奈良県葛城市に拠点を置く老舗酒蔵、梅乃宿酒造株式会社(以下「梅乃宿酒造」)は、2025年11月23日、オンラインファン・コミュニティ「梅乃宿KURABU」のメンバーとともに、共創企画「ワクワク日本酒体験ラボ」の第1日目を開催しました。
この取り組みは、単なる「お酒を飲む」体験を超えて、蔵元とファンが対話し、造り手と飲み手が「ともに」酒を創るプロセスを共有することで、日本酒を文化体験としてリ・デザインする試みでもあります。
「体験」から「共創」へ—味わいを決める開発会議も
当日は、抽選で選ばれた「梅乃宿KURABU」会員が蔵元を訪問、通常は非公開の仕込み部屋を含む特別蔵見学を行い、蔵人の説明を受けながら酒造りの現場に触れました。その後、「どのような味わいにしたいか」「どんなシーンで飲んでほしいか」といった議論を、利き酒を交えつつ蔵人と参加者が展開。参加者の「花見シーズンに軽やかに飲める華やかですっきりとした味わいにしたい」という声がうけて、今回の共創酒の方向性が決まりました。
開発プロセスのラベルデザイン・ネーミングなどもオンラインコミュニティ内で投票によって決定予定。最終的な完成試飲会とラベル作りを伴う第2日目は2026年3月28日に予定されています。
日本酒を「文化体験の道具」に転換する
この企画が示すのは、いま日本酒が、「ただ飲む酒」から「体験として楽しむ」方向へ変化しているということです。
- 蔵見学という場で、伝統的な酒造りの機械・温度管理・酵母や米の違いに触れる体験。
- ファン自身が味わいやラベルを議論し、酒づくりに参加するという能動的な関与。
- オンラインコミュニティを通じて、離れた場所からでも蔵との接点を持つことができるプラットフォーム。
これらがかみ合うことで、酒そのものだけでなく「造る過程」「場」「人との繋がり」が一体となった文化的な体験価値が生まれています。
また、梅乃宿酒造が掲げる「新しい酒文化を創造する」というパーパスにも合致。130年以上の歴史を持ちながら、ファンとともに『ワクワクする日本酒』を創る姿勢が現れています。
飲み手との壁を壊す蔵元とファンの関係性
従来、酒蔵と飲み手の関係は「造る側/飲む側」という一方通行になりがちでした。しかしこのプロジェクトでは、飲み手が造り手と直接ディスカッションすることで、味の背景にある技術・発酵・原料などへの理解が深まります。こうした関与が、飲む側の意識を変え、酒を「知る・創る・楽しむ」対象に転換しています。
また「夫があまり日本酒が得意でないが…」という声から、より幅広い層に向けて日本酒を開く姿勢も見えます。例えば、軽やかな味わいや華やかさを意識することで、初心者にも訴求する酒づくりが行われている点が注目されます。
このような取り組みは、酒造り体験・蔵見学・ラベルデザイン体験など、観光・体験サービスと融合する動きとしても捉えられます。蔵を訪れることで地域文化に触れ、ファンと蔵人が顔を合わせ、酒を通じたコミュニティが育まれる。こうした体験型の酒文化が今後増えることで、日本酒は「場をつくるキュレーター」としての役割も担うようになっていくでしょう。
梅乃宿酒造のワクワク日本酒体験ラボは、単なる『酒』を超えて『文化体験』へと日本酒を引き上げる新たな試みです。蔵人とファンが共に造るプロセス、オンラインとオフラインをつなぐコミュニティ、味覚だけでなく体験そのものを価値とする視点。これらが融合することで、今後の日本酒は「飲むもの」から「参加・体感するもの」へと進化していく可能性を示しています。日本酒ファンはもちろん、地域文化や体験消費を求める人々にとっても注目に値する動きと言えるでしょう。
