本酒を「日本の特殊なアルコール」から、「Sakeという独自のカテゴリーを持つ世界の酒」へと認識させるきっかけとなりました。

フランスやイタリアの高級レストランでは、現地のシェフが日本酒をチーズやフォアグラ、肉料理といった伝統的な欧州料理に積極的にマリアージュさせる試みが増えています。例えば、熟成した純米酒が、タンニンが少なく旨味が豊富なことから、重厚な赤ワインではなく、特定の熟成肉の繊細な風味を引き立てるとして採用される事例も一般化しました。これは、日本酒が現地の食のプロフェッショナルに認められ、食文化の一部として組み込まれたことを示しています。

クラフトとカクテル:ライフスタイルへの浸透

さらに深く融合を進める事例として、「クラフトサケ」のムーブメントと「カクテルベース」としての活用が挙げられます。

アメリカやヨーロッパでは、現地の米や水を使用し、現地の味覚やテロワールを反映させた日本酒、いわゆるクラフトサケを製造する酒蔵が続々と誕生しています。彼らの製品は、日本の伝統製法を基にしながらも、現地のビールやクラフトジンなどと並ぶ地域の酒」として認識され、現地のコミュニティに根付いています。

また、ニューヨークやロンドンなどの主要都市のバーでは、日本酒がカクテルのベースとして活用される事例が増加しています。吟醸酒特有の華やかな香りを活かした「サケ・マティーニ」や、純米酒の旨味と酸味を活かした独創的なオリジナルカクテルなどが定番化し、日本酒は現地のバー文化というライフスタイルの一部に組み込まれつつあります。

文化的な「共有財産」としての未来

「五十瀾」の誕生は、これらの流れの最先端を示しています。単に美味しく飲んでもらうだけでなく、台湾の人々にとって精神的な価値を持つ酒としてデザインされたからです。

日本酒は今後、各国・各地域の食や信仰、そしてライフスタイルに合わせて「ローカライズ」され、それぞれの文化に深く根付いた「共有財産」へと進化していく可能性を秘めています。日本の伝統技術を土台としながら、国境を越え、現地の文化に真摯に向き合うことで、日本酒は、世界で独自の地位を確立することになりそうです。

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

チリ発・南米最大の酒の祭典Catad’Or World Wine Awards 2025に見る日本酒の未来

【サンティアゴ・2025年11月6日】中南米最大の国際的な酒類コンペティション「Catad’Or World Wine Awards(カタドール・ワールド・ワイン・アワーズ)2025」の結果が11月6日に発表されました。ワイン・スピリッツが中心の同アワードにおいて、2023年から正式に審査カテゴリーに加わった日本酒(SAKE)が今年も多数の賞を獲得し、世界的な評価を不動のものとしつつあります。

Catad’Or World Wine Awards:南米の酒類文化を牽引する歴史と位置づけ

Catad’Or World Wine Awardsは、チリの首都サンティアゴで毎年開催される、中南米で最も権威ある国際的な酒類コンペティションです。1995年の設立以来、当初はチリ国内のワイン評価を主目的としていましたが、現在はその対象を中南米全域、さらには世界各国のワイン・スピリッツ・そして日本酒などへと広げ、名実ともに南米最大の酒類品評会へと成長しました。

このアワードの大きな特徴は、審査に国際ブドウ・ワイン機構(OIV)の厳格な規定を採用している点です。OIVの「30%受賞ルール」に従い、出品総数の30%までしかメダルを授与しないという厳しい基準は、受賞の価値を非常に高いものにしています。ヨーロッパ圏の権威あるコンテストが数多く存在する中、中南米という巨大な新興市場における「羅針盤」としての地位を確立しており、特に南米諸国への販路拡大を目指す酒類メーカーにとって、その受賞歴は極めて重要な意味を持ちます 。

審査対象入り3年目:日本酒が獲得した確かな手応え

日本酒が正式な審査カテゴリーとして導入されたのは2023年。これは、南米における日本食ブームや、チリのワイン文化との親和性の高さなどから、日本酒の将来的な市場拡大への期待が高まったことを示しています。

2025年のコンペティションにおいては、多くの日本酒が出品され、最高賞にあたる「Mejor Sake」をはじめ、金賞(Gold Medal)、銀賞(Silver Medal)といったメダルが授与されています。このような受賞は、今後の日本酒業界に複合的な好影響をもたらすと考えられます。

最も直接的な効果は、南米市場への本格的な足がかりとなることです。チリやブラジルといった国々は、ワイン文化が根付いており、同じ醸造酒である日本酒を受け入れる土壌が既に存在します。このコンペティションでの高評価は、南米現地の消費者やソムリエに対し、日本酒の品質を保証する強力な「お墨付き」となります。これまでアメリカやヨーロッパが中心だった日本酒の輸出戦略において、「南米ルート」が重要な柱の一つとなる可能性を高めます。

Catad’Or World Wine Awardsでの継続的な受賞は、日本酒を「和食の傍ら」の存在から、世界のアルコール飲料市場における普遍的な嗜好品として位置づけるための、重要な一歩と言えるでしょう。

