夏酒の常識を覆す!『日本酒dancyu vol.2』好評発売中

7月26日、食のエンターテインメント雑誌『dancyu』の別冊『日本酒dancyu vol.2』が発売されました。2025年より「日本酒dancyu」として生まれ変わった第2号となる今号は、「夏酒」に焦点を当てた、dancyu誌上初の本格的な夏の日本酒特集です。

『dancyu』が日本酒業界に与えてきた影響

『dancyu』は、長年にわたり食文化を深く掘り下げ、特に日本酒特集は高い評価を得てきました。そして、多くの日本酒ファンにとって「バイブル」のような存在となり、日本酒業界全体に強い影響を与えてきたのです。

中でも特筆すべきは、日本酒の魅力を一般層に広く伝える役割を担ってきた点です。専門的な知識がなくても、写真の美しさや識者の解説、そしてなにより「食とのペアリング」に重きを置いた構成が、これまで日本酒に馴染みがなかった層にも興味を持たせるきっかけを作ってきました。多くの読者がdancyuをきっかけに日本酒の世界に足を踏み入れ、その奥深さに魅了されていきました。

また、『dancyu』は特定の銘柄や酒蔵のブレイクスルーにも大きく貢献してきました。誌面で取り上げられた酒蔵や銘柄は、一躍脚光を浴び、全国の酒販店や飲食店で品切れが相次ぐほどの人気を獲得することも少なくありませんでした。例えば、「而今」などの人気銘柄が今日の地位を確立する上でも、dancyuは大きな役割を果たしたと言われています。

さらに、日本酒の多様な楽しみ方を提案してきたことも、業界への大きな貢献です。単に「飲む」だけでなく、どのような料理と合わせるか、どのような器で飲むか、どのようなシチュエーションで楽しむかといった、ライフスタイルとしての日本酒を提示することで、日本酒文化の裾野を広げてきました。低アルコール酒や発泡性日本酒、熟成酒など、新たなトレンドが生まれるたびに、それをいち早く紹介し、消費者の理解を深める役割も担っています。

そして、『dancyu』の誌面は、酒販店や飲食店にとっても重要な情報源となっています。掲載された酒蔵や銘柄は、仕入れの参考にされたり、お客様への提案材料になったりすることで、日本酒市場の活性化に寄与してきました。データが詳しく書き込まれている点や、掲載された日本酒を販売する酒販店リストを毎号掲載している工夫も、読者の購買行動を後押しし、酒販店の売上にも貢献しています。

『日本酒dancyu vol.2』の特集概要

今回の『日本酒dancyu vol.2』のテーマは、「進化!の夏酒」。これまで夏酒といえば、ガス感があったり低アルコールだったりと、飲みやすさを全面に出したものが主流でしたが、今号では「ランクアップした“大人の夏酒”」に注目しています。

誌面では、造り手が自由な発想で翼を広げた、いわば「フリーダム」な日本酒たちが紹介されています。例えば、この夏初リリースの「光栄菊 Noon Crescent」は、酸を抑えながらドライに仕上げた一本で、酒販店で人気になっているといいます。また、「ヤマノコトブキ グッドタイムズサマーセッション」は、独自開発の泡沫(うたかた)発酵製法による軽快なガス感が特徴とされており、新たな夏酒の可能性を感じさせます。

さらに、近年注目を集める「菩提酛・水酛の酒」や「クラフトサケ」といったテーマも深掘りされています。菩提酛は奈良県の菩提山正暦寺にルーツを持つ伝統的な製法で、「みむろ杉 木桶菩提酛 山田錦」のように、低アルコールながら奥深い味わいを実現した銘柄が紹介されています。クラフトサケについても、日本酒の製法をベースにしつつ、米や米麹以外の原料を使用したり、新たな技術を取り入れたりした革新的なお酒に光を当てています。

「日本酒は、夏こそ旨い!」を掲げ、夏の食卓を豊かに彩る日本酒の多様な魅力を、美しい写真と詳細な解説で余すことなく伝えています。日本酒ファンはもちろんのこと、これまで夏酒にあまり関心がなかった層にも、新たな発見と驚きを提供してくれる一冊となるでしょう。

『日本酒dancyu vol.2』は、紙版が1,700円(税込)で、電子版も同時発売されています。日本酒の新たな楽しみ方を提案し続けるdancyuの最新刊は、夏の日本酒ライフをより一層充実させること間違いなしです。

▶ 『日本酒dancyu vol.2』紙版

▶ 日本酒dancyu vol.2(dancyu 2025年8月号別冊) [雑誌]【電子書籍】[ dancyu編集部 ]

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

日本酒、深まる酩酊と情感:サブカルチャーが紡ぐ新たな物語

日本酒と聞くと、私たちはしばしば、その繊細な香りや奥深い味わいを想起します。米と水、そして杜氏の技が織りなす芸術品として、じっくりと吟味し、その多様な表情を楽しむのが一般的な嗜み方でしょう。しかし、現代において、日本酒は必ずしも「味わう」ことだけを目的とする存在ではありません。時には、純粋に「酔うための存在」として求められ、その酩酊が、私たちの魂を揺さぶり、深い感情的な体験へと誘うことがあります。

この現象は、特に日本酒がサブカルチャーと深く結びつき始めたことで顕著になっています。アニメ、ゲーム、VTuberといったジャンルのファンたちは、お酒を飲む行為そのものに、共通の情熱や推しへの愛情を重ね合わせます。彼らにとって、グラスの中の日本酒は、単なるアルコール飲料ではなく、共有された体験の触媒であり、時には自らを解き放ち、感情を揺さぶるための大切なツールとなるのです。酔いがまわるにつれて、会話は弾み、推しへの熱い思いが溢れ出し、共通の趣味を持つ仲間との絆がより一層深まる。日本酒は、まさに「魂を揺さぶる」存在として、彼らの心に寄り添っています。

