「Oriental Sake Awards 2025」の最高賞が決まる──アジア市場が示した次の日本酒基準

アジア最大級の日本酒コンテストとして知られる「Oriental Sake Awards 2025」(以下 OSA)において、最高賞「サケ・オブ・ザ・イヤー」に新澤醸造店(宮城県大崎市)の「あたごのまつ 鮮烈辛口」が選ばれました。アジア全域から集まった審査員によるブラインド審査を経て決まるこの賞は、その年を代表するたった一本の日本酒に贈られる栄誉です。本醸造酒である同銘柄が、アジアの大規模市場で最も高い評価を獲得したことは、日本酒の未来に大きな意味を持ちます。

アジア市場で求められる食中酒としての完成度

OSAは香港を拠点とし、アジアに広がる日本酒ファン・飲食店・ホテル・輸入事業者から高い注目を集める国際日本酒コンテストです。アジアは現在、世界で最も日本酒消費が増えている地域であり、日本酒の新たな市場を形成する存在になっています。そこで最高賞に選ばれたということは、単に品質の高さだけでなく、「アジアの食文化に適応し、現地で愛される可能性が最も高い酒」として評価されたことを意味します。

「あたごのまつ 鮮烈辛口」は、キレのある辛口設計に加え、柔らかな米の旨味がバランスよくまとまり、食中酒としての対応力が非常に高い日本酒です。–5℃での氷温貯蔵によるクリアな味わいが保たれている点も評価され、寿司や日本料理はもちろん、東南アジアのスパイス料理や中華料理との相性も自然と高まります。国や文化を超えてペアリングの幅が広がることが、アジア市場で強く支持された理由の一つといえるでしょう。

本醸造の価値がアジアで再定義される

今回の最高賞には、もうひとつ重要な視点があります。それは、「本醸造」というカテゴリーがアジア市場において高く評価された点です。日本国内では純米・吟醸系が注目されがちですが、アジアでは日常酒としての飲みやすさや、料理に寄り添う万能性が求められ、本醸造の持つ「軽快さ」や「キレ」が強い武器になります。

OSAという大舞台で本醸造酒が頂点に立ったことは、日本酒の国際展開において「高価格帯・華やかさ」だけが評価軸ではないという、新たなメッセージでもあります。「毎日の食卓に合わせやすい味」こそが、アジアの日本酒需要を押し上げる原動力であることを示した結果といえます。

アジア発の評価が日本酒の未来を動かす

日本酒の輸出額の伸びをけん引しているのは中国・台湾・香港・シンガポール・タイなど、アジアの国々です。こうした市場では、現地の味覚や酒類文化を踏まえながら、その土地で選ばれる酒であるかどうかが重要になります。

OSAはまさにその指標となるコンテストであり、そこで最高賞を受けたということは「あたごのまつ 鮮烈辛口」がアジアで最も伸びる潜在力を持った銘柄であると評価されたに等しいのです。今後、アジアの飲食店やラグジュアリーホテルで採用が進む可能性も高く、海外販路の拡大に直結する成果となるでしょう。

地域の蔵からアジアの『日常酒』へ

「あたごのまつ 鮮烈辛口」の受賞は、地方の蔵元が生み出す「日常に寄り添う酒」が、アジアの巨大市場へと橋を架けた瞬間でもあります。華やかさではなく、食卓に溶け込む味わいが選ばれたことは、日本酒文化が次の段階へ進みつつあることを示しています。

アジア最大級のコンテストで生まれたこの結果は、これからの日本酒の海外展開において大きな指標となり、さらなる市場拡大と文化交流の鍵を握るものになるでしょう。

▶ アジア最大級の日本酒コンテスト「Oriental Sake Awards 2025」

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