高知発の日本酒酵母 「CEL-24」の酒かす~スイーツとしての新境地

高知県で開発された日本酒酵母 「CEL-24」 を使った酒かすを原料とするベイクドチーズケーキが、地域ならではの新しいスイーツとして大きな注目を集めています。2025年12月29日の販売開始から約2週間で 230本を販売 するヒット商品となり、日本酒業界やスイーツ市場に新たな可能性を示す動きとして業界関係者の注目を集めています。

このチーズケーキは、高知市の複合施設「とさのさとアグリコレット」で販売されている 『酒かすベイクドチーズケーキ』(1本税込1,404円)。香美市の菓子メーカー「スウィーツ」が開発した商品で、120年以上の歴史を持つ酒蔵・浜川商店が醸造した純米吟醸「美丈夫」の酒かすが使用されています。この酒かすには高知県が独自に開発した吟醸酵母 CEL-24 の香りが濃厚に残っており、しっとりとしたチーズケーキの生地と相まって華やかな香りが口いっぱいに広がります。

CEL-24とは何か?

「CEL-24」とは、高知県内で開発された日本酒用の酵母で、特に フルーティーで華やかな香り を生む点が特徴とされています。一般的な日本酒酵母と比べ、香り成分であるエステルの生成量が多く、パイナップルやマンゴー、トロピカルな果実を思わせる豊かなアロマが楽しめることから、国内外の日本酒ファンの間でも人気を集めています。実際に「CEL-24」 を使った純米吟醸酒は、白ワインのような香りと甘み、酸味のバランスが特徴として評価されているほか、その飲みやすさから日本酒が苦手な人や若年層にも好評です。

もともと「CEL-24」の酒かすは、香りが強すぎて通常の料理用途には向かないとされ、使い道が限定的でした。しかしスウィーツ側の「高知ならではの菓子を作れないか」という発想から試作が重ねられ、今回のチーズケーキ開発に繋がったという経緯があります。酒かすの豊かな香りと、ジャージー牛乳のコク、クランベリーの甘酸っぱさが絶妙に調和し、「日本酒と一緒に楽しみたいスイーツ」として評判が広がっています。

若い層や観光客にも人気

販売現場の声によると、購入者の多くは 若い女性 で、SNSや口コミを通じて評判が急速に広がっているとのことです。また、高知龍馬空港での販売も行われており、県外の観光客が手に取る機会も増えています。「日本酒とスイーツの新たなペアリング」という切り口は、従来の日本酒マーケティングにも新風を吹き込む動きといえるでしょう。

さらに今後は高知市・南国市のスーパー、大阪にある高知県アンテナショップ「とさとさ」でも販売が予定されており、地域外への展開も見据えた販売戦略が進んでいます。スウィーツでは「県内の他の酒蔵ともコラボを進め、利き酒ならぬ利きケーキの楽しみ方を提供したい」とし、商品ラインアップの広がりにも意欲を見せています。

業界への影響と今後

今回のCEL-24酒かすチーズケーキのヒットは、従来の「日本酒は飲むもの」という枠を超えた 新しい日本酒の楽しみ方の提示 となりました。特に若年層や女性層への日本酒文化の浸透という点で、商品開発やプロモーションの方向性に一石を投じています。

日本酒業界はここ数年、海外需要の拡大や多様なスタイルの日本酒の登場など変革の時期を迎えていますが、飲料以外の付加価値商品の開発が今後の差別化要素となる可能性が高まっています。CEL-24のような特性の強い酵母や、それを活かした二次製品のヒットが増えることで、地域ブランドの強化や観光資源としての活用も期待されます。

高知発のこの取り組みは、単なる話題商品にとどまらず、日本酒文化の裾野を広げる 新たなムーブメントの起点となるかもしれません。

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インドネシア商社が高知を訪問~甘口日本酒で新市場開拓の兆し

インドネシアの食品輸入商社「リブラフードサービス社」が、10月7日から9日にかけて高知県内の酒蔵を訪問しました。訪問の目的は、日本酒の輸出に向けた具体的な協議や商品選定で、今後の東南アジア市場における日本酒展開を見据えた動きとみられます。

富裕層を中心に広がる「甘口日本酒」人気

近年、インドネシアでは日本酒への関心が高まり、富裕層や都市部のレストランを中心に“ちょっとした日本酒ブーム”が起きています。人口2億7000万人を誇る同国は、イスラム教徒が多数を占めるため、飲酒が文化的に制限されている一方で、非イスラム層や外国人駐在員などを含めると約5000万人規模の飲酒市場が存在するとされています。これは東南アジアの中でも非常に大きな潜在需要といえます。

その中で特徴的なのが、インドネシアの食文化に合った“甘口嗜好”です。現地では甘味の強い料理が多く、これに寄り添う形で、やや甘口の日本酒が好まれる傾向にあります。これまで辛口で知られてきた日本酒の中でも、フルーティーで柔らかい甘みを持つタイプが人気を集めています。

「CEL-24酵母」がもたらした新しい味わい

高知県の日本酒といえば、長らく「土佐鶴」や「司牡丹」に代表されるようなキリッとした辛口が主流でした。しかし、2013年に高知県工業技術センターが開発した酵母「CEL-24」の登場により、状況は一変しました。この酵母を使うことで、リンゴや南国フルーツを思わせる華やかな香りと、独特のフルーティーな甘みを持つ酒が誕生し、全国的に注目を浴びています。今回、リブラフードサービス社が高知を訪問した背景にも、この「CEL-24」系統の酒がインドネシア市場で受け入れられる可能性を見据えた狙いがあるとみられます。

課題と可能性

一方で、輸出には課題もあります。日本酒は温度管理が品質を大きく左右する繊細な酒です。インドネシアのような高温多湿な気候では、輸送中や保管中の品質維持が難しく、現地の物流体制や保冷輸送の確立が重要になります。また、インドネシア国内でのアルコール販売に関する規制も複雑で、宗教的配慮を踏まえた販売戦略が求められます。現在、流通している日本酒は高価格帯のものが中心で、一般市場にはまだ十分に浸透していません。

それでも、今回のように現地商社が日本の酒蔵を直接訪問するケースが増えていることは、海外市場の広がりを象徴する動きといえます。特に東南アジアでは、日本食レストランの増加に伴い、日本酒を「料理と楽しむ文化」として紹介する動きが活発化しています。甘口の酒が人気という傾向は、高知の新しい酒質との親和性が高く、今後、同県がインドネシア市場で存在感を高める可能性もあります。

日本酒業界にとって、インドネシアは決して容易な市場ではありません。しかし、5000万人という飲酒可能人口を抱える巨大な潜在市場であり、品質管理や現地の嗜好に合わせた酒づくりが進めば、新たな成長の柱となることも期待されます。今回の商談は、そうした未来に向けた第一歩として、大きな意味を持っているといえるでしょう。

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