そして、この感情的な結びつきを一層強固なものにするのが、コラボレーションによって生まれた特別なボトルデザインです。従来の日本酒のボトルは、伝統的な書体や紋様、シンプルな意匠が主流でした。しかし、サブカルチャーとの融合により、ボトルデザインは、愛されるキャラクターのイラストや作品の世界観を表現した、色彩豊かで魅力的なアートワークへと変貌を遂げています。

これらのデザインは、単なる容器に留まりません。ファンにとって、それはまるでフィギュアやぬいぐるみのように、「抱きしめることができる」存在となるのです。お酒を飲み干した後も、ボトルは捨てられることなく、コレクションの一部として大切に飾られます。棚に並んだコラボボトルは、手にするたびに、そのお酒を飲んだ時の高揚感、推しを応援した日々、そして仲間たちとの語らいの記憶を呼び起こします。一本一本のボトルが、その人だけの特別なエピソード、つまり「個人の物語を紡ぎだす」きっかけとなるのです。それは、推しとの出会いや成長、作品への深い共感、あるいは人生の節目を彩った思い出など、多岐にわたるでしょう。日本酒のボトルが、単なる消費財から、感情的な価値を持つパーソナルなアイテムへと昇華していくのです。

このように、日本酒はサブカルチャーと非常に馴染みやすい特性を持っています。その理由の一つは、日本酒がもともと持っていた「地域性」や「物語性」が、キャラクターや作品の持つ世界観と共鳴しやすい点にあります。特定の地域で生まれたお酒が、特定のキャラクターやストーリーと結びつくことで、より深く、多層的な魅力を帯びるのです。また、日本酒の多様な味わいや製造方法が、コラボレーションの幅を広げ、キャラクターの個性や作品の雰囲気を表現する上で、無限の可能性を提供します。

そして、この日本酒とサブカルチャーの密接な関係を象徴する最新のニュースが、今日7月27日まで予約受付して発売されるVTuberグループ『あおぎり高校』所属、春雨麗女さんのコラボ日本酒「純米吟醸 人生で起こることは全て酒を飲むための口実」です。彼女のデビュー2周年を記念して、福島県の奥の松酒造と共同開発されたこの日本酒は、ファンにとって「推し」との絆を深め、共に感動を分かち合うための特別な一本となるはずです。このコラボは、日本酒が単なる飲み物ではなく、感情を揺さぶり、物語を紡ぎ、そして「抱きしめることができる」存在へと進化を遂げていることを、何よりも雄弁に物語っています。

▶ あおぎり高校 春雨麗女コラボ日本酒「純米吟醸 人生で起こることは全て酒を飲むための口実」

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

和酒フェス in 中目黒:猛暑を吹き飛ばす日本酒の新潮流と進化する楽しみ方

かつて日本の夏といえば、キンキンに冷えたビールが定番でした。30度を超えるような盛夏に、わざわざ日本酒を選ぶ人は少数派。熱燗はもちろんのこと、冷や酒でさえも「夏向きではない」という認識が一般的だったように思います。しかし、時代は変わり、日本酒の楽しみ方も多様化の一途を辿っています。そんな変革の象徴とも言えるイベント、「第28回 和酒フェス in 中目黒」が、熱気と活気に包まれて7月27日まで開催されています。

猛暑の中の熱狂

今年の夏の暑さは特に厳しく、フェス初日の今日も気温は35度に迫る猛暑日となりました。しかし、そんな中にもかかわらず、会場である中目黒GTタワー前広場には、開場前から長蛇の列ができていました。来場者の顔には汗が滲んでいましたが、その目には期待と興奮の色が宿っており、まさに「猛暑を吹き飛ばす熱気」といった様相を呈していました。この光景は、日本酒がもはや特定の季節に限定されるものではなく、一年を通して楽しめる飲み物として、幅広い層に浸透していることを如実に物語っていました。

スパークリングと酒ハイ、夏の主役に躍り出る

会場内では、全国各地から集まった個性豊かな蔵元が、自慢の銘酒を来場者に振る舞いました。その中でも特に注目を集めていたのが、スパークリング日本酒と酒ハイ(日本酒ハイボール)です。

スパークリング日本酒は、その繊細な泡立ちとフルーティーな香りが、夏の暑さに疲れた体を爽やかに癒してくれます。シャンパンやスパークリングワインのように乾杯酒としても楽しめることから、若者や女性を中心に高い人気を博しています。今回、「日本酒はちょっと苦手意識があったけれど、これなら飲みやすい!」といった声も多く聞かれ、新たな日本酒ファンを獲得するきっかけとなっているようでした。各ブースでは、微発泡からしっかりとした発泡感のあるものまで、多様なスパークリング日本酒が用意されており、来場者はそれぞれの好みに合わせて飲み比べを楽しんでいました。

そして、もう一つの主役は酒ハイ。ウィスキーや焼酎のイメージが強いハイボールですが、日本酒をソーダで割ることで、より軽やかで飲みやすいカクテルに変身します。日本酒本来の旨味や香りを損なうことなく、清涼感をプラスした酒ハイは、まさに夏の暑さにぴったりの選択肢でした。