Mejor Sake嘉美心 純米大吟醸嘉美心酒造株式会社
Great Gold陸奥八仙 natural sparkling八戸酒造株式会社
Great Gold陸奥八仙 貴醸酒八戸酒造株式会社
Great Gold陸奥八仙 特別純米八戸酒造株式会社
おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

北米最大級ワインコンクール「Sélections Mondiales des Vins 2025」日本酒部門の結果が発表される

Sélections Mondiales des Vins(セレクシオン・モンディアル・デ・ヴァン、略称:SMV)は、ワインの国際的な品評会として、カナダのモントリオールで毎年開催されています。その歴史は長く、1983年に第1回が開催されて以来、北米で最も権威あるワインコンペティションの一つとして確固たる地位を築いてきました。

世界におけるSMVの位置付けと日本酒部門

SMVは、国際ブドウ・ワイン機構(OIV)と世界ワイン・スピリッツ・コンペティション連盟(VINOFED)の公認を得ていることが最大の特徴です。この公認は、審査の公平性、透明性、そして厳格な基準が国際的に認められている証であり、世界最大級のワインコンペティションとしての信頼性と威信を裏付けています。受賞歴は、世界市場におけるブランドの認知度向上と販売促進に直結するため、世界中の生産者が注目の的としています。

そのSMVは長年、ワイン部門のみで開催されてきましたが、昨年(2024年)から新たに日本酒(Sake)部門が開設されました。この背景には、世界市場、特に北米市場における日本酒人気の爆発的な高まりがあり、下記のような点を考慮してのことです。

【グローバルな食文化の変化】和食がユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、日本食への関心が高まり、それに伴い日本酒の需要が増加しているため。

【多様な飲用機会】日本酒が、和食だけでなくフレンチやイタリアンといった多様な料理と合わせる酒として認識され始めているため。

【コンペティションの包括性】市場の変化に対応し、国際的な酒類コンペティションとしての包括性を高めるため。

この部門開設は、日本酒が単なる日本のローカルな酒から、世界的な高級酒としての地位を確立する上で、極めて重要なターニングポイントとなっています。

Sélections Mondiales des Vins 2025 日本酒部門の最高金賞

このSMVでは、国際審査員による厳正なブラインドテイスティングで、「GRAND OR/GRAND GOLD(最高金賞)」「OR/GOLD(金賞)」「ARGENT/SILVER(銀賞)」が決まります。今年は10月8日から10月11日にかけて開催され、日本酒部門における「GRAND OR/GRAND GOLD(最高金賞)」は下記5銘柄が選ばれました。なお、「作 槐山一滴水」は、審査員特別賞にも選ばれています。

GRAND OR作 槐山一滴水清水清三郎商店株式会社
GRAND OR作 恵乃智清水清三郎商店株式会社
GRAND OR超特選純米大吟醸 残響 Super7株式会社新澤醸造店
GRAND OR一ノ蔵 純米大吟醸 松山天株式会社一ノ蔵
GRAND OR天明 純米火入 オレンジの天明曙酒造株式会社

▶ Sélections Mondiales des Vins

▶ 作 槐山一滴水|北米最大級のコンクールで最高金賞。プレミアム日本酒

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド


グランプリは山口の名酒「五橋」──世界が注目する日本酒コンテスト「MONACO SAKE AWARD 2025」

2025年10月6日、モナコ公国の名門施設「Yacht Club de Monaco」にて開催された「MONACO SAKE AWARD 2025」において、山口県は酒井酒造株式会社の「純米大吟醸 錦帯五橋」がグランプリに輝きました。このコンテストは、モナコと日本の文化交流を目的に始まった国際的な日本酒コンクールであり、世界中の美食家やソムリエが審査に参加することで知られています。

MONACO SAKE AWARDの国際的な位置づけ

MONACO SAKE AWARDは、単なる品評会ではなく、日本酒の国際的な認知度向上と市場拡大を目的とした文化的イベントです。審査員にはモナコ在住の宮廷シェフや一流ホテルのソムリエなどが名を連ね、地中海の美食都市モナコで開催されることで、フランスやイタリアなど欧州の食文化との融合が試され、日本酒の新たな可能性が探求されます。

特に今年のマリアージュ賞のテーマは「モッツァレラチーズ」であり、日本酒と西洋食材の相性を評価するユニークな試みが注目を集めました。これは、海外市場における日本酒のポジショニングを強化するうえで重要な指標となります。

今回のグランプリ受賞で、「五橋」の酒井酒造にとっては、海外の一流レストランやホテルでの採用が期待されるほか、輸出拡大やブランド価値の向上につながると見られます。それは、国際的な評価を得る大きな機会となるだけでなく、審査結果が酒造りの現場にフィードバックされることで、日本酒業界全体にも好影響を与えるはずです。

▶ 純米大吟醸 錦帯五橋|モナコ・サケ・アワードの最高賞に輝いた日本酒

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド