「危険なので真似しないで」がSNSで大バズり!カステラと日本酒の衝撃マリアージュが示す新ペアリングの時代

10月21日に投稿された菊水酒造の公式X(旧Twitter)「カステラに日本酒を染みこませてはいけません。止まらなくなります。危険なので真似しないように。」という『警告』が、SNS上で爆発的な話題を呼んでいます。特に同社の代表銘柄である「ふなぐち 菊水一番しぼり」とカステラを合わせた短い動画は、多くの日本酒ファンやスイーツ愛好家の好奇心を刺激し、試す人が続出。その結果、賛同と驚きの声が相次ぎ、「危険すぎる」「まさに禁断の味」といった感想と共に広く拡散され、投稿は一躍、大きな注目を集めることとなりました。

「危険な組み合わせ」が証明した日本酒の多様性

この背景には、消費者の間で高まる「自由で新しい日本酒の楽しみ方」への希求があると考えられます。伝統的な和食とのペアリングが主流だった日本酒の世界に、「スイーツ」という意外な組み合わせが斬り込んできたことは、その固定概念を打ち破る象徴的な出来事と言えるでしょう。

一般的に、濃厚な甘さを持つカステラには、同じく濃厚な甘口や熟成古酒などが合うとされてきました。しかし、菊水酒造が推奨した「ふなぐち」は、フレッシュで濃厚ながらも力強いアルコール感を持つタイプです。このアルコール感が、カステラのバターや卵の風味、そしてザラメの強い甘さを「キレ」で引き締めつつ、同時に日本酒由来の「米の旨み」とカステラの「旨み・甘み」を完璧に融合させます。この絶妙なバランスこそが、「止まらなくなる」という中毒性を生み出した最大の理由だと推察されます。

今後の日本酒ペアリングが目指す「三位一体」

このカステラ事件は、これからの日本酒ペアリングのトレンドを予見させるものです。近年の外食産業では、日本酒とフレンチ・イタリアン・中華といった異ジャンルの料理を合わせる「SAKEペアリングレストラン」が人気を博しています。これは単に料理と酒を並べるのではなく、それぞれの要素を深く理解し、相乗効果で全く新しい味わいを創出する「マリアージュ」を追求する動きです。

ここにスイーツが加わろうとしているわけですが、以下の三つの要素が鍵となると考えられます。

【脱・和食依存】

伝統に囚われず、チョコレート、チーズ、スパイス料理など、多様な食材との組み合わせに積極的に挑戦する姿勢です。今回のカステラは、その一つの成功例と言えるでしょう。

【要素の分解と再構築】

料理と日本酒を、香り・酸味・甘み・旨み・アルコール度数といった個々の要素に分解し、「温度」や「濃度」まで緻密に調整して合わせるプロの技術が、より重要になります。

【情報発信とコミュニティ】

蔵元や飲食店が、SNSなどを通じて新しいペアリングの「発見」をエンターテイメントとして発信し、消費者との双方向のコミュニケーションでトレンドを作り上げていくことが、市場の拡大に不可欠となります。


菊水酒造の投稿は、日本酒の持つ無限の可能性を、遊び心とユーモアを交えて世に知らしめました。「危険」というキャッチーな言葉が、新たな「発見」への扉を開き、日本酒の楽しみ方を大きく広げるきっかけとなったことは間違いありません。日本酒が今後、和食だけでなく世界の食卓を彩る存在となるためにも、こうした自由な発想と発信が、ますます重要になってくるでしょう。

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北米最大級ワインコンクール「Sélections Mondiales des Vins 2025」日本酒部門の結果が発表される

Sélections Mondiales des Vins(セレクシオン・モンディアル・デ・ヴァン、略称:SMV)は、ワインの国際的な品評会として、カナダのモントリオールで毎年開催されています。その歴史は長く、1983年に第1回が開催されて以来、北米で最も権威あるワインコンペティションの一つとして確固たる地位を築いてきました。

世界におけるSMVの位置付けと日本酒部門

SMVは、国際ブドウ・ワイン機構(OIV)と世界ワイン・スピリッツ・コンペティション連盟(VINOFED)の公認を得ていることが最大の特徴です。この公認は、審査の公平性、透明性、そして厳格な基準が国際的に認められている証であり、世界最大級のワインコンペティションとしての信頼性と威信を裏付けています。受賞歴は、世界市場におけるブランドの認知度向上と販売促進に直結するため、世界中の生産者が注目の的としています。

そのSMVは長年、ワイン部門のみで開催されてきましたが、昨年(2024年)から新たに日本酒(Sake)部門が開設されました。この背景には、世界市場、特に北米市場における日本酒人気の爆発的な高まりがあり、下記のような点を考慮してのことです。

【グローバルな食文化の変化】和食がユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、日本食への関心が高まり、それに伴い日本酒の需要が増加しているため。

【多様な飲用機会】日本酒が、和食だけでなくフレンチやイタリアンといった多様な料理と合わせる酒として認識され始めているため。

【コンペティションの包括性】市場の変化に対応し、国際的な酒類コンペティションとしての包括性を高めるため。

この部門開設は、日本酒が単なる日本のローカルな酒から、世界的な高級酒としての地位を確立する上で、極めて重要なターニングポイントとなっています。

Sélections Mondiales des Vins 2025 日本酒部門の最高金賞

このSMVでは、国際審査員による厳正なブラインドテイスティングで、「GRAND OR/GRAND GOLD(最高金賞)」「OR/GOLD(金賞)」「ARGENT/SILVER(銀賞)」が決まります。今年は10月8日から10月11日にかけて開催され、日本酒部門における「GRAND OR/GRAND GOLD(最高金賞)」は下記5銘柄が選ばれました。なお、「作 槐山一滴水」は、審査員特別賞にも選ばれています。

GRAND OR作 槐山一滴水清水清三郎商店株式会社
GRAND OR作 恵乃智清水清三郎商店株式会社
GRAND OR超特選純米大吟醸 残響 Super7株式会社新澤醸造店
GRAND OR一ノ蔵 純米大吟醸 松山天株式会社一ノ蔵
GRAND OR天明 純米火入 オレンジの天明曙酒造株式会社

▶ Sélections Mondiales des Vins

▶ 作 槐山一滴水|北米最大級のコンクールで最高金賞。プレミアム日本酒

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「浄酎-JOCHU-」とは何か?日本酒が、新たな形で動き出す

ナオライ株式会社が手がける新ジャンルの和酒「浄酎-JOCHU-」が、2025年10月29日から12月1日までの期間、東京・銀座のGINZA SIX地下2階に期間限定ショップをオープンしています。高級商業施設という舞台で、蒸留によって生まれた『新しい日本酒のかたち』を提案するこの展開は、単なる販売イベントにとどまらず、日本の酒文化の進化を象徴する試みとして注目されています。

「浄酎-JOCHU-」とは

「浄酎-JOCHU-」は、ナオライ独自の低温浄溜®という技術で、純米酒を丁寧に蒸留して造られるお酒です。一般的な焼酎やスピリッツと異なり、原料に使用する日本酒の香味を繊細に保ちながら雑味を抑え、アルコール度数を約41度にまで高めています。蒸留によって生まれる透明感と、熟成による柔らかな口当たりが共存し、従来の蒸留酒にはあてはまらない、新しい味わいを実現しています。

ナオライの創業理念は「時をためて、人と自然を醸す」というものです。単に酒を造るのではなく、自然と人、そして時間の流れそのものを味わいとして表現しようとしています。なかでも「浄酎-JOCHU-」の大きな特徴は、ワインやウイスキーのように、時の経過が味わいを変化させる点にあります。消費の即時性を重視しがちな現代社会において、「時間を飲む」という発想は、日本的な熟成美を現代的に再定義する試みでもあります。

「浄酎-JOCHU-」の未来

今回のGINZA SIXでの出店は、その哲学を都市空間で体験してもらう貴重な機会といえます。高級ブランドが並ぶ銀座の中心において、伝統的な酒文化の枠を超えたクラフトスピリッツとしての日本酒を発信することで、従来の日本酒ファンだけでなく、ワインやウイスキーを愛する層、さらには海外の観光客にもアプローチできる構成となっています。

また、「浄酎-JOCHU-」は、国内外のサステナブルな酒造りへの関心の高まりにも呼応しています。使用される日本酒は、地域の酒蔵が造った純米酒であり、その副産物である酒粕や米も無駄なく活用されています。ナオライは広島県・三角島を拠点に、地域の自然循環の中で発酵文化を育むプロジェクトを展開しており、「浄酎-JOCHU-」もその延長線上にあるプロダクトです。自然との共生を掲げたブランド哲学が、酒という嗜好品を通じて社会や環境にポジティブな影響を与えようとしているのです。

総じて、「浄酎-JOCHU-」は、伝統の延長ではなく、未来の和酒を創る挑戦です。日本酒の香りを残しながらも、アルコール度数や熟成の深みでスピリッツのような余韻を生み出す。和と洋、伝統と革新を架け橋のように結ぶこのお酒は、日本酒を世界にどう発信していくかを示す、一つの象徴的な存在になるかもしれません。銀座の街で、その『時を飲む』体験がどのように受け止められるか、今後の展開に大きな注目が集まります。

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立冬は「鍋と燗の日」~冬を迎える日本の風物詩を味わう記念日の由来と意味

「鍋と燗の日」は、暦の上で冬の到来を告げる二十四節気の一つ・立冬(今年は11月7日)を記念日にあて、温かい鍋料理と燗酒を楽しむ文化を広めることを目的に制定されました。発起人は灘・伏見・伊丹の老舗酒造会社が参加する「日本酒がうまい!推進委員会」で、2011年に記念日として打ち出し、制定当初から試飲イベントや体験会などの共同プロモーションを行っています。

立冬は暦の上で「冬の始まり」を示す日であり、肌寒さが増すこの時期に家族や友人と鍋を囲み、体を温める習慣と自然に重なります。とりわけ日本酒の「燗」は、酒質の違いをやさしく引き出し、料理との相性を高めることから、鍋料理との親和性が高いと考えられています。こうした季節性と食文化の結びつきを象徴する日として「立冬=鍋と燗の日」が選ばれました。

制定の狙いは単に記念日を作ることではなく、日本酒の需要を盛り上げ、消費者に燗で飲む日本酒の魅力を再発見してもらうことにあります。記念日前後では酒造や小売、飲食店が連携して燗酒の試飲会、鍋と燗のペアリングイベント、販促キャンペーンなどを実施しており、地域の酒文化の発信につながっています。

「鍋と燗の日」は、単なる商業プロモーションにとどまらず、共有・共食の文化を見直す機会でもあります。鍋を囲む行為は、場を和ませて人の距離を縮めます。燗酒は、味わいの幅を広げて会話を豊かにします。現代のライフスタイルでは外食や一人鍋も増えていますが、この記念日は、季節を感じる食卓の価値をあらためて提案する役割を果たしています。

立冬には、地元の旬の食材で作る鍋に、燗が映える純米酒や本醸造を合わせるのがおすすめです。燗の温度帯を変えて飲み比べることで、同じ酒でも風味の変化を楽しめます。また、家庭や居酒屋での小さなイベントとして「鍋と燗」のペアリング会を開けば、季節行事として定着しやすくなります。

立冬つまり「鍋と燗の日」は、暦と食文化を結びつける現代の記念日として、冬の食卓に新しい気づきと会話をもたらしています。季節の始まりを味わう一杯と一鍋で、心も体もあたたかく過ごしてみたいものです。

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【棚田×日本酒の新潮流】土地と人がつながる酒造りの現在地

近年、日本各地で棚田を活かした酒造りに取り組む酒造が増えてきています。急峻な地形に段々と広がる棚田は、農村文化の象徴であるだけでなく、寒暖差や水はけの良さなど、酒米栽培に適した環境条件を備えていることが再評価されています。人口減少により棚田の維持が難しくなる地域が増える中、酒蔵が棚田米を用いることで農地の保全に貢献し、地域のストーリーを酒に乗せて発信できる点が大きな魅力となっております。

こうした流れの象徴的な事例として、生酛造りで知られる大七がリリースした純米酒「西谷棚田」が挙げられます。福島県二本松市の美しい棚田で栽培された米を用いた同作は、単なる地域限定酒ではなく、棚田という文化景観そのものを味わう酒として注目を集めています。

『物語』を醸す酒造り

棚田を活かした酒造りの広がりは、日本酒が「ただ飲むもの」から「土地や人とつながる体験」に変化していることを示しています。かつては酒造が米を購入するだけで成り立っていた関係が、いまや農家と共同で米作りから関わる取り組みへと進化しつつあります。

この物語性を求める動きは、若い世代を中心に大きな支持を得ています。棚田という里山文化が持つ懐かしさ・美しさ・環境価値が、酒の背景として消費者に強く響いているためです。日本酒が地域文化のアンバサダー役を担い始めたことで、酒蔵もまた「どんな土地の米を、どんな思いで醸すのか」を積極的に発信するようになっています。

持続可能な地域づくりの一翼としての酒造

棚田再生に酒蔵が関わるメリットは、文化的価値の継承にとどまりません。棚田は水源涵養や景観保全など多面的な機能を持つため、その維持は地域の環境保護とも直結します。酒蔵が棚田米を使用することで、農家に安定した収入源をもたらし、耕作放棄地の減少にもつながっています。

また、棚田米を使用した日本酒は、観光コンテンツとしても魅力が高い存在です。田植え体験や収穫祭、棚田を望む蔵見学など、体験型の酒ツーリズムが生まれやすく、地域全体の活性化に波及していきます。酒が『』地域を回すエンジン』へと役割を広げている点は、現代の日本酒文化の重要な変化といえるでしょう。

棚田酒が描く日本酒の未来像

大七「西谷棚田」のような取り組みは、今後さらに広がっていくと見られます。気候変動や農業人口の減少が続く中で、酒蔵が原料生産から関わることは、品質向上だけでなく持続可能な仕組みづくりとしても不可欠です。そして、棚田という舞台は、自然・文化・人を結びつける象徴的な存在として、日本酒の新たな価値を生み出しています。

日本酒は今、単なる嗜好品ではなく、『地域の物語を体験するためのメディア』へと進化しつつあります。棚田から生まれる一杯は、土地の記憶、人の営み、そして未来への願いをそっと湛えています。こうした流れは、日本酒が再び地域の中心に戻り、人と人をゆるやかにつなぐ存在へと変化していることを物語っています。

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都会で『農』から始める酒造――白鶴酒造・天空農園が拓く次世代テロワール

白鶴酒造は10月23日、東京・銀座の自社ビル屋上「天空農園」で酒米「白鶴錦」の稲刈りを行いました。ここで収穫された米は、マイクロブルワリー「HAKUTSURU SAKE CRAFT」で仕込まれ、約40本の限定酒となる予定です。

この取り組みの本質は、単に都市で酒米を育てる試みではありません。『農業から始める酒造』という、日本酒文化の根源的なプロセスを都心に再構築する点にこそ価値があります。地方に広がる水田から遠く離れた銀座の屋上で米を育てるという行為は、酒造りの原点を都市に呼び戻す象徴的な実践といえます。

都市型農業がもたらす「生産と醸造の再接続」

酒造りは本来、「米づくり」から「発酵」までを通した一貫した営みでした。しかし現代において、農業と醸造は分断され、蔵人であっても米づくりの現場を知らないまま酒を造るケースは少なくありません。

ところが天空農園では、蔵人が米の生育を観察し、気候や土壌(屋上土壌)、日照など都市特有の環境の変化を身体的に理解できます。これは、酒の仕込みに対する感覚を研ぎ澄まし、「自分たちが育てた米で、自分たちが醸す」という本来の酒造文化に近い循環を取り戻すものです。

さらに、都市型農業の特性として、農作業に外部の人が参加しやすい点があります。都市生活者が田植えや稲刈りに関わることで、酒造りに対する理解が飛躍的に深まります。都市で農から酒までを完結させるモデルは、これまで分断されていた生産と消費の距離を縮め、文化的な関係の再構築を可能にします。

都市の気候が生む新しいテロワールの可能性

銀座の屋上で育つ酒米には、ビル風や高層ビルの反射光、都市微生物叢など、田舎の田んぼでは有り得ない環境要因が作用します。これらは決して欠点ではなく、都市という固有の風土、つまり、新たなテロワールを形成します。

ワインの世界で、都市醸造所が独自のアーバン・テロワールを発信しているように、日本酒もまた「都市で育つ米の個性」を語る時代が訪れていると言えるでしょう。特に酒米はタンパク質量や粒の硬さなどで味わいが変わるため、都市気候で育った米がどのような酒質を生むのかは、研究としても価値があります。

都市型農業は、小規模だからこそ環境要因を可視化しやすく、テロワール研究の新たな舞台ともなり得ます。

小規模だからこそ可能な『個性の極致』としての酒造り

天空農園の生産量は多くありません。しかし、小規模であるからこそ、次のような価値が生まれます。

  • 生育環境を細部まで把握できる
  • 単一区画の米だけで仕込む究極の限定ロットが作れる
  • 物語性が強く、体験価値の高い酒になる
  • 都市に住む消費者がリアルタイムで生産工程を見守れる

つまり小規模酒造の弱点とされる生産量の少なさは、都市の場合むしろ、「唯一無二の価値」へと転換されます。

都市で農から酒へ――日本酒の未来を示す原点回帰

白鶴酒造の天空農園は、都市で農業を再生し、その場で酒造りまで完結させるという、極めて現代的かつ根源的な取り組みです。都市が「消費の場所」から、少量でも「生産の場所」へと変わることで、酒造はより文化的で、より参加型のものとなっていくでしょう。

そしてこの流れは、都市テロワールの確立、小規模ロットによる多様な酒造文化、さらには「自分たちの街で育てた米の酒」という新しい地域性の創造へとつながっていきます。

農から始める酒造を都市で実践すること――それは、次の時代の日本酒のアイデンティティをつくる、小さいけれど大きな一歩なのです。

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KURA ONE®の常温生酒缶が始動──新シリーズ〈Re:Local〉が導く日本酒の新時代

日本酒缶ブランド「KURA ONE®」が、新シリーズ〈Re:Local〉をクラウドファンディング「Makuake」にて展開し、常温流通可能な『生酒缶』を含むラインナップを発表しました。200mLの飲み切りサイズを採用し、地域ごとの水・米・醸造文化をそのまま缶に封じ込める構成で、地名を前面に出した『ローカルの再定義』をテーマにしています。さらに、飲食店や宿泊施設向けの卸販売キャンペーンも同時に進め、国内外への流通拡大を狙っています。

KURA ONE®の歩み──『小さな日本酒』が切り開いた新市場

KURA ONE®は、従来の日本酒が持つ「重い・割れやすい・量が多い」という消費上のハードルを取り除き、持ち運びやすく、世界輸送に適した『小さな日本酒』としてブランドを確立してきました。2023年の登場以来、軽量性と堅牢性、そしてデザイン性の高さによって、様々な酒造の日本酒を、世界50カ国以上に流通させています。

今回の〈Re:Local〉では、単に飲みやすい日本酒を超え、土地の個性をパッケージに織り込み、『その土地の一杯』を手に取る体験を目指しています。テロワールを視覚的に理解できるデザイン力は、KURA ONE®がこれまで培ってきた強みの一つです。

注目の常温生酒缶──鮮度の概念を塗り替える挑戦

最も革新的なのは、生酒を常温流通させる技術的挑戦です。通常、生酒は冷蔵管理が必須ですが、KURA ONE®はアルミ缶の持つ高い遮光性・防酸化性と、独自の充填技術を組み合わせることで、開封時に生酒らしいフレッシュな香味が立ち上がる状態を実現しようとしています。

これにより、旅先への持ち運びや贈答の際に冷蔵環境が確保できないケースでも蔵出しの鮮度を届けることができ、日本酒の流通と体験の幅を大きく広げる可能性を秘めています。

スタイリッシュな日本酒缶がもたらす新たな価値

缶という器は、軽さと安全性に優れながらも、「高級酒は瓶」という固定観念と対峙する必要があります。KURA ONE®はここに、洗練されたデザイン、地域名の大胆な配置、そしてストーリー性の高いブランドコミュニケーションで挑んでいます。

さらに今回のMakuakeでは、「濃厚日本酒アイス」とのセット提案など、缶酒を軸にした新たな食体験にも踏み込んでいます。スタイリッシュな200mL缶は日本酒を『持ち歩ける嗜好品』へと変え、若い世代やインバウンド層にとっての入り口としても機能するでしょう。


KURA ONE®〈Re:Local〉は、ブランドが次のフェーズへ進んだことを象徴しています。生酒缶という技術的革新、地域の個性を前面に出したストーリーテリング、そして缶ならではの機動力。この三つを武器に、地方の小さな酒蔵が世界へ直接声を届けるための新しいプラットフォームとなり得ます。

今後は、品質管理の明確な説明と、高付加価値化のためのブランド戦略が鍵となるでしょう。『缶だからこそ生まれる価値』をどこまで高められるか──KURA ONE®の次の挑戦に注目が集まります。

▶ KURA ONE

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グランプリは山口の名酒「五橋」──世界が注目する日本酒コンテスト「MONACO SAKE AWARD 2025」

2025年10月6日、モナコ公国の名門施設「Yacht Club de Monaco」にて開催された「MONACO SAKE AWARD 2025」において、山口県は酒井酒造株式会社の「純米大吟醸 錦帯五橋」がグランプリに輝きました。このコンテストは、モナコと日本の文化交流を目的に始まった国際的な日本酒コンクールであり、世界中の美食家やソムリエが審査に参加することで知られています。

MONACO SAKE AWARDの国際的な位置づけ

MONACO SAKE AWARDは、単なる品評会ではなく、日本酒の国際的な認知度向上と市場拡大を目的とした文化的イベントです。審査員にはモナコ在住の宮廷シェフや一流ホテルのソムリエなどが名を連ね、地中海の美食都市モナコで開催されることで、フランスやイタリアなど欧州の食文化との融合が試され、日本酒の新たな可能性が探求されます。

特に今年のマリアージュ賞のテーマは「モッツァレラチーズ」であり、日本酒と西洋食材の相性を評価するユニークな試みが注目を集めました。これは、海外市場における日本酒のポジショニングを強化するうえで重要な指標となります。

今回のグランプリ受賞で、「五橋」の酒井酒造にとっては、海外の一流レストランやホテルでの採用が期待されるほか、輸出拡大やブランド価値の向上につながると見られます。それは、国際的な評価を得る大きな機会となるだけでなく、審査結果が酒造りの現場にフィードバックされることで、日本酒業界全体にも好影響を与えるはずです。