酒ハイの可能性にいち早く着目し、その魅力を発信してきた宮城県の一ノ蔵も、酒ハイブースにボトルを並べていました。一ノ蔵は、2020年に「無鑑査本醸造辛口」をソーダで割る「無鑑査ハイボール」という新たな飲み方を提案し、長年愛されてきた定番商品に新たな光を当て、その復権に大きく貢献しました。この成功は、伝統ある日本酒に現代的なアレンジを加えることで、新たな需要を喚起できることを証明しました。今回の和酒フェスでも、レモンやライムなどの柑橘類を添えたりするなど、趣向を凝らした提案がされており、来場者はその多様性に驚きと喜びの声を上げていました。「日本酒はロックで飲むのが好きだったけど、酒ハイもアリだね!」「これなら何杯でも飲めちゃう」といった感想が飛び交い、夏の新しい定番ドリンクとしての可能性を強く感じさせました。

これらの新しい飲み方は、伝統的な日本酒のイメージを打ち破り、よりカジュアルでスタイリッシュな楽しみ方を提案するものです。これにより、日本酒は、ハレの日だけでなく、日常の様々なシーンに溶け込むことができる、親しみやすい存在へと進化を続けていると言えるでしょう。

和らぎ水がもたらす安心感と新たな関連商材の可能性

和酒フェスの会場で、もう一つ印象的だったのは、多くの来場者が「和らぎ水」を積極的に利用していたことです。和らぎ水とは、日本酒を飲む際に、合間に飲む水のこと。アルコールの分解を助け、悪酔いを防ぐ効果があると言われています。特に猛暑の中での飲酒は、熱中症のリスクも高まるため、和らぎ水の重要性は一層増します。

一部のブースでは、和らぎ水を意識したオリジナルのミネラルウォーターや、フレーバーウォーターが販売されており、これらも好評を博していました。和らぎ水を積極的に取り入れる文化は、日本酒をより安全に、そして長く楽しむための知恵として、徐々に浸透してきているようです。これにより、来場者は安心して日本酒を堪能し、イベントを心ゆくまで楽しむことができたでしょう。単なる飲酒イベントではなく、参加者の健康と安全にも配慮が行き届いている点が、和酒フェスの質の高さを物語っていました。

今回の和酒フェスのように、多くの人が集い、特定のテーマを深く掘り下げるイベントは、メインの商品だけでなく、「和らぎ水」のような付随する新たな関連商材を発掘する力にもなります。和らぎ水の重要性が認識されることで、高品質な水、携帯しやすいおしゃれなボトル、あるいは飲酒前後に摂取するサプリメントなど、周辺ビジネスの可能性も広がることは想像に難くありません。イベントが単なる消費の場に留まらず、新たな市場を生み出すきっかけとなり得ることを示唆しています。

日本酒文化のさらなる発展へ

今回の「第28回 和酒フェス in 中目黒」は、猛暑の中での開催ながらも、多くの来場者で賑わい、日本酒の新たな可能性を大いに感じさせるイベントとなっています。スパークリング日本酒や酒ハイといった新提案、そして和らぎ水への意識の高まりは、日本酒が時代とともに進化し、多様なニーズに応えようとしている姿を浮き彫りにしています。

かつて夏の酒の主役ではなかった日本酒が、今や真夏のイベントで大行列を作るほどの人気を博していることは、日本酒業界にとって大きな希望となるでしょう。これからも、伝統を守りつつも、革新的な取り組みを続けることで、日本酒は国内外でさらに多くのファンを獲得し、その文化を深化させていくに違いありません。

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

世界が注目する「ロゼ酒」! 米「Food & Wine」が切り開く日本酒の新たな地平

ロゼワインの次なる潮流は日本酒? 米「Food & Wine」が報じる新動向

近年、世界のワインシーンで大きな潮流となっている「ロゼワイン」。その軽やかで美しい色合い、食事との幅広いペアリング、そして何よりもその洗練されたイメージは、特に若い世代や女性を中心に熱狂的な支持を集めています。そんな中、権威ある食とワインの専門誌、アメリカの「Food & Wine」誌がロゼワインに並び、あるいはそれを超える可能性を秘めた「ロゼ酒」の存在に注目しているというニュース(2025.6.17)は、日本の酒蔵にとって、そして世界の日本酒愛好家にとって、まさにエポックメイキングな出来事と言えるでしょう。

「Food & Wine」誌が報じる「ロゼ酒」とは、単に色がついている日本酒という範疇を超え、その醸造プロセスや、味わいの多様性、そして何よりも食との調和性において、ロゼワインが切り開いてきた領域に、日本酒が新たな光を当てる可能性を示唆しています。これまでの日本酒のイメージを刷新し、よりグローバルな食卓への浸透を加速させる、まさに「ニュースター」の誕生とも言えるでしょう。

日本の革新的な酒蔵が牽引する「ロゼ酒」の多様性

では、一体どのような日本酒が「ロゼ酒」として脚光を浴びているのでしょうか。同誌が特にピックアップしているのは、伝統的な日本酒の製法に、ある種の「遊び心」と「革新性」を加えることで生まれる、個性豊かなロゼ酒を手がける蔵元です。

その代表例として挙げられているのが、滝沢酒造(埼玉県)、塩川酒造(新潟県)、丸本酒造(岡山県)です。これらの酒造は、それぞれ異なるアプローチでロゼ酒の可能性を追求しています。

一つは、古代米の一種である「赤米」や「黒米」を使用する方法です。これらの米が持つ色素が、醸造過程で自然な美しいピンク色や赤みを帯びた色合いを日本酒にもたらします。赤米由来のロゼ酒は、その色合いだけでなく、通常の日本酒にはない独特の酸味と、米本来の優しい甘みが特徴で、食前酒としてはもちろん、アペリティフからメインディッシュまで、幅広い料理に寄り添う懐の深さを持っています。例えば、軽やかな和食はもちろんのこと、ハーブを効かせた鶏肉料理や、白身魚のカルパッチョなど、これまで日本酒とのペアリングが難しかった洋食との相性も抜群です。

また、もう一つの注目すべき潮流は、特定の酵母を使用することで自然なピンク色を引き出す手法です。これは、酒蔵の技術と探求心が詰まった、まさに「アート」とも言える領域です。これらの酵母は、発酵過程で赤色酵母などが生成する色素を日本酒に与え、それによって生まれるロゼ酒は、透明感のある淡いピンクから、少し濃いめのサーモンピンクまで、多様な色合いを見せます。味わいもまたバラエティに富み、フルーティーで華やかな香りと、きめ細やかな酸味が特徴のものや、米の旨味がしっかりと感じられる、ややドライなものまで、各蔵の個性が光ります。これらのロゼ酒は、例えばプロシュートやチーズといった前菜、さらには中華料理やエスニック料理といった、風味の強い料理とも見事なマリアージュを奏でてくれるのです。

「ロゼ酒」が拓く日本酒の新たな可能性

アメリカからの「Food & Wine」誌がこの「ロゼ酒」に注目する背景には、単なる見た目の美しさだけではありません。それは、日本酒が持つ本来のポテンシャル、すなわち「食事との調和性」が、ロゼワインのそれと同じく非常に高いという点を見抜いているからでしょう。ロゼワインがそうであるように、ロゼ酒もまた、特定の料理に限定されることなく、和食、洋食、中華、エスニックといったあらゆるジャンルの料理を受け止める、驚くべき汎用性を持っています。これにより、これまで日本酒に馴染みがなかった層、特にワイン愛好家や海外の消費者に対しても、日本酒の新たな魅力を効果的にアピールできる可能性を秘めているのです。

さらに、ロゼ酒の登場は、日本酒の消費シーンを多様化させることにも貢献するでしょう。これまでの日本酒は、どちらかというと「和食と共に」「特別な席で」といったイメージが強かったかもしれません。しかし、ロゼ酒の持つ軽やかでスタイリッシュなイメージは、カジュアルなホームパーティーや、友人とのブランチ、さらにはアウトドアシーンなど、より日常的で多様な場面での日本酒の楽しみ方を提案してくれます。ワイングラスに注がれた美しいロゼ色の日本酒は、それだけで会話のきっかけとなり、場の雰囲気を華やかに彩ります。

日本酒の未来を担う「ロゼ酒」への期待

アメリカからの「Food & Wine」誌の報道は、単なるトレンドの紹介に留まらず、日本酒が世界市場で新たな地位を確立するための重要なヒントを与えてくれたと言えるでしょう。滝沢酒造、塩川酒造、丸本酒造をはじめとする各酒蔵が、それぞれの個性と技術を活かし、多様な「ロゼ酒」を生み出すことで、日本酒はさらにその裾野を広げ、従来の日本酒のイメージを刷新し、若年層や海外の消費者にアピールする「戦略的な役割」を担うでしょう。国際的な食のトレンドに呼応し、多様な食文化に寄り添うロゼ酒は、まさに日本酒がグローバル市場でさらなる成功を収めるための強力な「一手」となるはずです。

▶ 世界的日本酒コンクールでトロフィーを獲得した滝沢酒造のロゼ酒「菊泉 ひとすじ ロゼ」

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

新たな音色が拓く日本酒の未来:気仙沼「男山本店」が放つ革新的「蒼の音」

宮城県気仙沼市に位置し、大正元年(1912年)創業の歴史ある酒造会社「男山本店」が、2025年8月6日に革新的な新商品「蒼の音(あおのね)」を発売します。この日本酒は、単なる新銘柄の誕生に留まらず、日本酒の醸造に「音響加振」という技術を取り入れた、注目の一本であります。気仙沼の風土と伝統に根ざしながらも、常に進化を追求する男山本店の挑戦が詰まった「蒼の音」について、その魅力と背景に迫ります。

音の振動が織りなす繊細な味わい:オンキヨーの技術と「蒼の音」の誕生

「蒼の音」の最大の特徴は、一般的な酒蔵で音楽を流すのではなく、発酵中のタンクに直接音の振動を与える「音響加振」というユニークな技術が導入されている点です。この技術は、大阪市の音響機器メーカー「オンキヨー」が独自に開発した「加振技術」を活用しており、その科学的根拠に基づいたアプローチが、これまでにない日本酒の味わいを引き出すことを目的としています。酵母の活動を活性化させ、発酵を促進することで、香りの豊かさや、口当たりの滑らかさ、繊細な旨味が増すのではないかと期待されています。

そして、この「蒼の音」に聞かせている音楽は、単なるBGMではありません。男山本店の専務の妻であり、音楽家である岡本優子氏が、気仙沼の情景や文化を深く思い、この日本酒のために特別に作曲した楽曲が選ばれているのです。気仙沼の美しい自然、海の恵み、そこで暮らす人々の温かさを表現した音の波動が、発酵中の酵母に優しく語りかけ、日本酒に新たな生命を吹き込みます。この感性と技術の融合こそが、「蒼の音」を唯一無二の存在たらしめています。

これまでにも、音楽が発酵に与える影響については研究がなされてきました。男山本店は、オンキヨーの専門的な技術と、気仙沼への深い愛情から生まれた音楽という、より踏み込んだアプローチで、日本酒の可能性を広げようとしています。この挑戦は、伝統的な酒造りに新しい科学的知見と芸術性を融合させる、意欲的な試みと言えるでしょう。

気仙沼の風土が育む「蒼天伝」の系譜と新たな挑戦

男山本店は、気仙沼の美しい海と空をイメージさせる銘柄「蒼天伝」で知られています。気仙沼の豊かな海の幸との相性を追求し、繊細ながらも深みがあり、すっきりとした後味の日本酒を醸し続けてきました。今回発売される「蒼の音」もまた、「蒼」という名を冠し、気仙沼の風土への敬意と、その名を冠する銘柄の系譜を受け継ぎながら、新たな扉を開く一本となることが期待されます。

