日本酒レビュー・情報メディア「Japan Cellar」グランドオープン

日本酒・焼酎・日本ワインの魅力を世界に発信する新しい情報プラットフォーム「Japan Cellar(ジャパン・セラー)」が、2025年10月にグランドオープンしました。運営は、東京・高田馬場に拠点を置く株式会社ハイパープロダクティブ。同社は、国内外の酒類を評価・紹介する統一的なレビュー基準を確立し、日本の酒文化を国際的に通用する形で可視化することを目標に掲げています。

世界基準に近づく「日本酒レビュー」の新時代

「Japan Cellar」は、ワイン業界における“パーカーポイント”のように、専門的で透明性のある評価を行う仕組みを導入しました。その中核となるのが、独自の5指標「JC BLICU(Balance/Length/Intensity/Complexity/Uniqueness)」です。バランス、余韻、力強さ、複雑性、独自性という5つの観点から酒を総合的に分析し、85点以上の銘柄のみを掲載するという厳格な基準を設けています。

レビュアーには、全日本最優秀ソムリエの井黒卓氏や岩田渉氏、さらに世界的ワイン誌『The Wine Advocate』の元レビュアー星山厚豪氏など、国内外で実績を持つ専門家が参加。いずれも匿名ではなく記名制で評価することで、レビューの透明性と信頼性を担保しています。試飲用サンプルではなく、自社購入による評価方針を明確にしている点も、これまでの酒類メディアとは一線を画しています。

デジタル化と多言語展開が拓く新たな市場

同サイトは日本語と英語の2言語対応でスタートし、今後はフランス語、中国語など主要言語への展開も予定されています。対象は日本酒だけでなく、焼酎や日本ワインにも及びます。酒蔵やワイナリーのデータベース、ペアリングガイド、酒蔵見学情報なども充実しており、国内外の消費者・バイヤーが日本の酒文化を体系的に理解できる構成となっています。

これまで、ワインのように国際的な共通指標が存在しなかった日本酒市場では、輸出先ごとに味覚や品質評価が分散していました。「Japan Cellar」は、そうした断片的な情報の壁を取り払い、“世界の酒類の中での日本酒の位置づけ”を明確に示す試みといえます。特に、輸出拡大を狙う中小酒造にとっては、海外の流通業者や飲食店バイヤーへの新たなプレゼンテーション手段となる可能性を秘めています。

日本酒業界ではここ数年、品質や味わいの多様化が進み、従来の“地酒”という枠を超えて、クラフトやテロワールといった概念が注目され始めています。「Japan Cellar」は、こうした動きを国際的に可視化し、定量化する役割を果たすことで、ブランド価値の客観的評価や国際競争力の向上に寄与するでしょう。

一方で、点数化がもたらす序列や市場偏重への懸念もあります。特定の味覚傾向に評価が集中すれば、多様性が損なわれる可能性も否定できません。運営側はこの点を意識し、「文化的背景や個性を尊重したレビュー」を理念に掲げています。今後、どのように公平性と創造性を両立させるかが、プラットフォームの信頼性を左右する鍵となりそうです。


日本酒の魅力を“感覚”ではなく“共通言語”として伝える試み——。
世界の愛好家が日本の酒を語るための新しい基準を築く第一歩として、「Japan Cellar」の今後の展開が注目されます。

▶ Japan Cellar ホームページ

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