IWC2025チャンピオンサケ「七賢 白心 純米大吟醸」―地域と世界をつなぐ白州の一杯

世界最大級のワイン・コンペティション「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」において、2025年の「チャンピオンサケ」に山梨銘醸の『七賢 白心 純米大吟醸』が選ばれました。日本酒部門に出品されたおよそ1,500銘柄の頂点に立ったこの酒は、単なる美酒としての評価にとどまらず、地域社会の結びつきや輸出体制、さらには白州という土地のイメージにも大きな影響を与える出来事となりました。本稿では、その意味を三つの視点から考えてみたいと思います。

▶ 七賢 白心 純米大吟醸とは

地域社会の繋がりの中で生まれた酒

『七賢 白心』は、北杜市の豊かな自然と人々の協働から生まれた酒です。地元契約農家が丹精込めて育てた酒米を精米歩合27%まで磨き上げ、甲斐駒ケ岳の雪解け水で仕込むという贅沢なつくりがなされています。さらに、マイナス5度で1年間熟成させることで、清らかでありながら奥行きのある味わいを実現しました。蔵元の北原社長は「白心は地域の恵みをボトルに詰め込んだ酒」と語っており、農家、蔵人、地域社会の支えがなければ完成し得なかったことを強調しています。この受賞は、単に蔵元の努力だけでなく、地域全体の取り組みが世界に認められた象徴ともいえるでしょう。

和酒専門商社オオタ・アンド・カンパニーの果たした役割

今回の栄誉を国際的な評価へとつなげた立役者のひとつが、和酒専門商社「オオタ・アンド・カンパニー」です。同社は海外市場への橋渡し役として、現地流通の知見や販売チャネルを築き、日本酒の魅力を正しく伝える役割を果たしてきました。特に七賢は、海外ではまだ知名度が限定的であったため、輸出戦略とブランド発信の両面で専門商社の支援は大きな意味を持ちました。IWCでの受賞によって一躍注目を浴びた今、七賢はグローバルな市場でのプレゼンスを確立する大きなチャンスを迎えており、その土台を築いたのはまさにこうした専門商社の存在だったといえます。

ウィスキーで有名な白州の地に与える影響

白州といえば、世界的に名高いサントリーの白州蒸溜所を思い浮かべる人も多いでしょう。豊かな森と清冽な水に育まれたこの地は、長らくウィスキーの名産地として知られてきました。しかし今回、『七賢 白心』がIWCのチャンピオンに輝いたことで、白州は「ウィスキーの聖地」であると同時に「世界一の日本酒を生む土地」としても認知される可能性があります。観光や地域ブランディングの観点からも、日本酒とウィスキーが共に評価されることは地域全体の魅力を高め、国内外からの訪問者増加にもつながるでしょう。今後、白州は「世界に誇る酒文化の発信地」として二重のブランド価値を持つことになりそうです。


IWC2025における『七賢 白心 純米大吟醸』の受賞は、地域社会の協働がもたらした成果であり、和酒専門商社の国際戦略が後押しし、さらに白州という土地の価値を再定義する出来事となりました。一杯の酒がもたらす影響は、地元農業から輸出ビジネス、観光に至るまで幅広く、まさに「酒は地域を映す鏡」であることを示しています。この受賞を機に、日本酒が地域の未来を拓く存在としてさらに進化していくことが期待されます。

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