同社はこれまでにも、地元の酒米「蔵の華」を積極的に使用するなど、地域とのつながりを大切にしてきました。また、2024年には鹿折金山貯蔵酒を発売するなど、熟成環境の探求にも余念がありません。こうした酒造りへの真摯な姿勢と探求心が、オンキヨーの技術と岡本優子氏の音楽という、異分野のコラボレーションによる「蒼の音」という革新的な商品の誕生に繋がったと言えるでしょう。

発売日と今後の展望

「蒼の音」は2025年8月6日に発売されます。価格については現時点では公表されていませんが、その革新的な製法と、男山本店の新たな挑戦への期待から、日本酒愛好家はもちろん、新しい味わいや体験を求める人々から注目を集めることでしょう。

「蒼の音」は、食中酒として、特に繊細な味わいを活かす和食や軽めの料理とのペアリングが期待されています。音響加振によって引き出されるであろう、奥深くも澄み渡るような「蒼の音」の味わいは、まさに気仙沼の美しい情景を想起させる、唯一無二の体験を提供してくれるはずです。

男山本店の「蒼の音」は、伝統と革新、そして科学と芸術が融合した、日本酒の新たな可能性を示す一本です。この新しい日本酒が、気仙沼の地から全国へ、そして世界へと、どのような「音色」を響かせ、日本酒の未来にどのような影響を与えるのか、その動向に注目が集まります。

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

発酵食品への高まる関心と、ISETAN 発酵 WEEKにおけるクラフトサケ「稲とアガベ」の魅力

近年、健康意識の高まりとともに、発酵食品への注目が飛躍的に増しています。「菌活」という言葉も浸透し、ヨーグルト、納豆、味噌、醤油といったお馴染みの食品に加え、様々な発酵食品が私たちの食卓に並ぶようになりました。この発酵ブームは一過性のものではなく、美味しさと健康を両立させるライフスタイルの一部として定着しつつあります。

このような背景の中で、伊勢丹新宿店が開催する「ISETAN 発酵 WEEK(7月23日水曜日 ~ 7月29日火曜日)」は、まさに時宜を得たイベントとして反響を呼んでいます。単なる食品販売に留まらず、発酵の奥深さや多様な魅力を体験できるこのイベントは、発酵食品への関心をさらに深めるきっかけとなっています。全国各地から集められた個性豊かな発酵食品の数々は、訪れる人々に新たな発見と驚きを提供し、発酵文化の裾野を広げています。

「ISETAN 発酵 WEEK」の魅力は多岐にわたりますが、特に注目すべきは、日本酒の中でも「クラフトサケ」、そして具体的には「稲とアガベ」というユニークな存在に焦点を当てている点です。従来の日本酒の枠にとらわれず、新たな挑戦を続けるクラフトサケは、近年注目度が高まっています。その中でも「稲とアガベ」は、秋田県男鹿市に拠点を置き、伝統的な日本酒の製法に加えて、副原料を積極的に用いることで、これまでにない風味や個性を生み出すクラフトサケ醸造所として知られています。

クラフトサケ「稲とアガベ」が示す新たな日本酒の可能性

日本酒は、米・米麹・水というシンプルな原料から、酵母の働きによって複雑で奥深い味わいを生み出す、まさに発酵の芸術品です。その製造過程は、温度管理、発酵の進捗、そして杜氏の卓越した技術と経験によって緻密にコントロールされ、そこから生まれる多様な香りと味わいは、世界中の美食家を魅了してきました。

しかし、クラフトサケというカテゴリーは、この伝統に敬意を払いながらも、新たな解釈を加えることで、日本酒の可能性を広げています。「稲とアガベ」がその代表例であり、彼らは米と米麹に加え、例えばアガベシロップやフルーツ、ハーブといった多岐にわたる副原料を使用することで、これまでの日本酒にはなかったような、より自由で創造的な味わいのサケを生み出しています。これにより、日本酒はよりカジュアルに、そしてより多様な食のシーンで楽しめるものへと進化を遂げているのです。

「ISETAN 発酵 WEEK」で「稲とアガベ」が出展されることは、主催者側の明確な意図を感じさせます。それは、発酵食品の多様性を追求する中で、伝統と革新が融合したクラフトサケの最前線を紹介したいというメッセージに他なりません。訪れる人々は、「稲とアガベ」のブースで、彼らの哲学や、副原料が生み出す驚くべきフレーバーのサケに出会うことができるでしょう。

試飲を通じて、それぞれのサケが持つ個性や、一般的な日本酒とは異なる新たなペアリングの可能性を探ることは、まさに「発酵WEEK」ならではの体験となります。例えば、ハーブを使ったクラフトサケは、魚介類やハーブを多用する地中海料理との相性が良いかもしれませんし、フルーツを使ったサケは、デザートワインのような感覚で楽しめる可能性も秘めています。

発酵の未来を拓くクラフトサケ

「ISETAN 発酵 WEEK」における「稲とアガベ」の出展は、発酵食品への関心を高めるだけでなく、クラフトサケという日本の伝統文化における新たな潮流に改めて光を当てる重要な役割を担っています。発酵食品の多様性と奥深さを再認識し、そして「稲とアガベ」が提示する豊かな発酵の魅力を発見する場として、このイベントは私たちに新たな食の楽しみを提案してくれます。

発酵ブームの追い風を受け、クラフトサケの魅力がさらに多くの人々に広まることで、日本の食文化はより一層多様で豊かなものになるでしょう。このイベントを通じて、「稲とアガベ」のユニークな挑戦が多くの人々に届き、クラフトサケの未来がさらに拓かれることを期待せずにはいられません。

