和光アネックス、「IWA 5」取り扱い開始 ──スイーツと日本酒の新しい関係を提案

銀座・和光アネックスで、話題の日本酒「IWA 5」がラインナップに加わりました。フランス・シャンパーニュの名門「ドン ペリニヨン」を率いたリシャール・ジョフロワ氏が手がけるこの日本酒は、彼の代名詞ともいえる「アッサンブラージュ(調合)」の技術が存分に発揮された逸品です。今回、和光では「IWA 5」とショコラ・フレ(生チョコレート)のペアリングを提案し、日本酒とスイーツの新たな関係性を提示しています。

「IWA 5」が示すアッサンブラージュの極み

「IWA 5」は、富山県・白岩で仕込まれる純米大吟醸酒でありながら、シャンパーニュの哲学を背景に持ちます。複数の酒米や酵母、仕込み年度の異なる原酒をブレンドすることで、単一の酒にはない奥行きと調和を生み出しているのが特徴です。ジョフロワ氏は「ひとつの完成形ではなく、進化を続ける味わい」をテーマに掲げ、毎年のアッサンブラージュによって「IWA 5」というブランドの生命を更新し続けています。

和光アネックスでは、この「IWA 5」を複数の仕込み年度で飲み比べることができる特別な体験を用意。日本酒のヴィンテージという新しい概念を、ラグジュアリーブランドの文脈で提示しています。これにより、日本酒がワインやシャンパーニュと同じように「年ごとに語る」文化として根づいていく可能性を感じさせます。

スイーツと日本酒の“新しいマリアージュ”

今回の注目は、「ショコラ・フレ」との組み合わせです。和光のショコラティエが手がけるフレッシュなチョコレートは、繊細な口溶けと香りの広がりが特徴で、「IWA 5」の多層的な味わいと見事に響き合います。日本酒の米由来の甘みと旨みがカカオの苦味をやわらげ、反対にチョコレートのコクが酒の酸味や余韻を引き立てる。単なる「合わせる」ではなく、互いの世界を補完しあう関係が生まれています。

興味深いのは、このペアリングが「酒にスイーツを合わせる」という従来の発想に留まらず、「スイーツに酒を合わせる」という逆の発想をも促している点です。ジョフロワ氏のアッサンブラージュ哲学をスイーツに応用し、「ショコラ・フレ」に合わせたブレンドのIWAを生み出す──そんな可能性も夢ではありません。素材の対話による調和という意味では、双方がアーティストの領域で共鳴していると言えるでしょう。

日本酒の未来を切り拓くアートとしてのペアリング

日本酒と洋菓子の融合は、これまでにも試みられてきましたが、和光の提案はその域を超えています。高級ショコラを通じて、日本酒の持つ繊細さと構築的な味わいを“ラグジュアリーの文法”で表現する──それはまさに、日本酒を世界の高級嗜好文化の中に再定義する試みです。

今後、「IWA 5」のようにワールドワイドな視点をもつブランドが、スイーツや香り、音楽など異分野との協働を進めることが予想されます。特に、アッサンブラージュという手法は、異素材を調和させるという点で、ペアリング文化と極めて親和性が高いと言えるでしょう。たとえば「チョコに合う酒」「チーズに合う酒」といったテーマ別の限定ボトルが登場すれば、日本酒の楽しみ方はさらに広がっていくでしょう。


銀座という洗練の舞台で始まった「IWA 5」とショコラ・フレの出会いは、日本酒の新しい物語の幕開けです。ジョフロワ氏の掲げる「調和の美学」が、和光のショコラティエによって味覚の芸術へと昇華されたとき、日本酒は単なる伝統産業ではなく、世界に通じる表現媒体として進化を遂げていくのかもしれません。

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日本酒に広がる「アッサンブラージュ」の可能性〜ブレンドがもたらす新しい酒造りのかたち〜

近年、日本酒の世界で「アッサンブラージュ(Assemblage)」という言葉が注目を集めています。これは、複数の異なる原酒をブレンドしてひとつの酒に仕上げる手法で、ワインやウイスキーの分野では古くから一般的に用いられてきました。

しかし日本酒では、これまで単一の仕込みやタンクごとの個性を重視する傾向が強く、ブレンドはやや裏方の技法として捉えられてきました。特に純米大吟醸など高級酒では、「単一タンク=純粋」「手間をかけた酒」といったイメージが定着していたため、アッサンブラージュという概念が前面に出ることはあまりありませんでした。

そんな中、この伝統的な価値観に新しい風を吹き込んだのが、富山県の酒蔵白岩で醸す「IWA 5」です。これは、ドンペリニヨンの5代目醸造最高責任者であったリシャール・ジョフロワ氏が手掛ける日本酒で、アッサンブラージュが核となり、バランスとハーモニーを追求したものとなっています。

ブレンドが広げる日本酒の表現力

アッサンブラージュには、酒質を安定させるだけでなく、日本酒の多様な魅力を引き出す力があります。

たとえば、異なる酵母や精米歩合、発酵温度で仕込んだ原酒を組み合わせることで、単一仕込みでは実現できない香りの重層感や、酸味と旨味の複雑なバランスが生まれます。新政酒造の「亜麻猫VIA」では、別々に販売される「亜麻猫」「陽乃鳥」「涅槃龜」をブレンドすることで、甘さと酸の絶妙な調和を実現しています。

同様に、栃木県の「仙禽」なども、味わいのバランスを追求する中で、意図的なブレンドを採用しはじめています。これにより、ロットごとのばらつきを抑えつつ、表現力豊かな酒造りが可能になってきているのです。

さらに今後は、異なる産地の米や水を使用した酒をブレンドする「越境的アッサンブラージュ」や、複数ヴィンテージの酒を合わせる「熟成ブレンド」など、新たな表現の道も広がっていくと考えられます。

今後の展望と新しい市場の可能性

今後、アッサンブラージュは日本酒業界において以下のような広がりを見せると期待されています。

まず、味の「安定化」です。特に輸出や定番ブランドにおいては、毎年安定した品質が求められます。複数の原酒をブレンドすることで、気候や原料の変動にも柔軟に対応することができます。

次に、「熟成酒の活用」です。異なる熟成期間の酒を組み合わせることで、長期熟成の深みと若酒のフレッシュさを同時に表現でき、これまでにない飲み心地が生まれます。

また、今後は「カスタマイズ型のブレンド」や「ブレンド専門ブランド」の登場も期待されます。たとえば、複数の原酒から自分好みにブレンドする体験型の販売や、各地の蔵から原酒を仕入れて独自にブレンドするネゴシアン的なビジネスも考えられます。既に、新潟の「千代の光酒造」や、パーソナルブレンド体験施設「My Sake World」などは、このような取り組みをスタートさせています。

ブレンドは「妥協」ではなく、むしろ「設計」や「創造」として捉えられる時代へと移りつつあります。アッサンブラージュは、酒造りにおける職人の感性や技術を試される芸術的な営みであり、日本酒の未来に多彩な可能性をもたらしてくれることでしょう。

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