新設日本酒コンテスト「シェフが選ぶ美酒アワード2026」が示す新たな日本酒の評価軸

第6回「美味アワード2026」において、新設された「シェフが選ぶ美酒(日本酒)」部門の審査結果が発表され、1月17日に授賞式がありました。本部門は、料理人の視点から日本酒を評価するという点で、従来の日本酒コンクールとは一線を画す取り組みであり、日本酒の価値を料理との関係性から再定義する試みとして注目を集めています。

今回、最高評価となる三ツ星には、料理ジャンルごとに以下の4本が選出されました。

【和食】宮尾酒造「〆張鶴 純 純米吟醸」
【フレンチ】岩瀬酒造「岩の井 i240 純米吟醸 五百万石」
【イタリアン】一ノ蔵「Madena」
【中華】出羽桜酒造「出羽桜 貴醸酒 MATURED」

これは、各ジャンルの料理人がブラインド審査のもと、「自らの料理とのマッチングにおいて価値がある」と認めた日本酒であるという点に意味があります。本部門が設けられた背景には、料理とのペアリング価値そのものを評価軸とする意図があることが公表されています。審査では、各料理に対して相性のよい酒かどうか、ストーリー性や飲食店での導入しやすさなど多角的な視点が採り入れられており、単純な香味の優劣のみならず、料理との関係性を重視して選定されたことが強調されています。

ところでこの審査は、日本酒がもはや「和食専用の酒」ではなく、世界の料理と並走できる存在であることを、極めて説得力をもって示しています。フレンチやイタリアン、中華といったジャンルにおいて、ワインの代替ではなく、日本酒ならではの選択肢として評価された意義は小さくありません。

また、この部門の創設は、造り手にとっても大きな示唆を与えます。これまでの日本酒評価は、どうしても香味の完成度や技術的精度に重きが置かれてきました。しかし今回の審査は、「どの料理と、どのように寄り添うか」という実用的かつ市場志向の視点を強く打ち出しています。これは、日本酒が飲食店や家庭の食卓で、より具体的に選ばれる時代に入ったことを象徴しているといえるでしょう。

さらに、料理人が評価主体となることで、日本酒と料理の関係性が一方通行ではなく、双方向の創造へと発展する可能性も見えてきます。酒に合わせて料理を考えるだけでなく、料理に合わせて酒を選び、酒に合わせて料理を再構築するという、新たな食文化の循環が生まれる土壌が整いつつあります。

総じて、「シェフが選ぶ美酒(日本酒)」部門の創設と、その三ツ星受賞結果は、日本酒の価値を『味の優劣』から『食体験の完成度』へと引き上げる重要な一歩であります。今回選ばれた4本は、単なる受賞酒ではなく、日本酒が世界の料理と並ぶ時代の象徴的存在といえるでしょう。

この評価軸が今後定着していけば、日本酒はさらに多様な食の現場へと浸透し、国境やジャンルを超えた存在として、新たな進化を遂げていくことが期待されます。

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