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

獺祭MOONプロジェクト:人類と酒の新たな一歩

2025年、人類は新たな挑戦に踏み出します――それは宇宙での日本酒造りです。山口県岩国市に本社を構える獺祭が、看板銘柄「獺祭」を国際宇宙ステーション(ISS)内の日本実験棟「きぼう」で醸造するという前例のないプロジェクトを発表しました。

この挑戦の背景には、2040年代に月面移住が現実味を帯びる中、酒が人々の暮らしに彩りを添える存在になるという獺祭の想いがあります。日本酒は、原料である米が軽量で輸送に適していることから、月面での製造にも向いているとされております。獺祭では将来的に、月に存在するとされる水と米を活用して、月面での酒造りを目指しています。

今回の宇宙醸造は、その第一歩です。2025年後半に、酒米(山田錦)、麹、酵母、水をISSへ打ち上げ、「きぼう」内で発酵を行う予定です。実験には、月面の重力(地球の約1/6)を再現できる人工重力装置「CBEF-L」を使用します。宇宙飛行士が原材料と仕込み水を混ぜ合わせることで発酵が開始され、その後は自動撹拌とアルコール濃度のモニタリングによって、もろみの完成を目指していきます。

特筆すべきは、日本酒特有の「並行複発酵」という現象――麹による糖化と酵母による発酵が同時に進行するプロセス――を、世界で初めて宇宙空間で確認する点です。これは日本酒の醸造技術の核心であり、宇宙環境での再現は技術的にも文化的にも大きな意味を持つといえるでしょう。

醸造されたもろみ約520gは冷凍状態で地球に持ち帰り、搾って清酒に仕上げる予定です。そのうち100mlをボトル1本に瓶詰めし、「獺祭 MOON – 宇宙醸造」として販売されることが計画されています。驚くべきはその価格――希望小売価格は1億円。その売上は全額、日本の宇宙開発事業に寄付されるということです。

このプロジェクトは、単なる技術実験にとどまらず、日本酒という伝統文化を宇宙時代へと橋渡しする象徴的な試みです。獺祭の挑戦が成功すれば、日本酒は地球を超えて人類の新たな生活空間でも愛される存在になることでしょう。

宇宙で醸す一滴には、未来への夢が詰まっています。

▶ 獺祭|子規の薫陶を受けた酒

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

【海の日に乾杯】深海の神秘が育む至高の一滴 ~海底熟成酒の歴史と進化~

今日、7月の第3月曜日は「海の日」です。海の恩恵に感謝し、海洋国家日本の繁栄を願う日ですね。近年、この広大な海の神秘的な力を借りて、日本酒を熟成させるという、ロマンあふれる取り組みが注目を集めています。それが「海底熟成酒」です。静寂な深海でゆっくりと時を重ねることで、通常の熟成酒とは一線を画す、まろやかで奥深い味わいへと昇華する海底熟成酒の魅力に迫ります。

海底熟成酒、そのロマンの始まり

海底熟成の概念自体は、決して新しいものではありません。古くは沈没船から引き揚げられたワインが、陸上保管のものよりも格段に美味しいと評判になったエピソードが、その効果を裏付けるかのように語り継がれてきました。特に、2010年にバルト海の海底で発見された1840年代のシャンパンは、170年以上の時を超えてもなお、その品質を保ち、専門家を驚かせたのです。この「沈没船ワイン」の発見が、意識的な海底熟成への関心を高めるきっかけの一つとなったと言えるでしょう。

日本酒における海底熟成の歴史は、比較的近年になって本格化しました。その先駆けとなったのは、古酒を深く探求する長期熟成日本酒Bar「酒茶論」が、2013年に立ち上げた「海中熟成酒プロジェクト」のような取り組みが挙げられます。現在では全国へと波及し、太平洋・日本海・瀬戸内海など、様々な海域での海底熟成酒が誕生しています。

なぜ海底なのか? 深海の恵みがもたらす変化

では、なぜ深海が日本酒の熟成に適しているのでしょうか。その理由は、陸上では再現が難しい独特の環境にあるのです。

第一に挙げられるのが「安定した水温」です。水深が深くなるほど、年間を通して水温の変化が少なく、一定の温度を保つことができます。日本酒の熟成において、温度変化は品質に悪影響を及ぼす要因の一つとされており、安定した環境は均一な熟成を促します。

次に、「適度な水圧」も重要な要素です。水深数十メートルにも及ぶ海底では、想像以上の水圧がかかります。この高圧環境が、酒質にどのような影響を与えるのかはまだ完全に解明されていない部分も多いのですが、分子レベルでの変化を促し、よりまろやかで複雑な酒質を形成すると考えられています。

そして、「完全な暗闇」も欠かせません。光は日本酒の劣化を早める天敵です。特に紫外線は酒中の成分と反応し、不快な「日光臭」を発生させる原因となります。光が一切届かない深海は、酒の品質を健全に保ち、熟成を促進するための理想的な環境と言えるでしょう。

さらに、「微細な揺れ」も熟成に良い影響を与えている可能性が指摘されています。海底では、潮の流れや波浪によるごく僅かな揺れが常に存在するのです。この微細な振動が、酒中の分子の結合や分解を促進し、より滑らかな口当たりや、複雑な香りを引き出すという見方もあります。

これらの複合的な要因が、海底熟成酒に特有のまろやかさ、深み、そして熟成香をもたらすと考えられています。

海底熟成酒の現状と未来

現在、海底熟成酒に取り組む蔵元は全国に広がりを見せています。古酒で有名な岐阜県の「達磨正宗」(白木恒助商店)など、各地の銘酒が深海での眠りを経て新たな個性を獲得しているのです。

