2025年9月6日、長野県松本市で開催された「第2回 長野県のご当地グルメに合う信州の地酒品評会」において、木曽の老舗酒造・中善酒造店が醸す「中乗さん 純米吟醸酒」が、栄えある第1位「ベストカップル賞」に選ばれました。今回の品評会は、信州プレミアム牛と地酒のペアリングを一般参加者がブラインド形式で評価するというユニークな試みで、150名の審査員による投票の結果、「中乗さん」が最も多くの支持を集めました。
「中乗さん 純米吟醸酒」は、穏やかな香りと柔らかな口当たり、そして後味に広がる米の旨みが特徴です。信州プレミアム牛の繊細な脂の甘みとしっとりとした肉質に対して、この酒は過度に主張せず、料理の風味を引き立てる“縁の下の力持ち”的な存在として高く評価されました。特に、山椒や味噌ベースのソースとの相性が抜群で、酒の酸味と旨みが味覚のバランスを整え、余韻に深みを与えていたといいます。
今回の品評会では、専門家ではなく一般参加者による評価が重視されました。これは、生活者目線のリアルな「おいしさ」を反映するものであり、地酒が日常の食卓でどのように受け入れられるかを探る重要な機会となりました。人々の味覚や嗜好は、地域性や食文化、記憶といった多様な要素に影響されるため、一般参加型の評価には、地酒の新たな可能性を拓く力があります。
また、こうした参加型の取り組みは、消費者が地酒文化の担い手として関与する「共創」の場でもあります。自らの体験を通じて「この酒はこの料理に合う」と実感することで、地酒への愛着や関心が高まり、地域ブランドの育成にもつながります。今回の受賞は、単なる味の評価を超えて、信州の自然、文化、そして人々の営みが織りなす物語の一端を示すものといえるでしょう。
長野県の地酒は、今後ますます「食中酒」としての価値を高めていくと予想されます。華やかな香りや高精白のスペック競争ではなく、料理との相性や飲み疲れしない設計が重視される傾向が強まっており、地元食材とのペアリングを通じて、地酒が“食の体験”の一部として位置づけられる流れは加速しています。
若手蔵元による企画・運営という点も、長野酒の未来を語るうえで見逃せません。伝統を守りながらも、柔軟な発想で新しい価値を創造する姿勢は、地酒文化の持続可能性を高める鍵となるでしょう。
「中乗さん 純米吟醸酒」の受賞は、信州の地酒が食とともにあることでその魅力を最大限に発揮することを改めて示しました。今後も、こうした品評会を通じて、長野酒がより多くの人々に愛され、地域の誇りとして育まれていくことを期待したいと思います。