▶ 純米大吟醸 錦帯五橋|モナコ・サケ・アワードの最高賞に輝いた日本酒

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新酒の季節に考える——酒造年度(BY)表示の「曖昧さ」と日本酒の未来

新酒が店頭に並び始める季節になると、酒好きの心は自然と弾みます。「今年の出来はどうか」「去年と比べて香りは?」といった話題が飛び交い、冬の訪れを感じる瞬間でもあります。しかし、その一方で、瓶に小さく印字された「BY」――酒造年度(Brewery Year)の表示に首をかしげる人も少なくありません。ワインの「ヴィンテージ」に似ているようで、実は似て非なるこの表示。改めてその意味と課題を考えてみたいと思います。

ワインの『ヴィンテージ』とのズレ

ワインの世界では「ヴィンテージ=葡萄の収穫年」であり、その年の天候や収穫状況が味に直結します。いわば自然との対話を数字で示すものです。

一方、日本酒の「酒造年度(BY)」は、「その酒が仕込まれた年度」を示すもので、原料である米の収穫年とは一致しません。日本酒は、前年に収穫された米を冬に仕込み、翌年の春以降に出荷するのが一般的です。つまり、ワインが「農産物の年」を示すのに対し、日本酒は「仕込みの年」を示しているにすぎません。

この構造的なズレを考えると、「BYをワインのヴィンテージのように語る」ことは正確ではなく、もし『ヴィンテージ』を標榜するなら、本来は米の収穫年度を基準にすべきではないかという疑問が残ります。

さらに厄介なのは、このBY表示が一般の消費者にとって非常に分かりづらいという点です。たとえば「R6BY」と書かれていても、それが令和6年(2024年)に仕込まれた酒だとすぐ理解できる人は限られます。加えて、同じ蔵の中でも「R6BYの生酒」と「R5BYの火入れ酒」が同時に売られていることもあり、単に新しい数字が新しい酒とは限りません。

結果として、BY表示は本来の意義を果たせず、「難しい」「何を指しているのかわからない」という印象だけが残り、むしろ消費者を遠ざけてしまう側面すらあります。

新酒も古酒もそれぞれに価値があるのに…

日本酒の世界には、しぼりたての『新酒』のフレッシュな魅力と、熟成によって深みを増した『古酒』の妖艶な美しさの両方があります。しかし、現在の表示制度では、その違いがラベルから直感的に伝わらないのが現状です。製造年月は記載されていても、それが「瓶詰め時」なのか「蔵出し時」なのか明確でなく、消費者が「いま飲んでいる酒」がいつどのように造られたものなのかを正確に把握するのは難しいのです。

本来なら、①仕込み年度(酒造年度) ➁原料米の収穫年度 ③瓶詰め・出荷年月 といった情報を統一的に、分かりやすい形式で記載すべきでしょう。これが整えば、「今年の米で仕込み、半年熟成させた酒」なのか、「2年前の仕込みを寝かせた熟成酒」なのかが一目で分かり、日本酒の多様な世界がもっと正当に評価されるはずです。

曖昧さが日本酒の魅力を損ねている

現在のBY表示は、専門家や愛好家にとっては利用価値があるのかもしれませんが、酒自体の価値を語るにはあまりに曖昧で、個々の日本酒が持つ物語性を十分に伝えられません。

「いつ仕込まれた」「いつ詰められた」「いつ出荷された」——これらが一本のラベルの中で明確に整理されるだけで、日本酒の価値はさらに高まるでしょう。ワインが『ヴィンテージ』を誇るように、日本酒もまた、『時間をどう扱う酒か』を堂々と語れる時代を迎えるべきです。

新酒の季節に思うのは、この「BY」という小さな文字が、日本酒の未来を閉ざしてしまっているのではないかということであります。もともと酒造税法によって生まれた「BY」をそのまま転用するのではなく、今こそ消費者目線に沿って、個々の日本酒の魅力を伝える表示に切り替えるべきだと考えるのであります。

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「Oriental Sake Awards 2025」の最高賞が決まる──アジア市場が示した次の日本酒基準

アジア最大級の日本酒コンテストとして知られる「Oriental Sake Awards 2025」(以下 OSA)において、最高賞「サケ・オブ・ザ・イヤー」に新澤醸造店(宮城県大崎市)の「あたごのまつ 鮮烈辛口」が選ばれました。アジア全域から集まった審査員によるブラインド審査を経て決まるこの賞は、その年を代表するたった一本の日本酒に贈られる栄誉です。本醸造酒である同銘柄が、アジアの大規模市場で最も高い評価を獲得したことは、日本酒の未来に大きな意味を持ちます。

アジア市場で求められる食中酒としての完成度

OSAは香港を拠点とし、アジアに広がる日本酒ファン・飲食店・ホテル・輸入事業者から高い注目を集める国際日本酒コンテストです。アジアは現在、世界で最も日本酒消費が増えている地域であり、日本酒の新たな市場を形成する存在になっています。そこで最高賞に選ばれたということは、単に品質の高さだけでなく、「アジアの食文化に適応し、現地で愛される可能性が最も高い酒」として評価されたことを意味します。

「あたごのまつ 鮮烈辛口」は、キレのある辛口設計に加え、柔らかな米の旨味がバランスよくまとまり、食中酒としての対応力が非常に高い日本酒です。–5℃での氷温貯蔵によるクリアな味わいが保たれている点も評価され、寿司や日本料理はもちろん、東南アジアのスパイス料理や中華料理との相性も自然と高まります。国や文化を超えてペアリングの幅が広がることが、アジア市場で強く支持された理由の一つといえるでしょう。

本醸造の価値がアジアで再定義される

今回の最高賞には、もうひとつ重要な視点があります。それは、「本醸造」というカテゴリーがアジア市場において高く評価された点です。日本国内では純米・吟醸系が注目されがちですが、アジアでは日常酒としての飲みやすさや、料理に寄り添う万能性が求められ、本醸造の持つ「軽快さ」や「キレ」が強い武器になります。

OSAという大舞台で本醸造酒が頂点に立ったことは、日本酒の国際展開において「高価格帯・華やかさ」だけが評価軸ではないという、新たなメッセージでもあります。「毎日の食卓に合わせやすい味」こそが、アジアの日本酒需要を押し上げる原動力であることを示した結果といえます。

アジア発の評価が日本酒の未来を動かす

日本酒の輸出額の伸びをけん引しているのは中国・台湾・香港・シンガポール・タイなど、アジアの国々です。こうした市場では、現地の味覚や酒類文化を踏まえながら、その土地で選ばれる酒であるかどうかが重要になります。

OSAはまさにその指標となるコンテストであり、そこで最高賞を受けたということは「あたごのまつ 鮮烈辛口」がアジアで最も伸びる潜在力を持った銘柄であると評価されたに等しいのです。今後、アジアの飲食店やラグジュアリーホテルで採用が進む可能性も高く、海外販路の拡大に直結する成果となるでしょう。

地域の蔵からアジアの『日常酒』へ

「あたごのまつ 鮮烈辛口」の受賞は、地方の蔵元が生み出す「日常に寄り添う酒」が、アジアの巨大市場へと橋を架けた瞬間でもあります。華やかさではなく、食卓に溶け込む味わいが選ばれたことは、日本酒文化が次の段階へ進みつつあることを示しています。

アジア最大級のコンテストで生まれたこの結果は、これからの日本酒の海外展開において大きな指標となり、さらなる市場拡大と文化交流の鍵を握るものになるでしょう。

▶ アジア最大級の日本酒コンテスト「Oriental Sake Awards 2025」

▶ あたごのまつ 鮮烈辛口|アジア最大級の日本酒コンテストで最高賞を獲得

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