熟成期間も様々で、数か月から数年、中には10年以上の長期熟成を目指すプロジェクトも進行中です。引き上げられた海底熟成酒は、その希少性とユニークなストーリー性から、贈答品や記念品としても高い人気を博しています。

一方で、海底熟成には課題も存在します。海底環境への影響、容器の耐久性、引き上げ作業のコストなど、克服すべき点は少なくありません。しかし、これらの課題をクリアし、より持続可能な形で海底熟成に取り組むための研究開発も進められているのです。また、海底熟成されたお酒の品質評価や、熟成メカニズムの科学的な解明も今後の重要なテーマとなるでしょう。

海の日を迎え、改めて海の恵みに思いを馳せる時、深海で静かに熟成の時を待つ日本酒に、私たちは無限のロマンと可能性を感じます。海底熟成酒は、単なるお酒という枠を超え、海洋国家日本の新たな文化、そして未来への希望を象徴する存在となりつつあります。深海の神秘が育む至高の一滴は、これからも私たちに驚きと感動を与え続けてくれることでしょう。

▶ 楽天市場で海底熟成酒を探す

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

意外な組み合わせがトレンドに!日本酒ハイボールが拓く和酒の新境地

近年、酒類業界に新たな風を吹き込んでいるのが「酒ハイ」、とりわけ日本酒ハイボールの登場です。これまで熱燗や冷やでじっくりと味わうのが一般的だった日本酒が、ソーダと組み合わせることで、驚くほど軽やかで爽快なドリンクへと変貌を遂げています。この意外な組み合わせが、幅広い世代から注目を集め、和酒の新たな可能性を切り開いています。

日本酒ハイボールブームの幕開け:その魅力と人気の秘密

日本酒ハイボールは、フルーティーな香りや米の旨味が特徴の日本酒を、無味無臭のソーダで割ることで、その魅力をさらに引き出す飲み方です。特に、吟醸酒や大吟醸酒の華やかな香りはソーダと相性が抜群。まるでシャンパンやスパークリングワインのような上品な泡立ちと、すっきりとした喉越しが楽しめます。また、米の旨味がしっかりと感じられる純米酒なども、ソーダで割ることでキレが増し、食中酒としても優れた顔を見せます。

この日本酒ハイボールの登場は、これまで日本酒に馴染みがなかった若年層や、アルコール度数の高いお酒が苦手な層にも、日本酒の間口を大きく広げました。居酒屋やバーだけでなく、自宅でも手軽に楽しめる手軽さも人気の理由の一つです。新しい日本酒の楽しみ方を提案することで、日本酒に対するイメージを刷新し、若者を中心に「日本酒ってこんなに飲みやすかったんだ!」という発見と驚きをもたらしています。

「ハイボール」文化と日本酒の融合:歴史的背景と現代への繋がり

「ハイボール」という飲み方自体は、19世紀のアメリカでウイスキーとソーダを組み合わせたのが始まりとされています。その後、世界中に広まり、日本でも戦後、ウイスキーハイボールが多くの人々に親しまれるようになりました。

ウイスキーの伝統的な飲み方として定着したハイボールですが、その概念が日本酒に応用されたのは、比較的近年のことです。背景には、消費者のアルコールに対する意識の変化や、多様なライフスタイルへの対応が挙げられます。健康志向の高まりとともに、低アルコール飲料へのニーズが増加。また、食事とのペアリングを重視する傾向も強まりました。

こうした変化の中で、アルコール度数を調整しやすく、様々な食事に合わせやすいハイボールというスタイルが再評価され、日本酒にもその応用が試みられるようになったのです。日本酒の繊細な風味を損なわずに、より軽快に、そしてモダンに楽しむ方法として、日本酒ハイボールは必然的に生まれたと言えるでしょう。

特に、この流れを加速させたのが、発泡性日本酒の普及です。2011年に宝酒造が発売した「松竹梅白壁蔵 澪」は、従来の日本酒とは一線を画す、フルーティーで飲みやすいスパークリング日本酒として大ヒットしました。さらに、瓶内二次発酵による本格的な発泡性を持つ「AWA酒」なども登場し、消費者の間で「発泡性のある日本酒」に対する違和感を払拭しました。これにより、「日本酒をソーダで割る」という発想が、より自然に受け入れられる土壌が形成されたと言えるでしょう。

そして、2024年には、日本酒メーカーと流通業者の団体「日本酒需要創造会議」が、「日本酒ハイボール」の飲み方を本格的に提案し始めました。彼らが推奨する基本的な割り方は「日本酒:ソーダ=1:1」。これにより、日本酒の風味をしっかりと残しつつも、アルコール度数を抑え、爽快な飲み口を実現するのです。

さらに、今年に入ってからは、日本酒ハイボール専用に開発された日本酒が複数の酒蔵から相次いで発売されています。これは、日本酒ハイボールが単なる一過性のトレンドではなく、新たな飲酒スタイルとして定着しつつあることを強く示唆しています。専用酒は、ソーダで割ることを前提に、香りの立ち方や口当たりのバランスが調整されており、より高品質な日本酒ハイボール体験を提供しています。これらの動きは、日本酒ハイボールブームをさらに加速させる大きな契機となっています。

なぜ今、日本酒ハイボールなのか?人気の背景にある現代のニーズ

日本酒ハイボールがこれほどまでに注目される背景には、現代の消費者が求めるいくつかの要素が合致したことが挙げられます。

まず一つは、健康志向の高まりです。従来の日本酒は、アルコール度数が高く、一献傾けるというイメージが強かったかもしれません。しかし、ハイボールにすることでアルコール度数を好みに調整でき、より軽やかに楽しめます。また、一般的に甘さを加えないため、糖質を気にする層にも受け入れられやすいです。

