BIO SAKE EXPO 2025開催で注目集まる「ビオサケ」とは?誕生の背景と日本酒の未来像

2025年11月29日、「BIO SAKE EXPO 2025」が開催され、日本酒業界における新たな潮流として「ビオサケ」が改めて注目を集めました。環境配慮やサステナビリティが世界的なテーマとなる中で、日本酒もまた「何で、どのように造られているのか」が問われる時代に入っています。本イベントは、そうした価値観の変化を象徴するものと言えるでしょう。

そもそも「ビオサケ」とは、オーガニック栽培された酒米や、自然環境への負荷を抑えた製造工程を重視した日本酒を指す言葉です。有機JAS認証を取得した酒に限らず、化学肥料や農薬に極力頼らない農法、地域の生態系と共生する酒造りの思想まで含めて語られることが多い点が特徴です。単なる製法区分ではなく、「姿勢」や「哲学」を含んだ概念として用いられています。

「ビオサケ」はいつから認識され始めたのか

「ビオサケ」という呼称が明確に使われ始めたのは、2017年前後とされています。この頃、オーガニック食品や自然派ワインの市場拡大を背景に、日本酒にも同様の価値軸を求める声が一部の蔵元や流通、消費者の間で生まれました。当初は海外輸出を見据えた動きが中心で、EUなどのオーガニック認証を取得する蔵も現れましたが、国内では制度的な裏付けがなく、概念としての認知にとどまっていました。

大きな転機となったのが2022年です。この年、酒類が正式に有機JAS認証の対象となり、日本国内でも「オーガニック日本酒」を制度として位置付けられるようになりました。これにより、「ビオサケ」は単なる理想論や個別の取り組みではなく、制度と市場の双方から支えられる存在へと一歩前進しました。今回の「BIO SAKE EXPO 2025」は、そうした積み重ねの到達点の一つと捉えることができます。

日本酒市場における「ビオサケ」の位置付けとこれから

現在の日本酒市場において、「ビオサケ」はまだ主流とは言えません。原料米の確保や栽培コスト、安定供給の難しさなど、課題は少なくありません。しかし一方で、消費者の価値観は確実に変化しています。精米歩合やスペック重視の時代から、「どんな土地で、誰が、どのような思いで造った酒なのか」を重視する層が増えているのも事実です。

また、伝統的酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録されたことで、日本酒は「文化」としての側面がより強く意識されるようになりました。その文脈において、「ビオサケ」は伝統を守りながらも、現代的な課題である環境問題や持続可能性に応答する存在として、重要な意味を持ちます。

今後、「ビオサケ」は大量消費型の商品になるというよりも、高付加価値で物語性を持つ日本酒として、国内外で確かなポジションを築いていくと考えられます。特にオーガニック志向の強い海外市場においては、日本酒の新たな入口として機能する可能性も高いでしょう。

「BIO SAKE EXPO 2025」は、ビオサケが一過性の流行ではなく、日本酒の未来を考える上で欠かせない選択肢であることを示しました。自然と共生する酒造りという原点に立ち返りながら、日本酒が次の時代へ進むためのヒントが、そこには確かに存在しています。

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