次に、多様なニーズへの対応です。近年、お酒の飲み方は固定観念にとらわれず、自由に楽しむスタイルが浸透しています。日本酒ハイボールは、伝統的な日本酒の枠を超え、新しいカクテルのような感覚で楽しめます。これにより、これまで日本酒を敬遠していた層にもリーチし、新たな需要を喚起しています。

そして、食中酒としての汎用性の高さも見逃せません。ハイボールのすっきりとした味わいは、和食はもちろん、洋食や中華、エスニック料理など、幅広いジャンルの料理と相性が抜群です。料理の味を邪魔することなく、口の中をリフレッシュしてくれるため、食事をより一層楽しむことができます。

まとめ:日本酒の新たな扉を開く「日本酒ハイボール」

日本酒ハイボールは、単なる一時的なトレンドに終わらず、日本酒の持つ無限の可能性を引き出す、画期的な飲み方として定着しつつあります。宝酒造「澪」やAWA酒といったスパークリング日本酒が下地を作り、日本酒需要創造会議が具体的な飲み方を提案しその普及を後押しすることで、伝統と革新が融合したこの新しいスタイルは、日本酒をより身近な存在にし、私たちの食卓を豊かにしてくれるでしょう。

これから日本酒を飲み始める方も、すでに日本酒を愛飲されている方も、ぜひ一度、日本酒ハイボールの世界を体験してみてはいかがでしょうか。きっと、日本酒の新たな魅力を発見できるはずです。


▶ 百十郎 飛沫

2019年に開発された、日本初のハイボール専用純米酒。熟成酒のために琥珀色をしており、グラスに注げば、本来のハイボールに引けを取らない色味も楽しめる。林檎のようなフルーティーな香りと、割ってもしっかりとした旨みが特徴。

▶ 松竹梅 瑞音

2024年夏場から急速に知名度を上げた「酒ハイ」。黄桜には2023年にリニューアルした「ソフトハイボール」という、既に炭酸で割られた商品があったが、ここに、ハイボール専用の日本酒として、酒造大手も参入するようになった。2024年10月1日に登場している。

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

第100回謙信公祭記念!名刀「山鳥毛」が紡ぐ日本酒と刀剣の深い縁

2025年8月23日(土)・24日(日)に開催される記念すべき第100回「謙信公祭」。越後の龍、上杉謙信公の偉業を称えるこの歴史的節目に合わせ、謙信公がこよなく愛したとされる国宝「太刀無銘一文字(号 山鳥毛)」を冠した特別記念酒「純米大吟醸 太刀無銘一文字 山鳥毛」が、新潟県上越市の老舗「田中酒造」から7月18日に発売されました。近年盛り上がりを見せる刀剣ブームを背景に、日本酒と刀剣、古くから続くこの二つの文化の深い縁を感じさせる、まさに時宜を得た粋な企画と言えるでしょう。

名刀「山鳥毛」が紡ぐ歴史と酒

「山鳥毛」は、戦国武将・上杉謙信公の武威を象徴する名刀として名高い一振りです。その流麗な刃文は、まるで山鳥の羽毛のようであることからその名が付けられたと伝えられています。今回の記念酒「山鳥毛」は、その名刀が第100回謙信公祭に合わせて上越市立歴史博物館で特別展示されることを記念し、企画されました。田中酒造の蔵人が育てた上越市吉川区産の「山田錦」を40%まで磨き上げた純米大吟醸は、低温でじっくりと発酵させることで、フルーティーで奥深い味わいを実現しています。商品のラベルには、上越高校書道部が力強く揮毫した「山鳥毛」の文字が踊り、その一振りの躍動感を彷彿とさせます。

日本酒と刀剣、古からの深い縁

実は、日本酒と刀剣の間には、古くから切っても切れない縁があります。その代表的な逸話が、天下三名槍の一つに数えられる日本号でしょう。この名槍は、もともと豊臣秀吉の家臣である福島正則が所有していましたが、彼が黒田家家臣の母里友信と酒飲み勝負をした際に、友信が見事に勝利し、褒美として日本号を譲り受けたという「呑み取りの槍」の異名を持つ逸話で知られています。このように、酒席での豪胆な振る舞いや、酒にまつわる約束事が、名だたる武具の持ち主を変える歴史の一幕を彩ってきたことは、日本酒と刀剣がともに、武士たちの誇りや人間関係を象徴する存在でもあったことを示しています。

また、日本酒の製造過程においても、刀剣を思わせるような「切れ味」や「奥深さ」といった表現がしばしば用いられます。澄み切った味わいや、米の旨みが凝縮された重厚な風味など、日本酒の多様な個性は、まるで刀剣の切れ味や刀身の模様に喩えられるかのようです。さらに、酒蔵の多くは、古くからの伝統を守りながらも、最新の技術を取り入れ、より良い酒を造り出すことに心血を注いでいます。これは、刀匠たちが代々受け継がれてきた技法を磨きながらも、新たな鍛造法や研磨法を追求してきた姿と重なります。

歴史と現代をつなぐ記念酒「山鳥毛」

今回の記念酒「山鳥毛」の発売は、単に祭りの記念品という枠を超え、日本酒と刀剣という二つの伝統文化が持つ歴史的なつながり、そして現代における新たな魅力の発見を象徴する出来事と言えるでしょう。戦国の世に思いを馳せながら、この特別な一本を味わうことは、歴史と文化への理解を深める貴重な体験となるに違いありません。

限定300本という希少性も、コレクター心をくすぐる要素です。上越市内の酒販店や謙信公祭の物産展でも販売されるとのこと。刀剣ブームがもたらした伝統文化への再注目は、日本酒の新たな可能性をも切り開くかもしれません。今年の「謙信公祭」に注目です。

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド