「鍋と燗の日」は、暦の上で冬の到来を告げる二十四節気の一つ・立冬(今年は11月7日)を記念日にあて、温かい鍋料理と燗酒を楽しむ文化を広めることを目的に制定されました。発起人は灘・伏見・伊丹の老舗酒造会社が参加する「日本酒がうまい!推進委員会」で、2011年に記念日として打ち出し、制定当初から試飲イベントや体験会などの共同プロモーションを行っています。
立冬は暦の上で「冬の始まり」を示す日であり、肌寒さが増すこの時期に家族や友人と鍋を囲み、体を温める習慣と自然に重なります。とりわけ日本酒の「燗」は、酒質の違いをやさしく引き出し、料理との相性を高めることから、鍋料理との親和性が高いと考えられています。こうした季節性と食文化の結びつきを象徴する日として「立冬=鍋と燗の日」が選ばれました。
制定の狙いは単に記念日を作ることではなく、日本酒の需要を盛り上げ、消費者に燗で飲む日本酒の魅力を再発見してもらうことにあります。記念日前後では酒造や小売、飲食店が連携して燗酒の試飲会、鍋と燗のペアリングイベント、販促キャンペーンなどを実施しており、地域の酒文化の発信につながっています。
「鍋と燗の日」は、単なる商業プロモーションにとどまらず、共有・共食の文化を見直す機会でもあります。鍋を囲む行為は、場を和ませて人の距離を縮めます。燗酒は、味わいの幅を広げて会話を豊かにします。現代のライフスタイルでは外食や一人鍋も増えていますが、この記念日は、季節を感じる食卓の価値をあらためて提案する役割を果たしています。
立冬には、地元の旬の食材で作る鍋に、燗が映える純米酒や本醸造を合わせるのがおすすめです。燗の温度帯を変えて飲み比べることで、同じ酒でも風味の変化を楽しめます。また、家庭や居酒屋での小さなイベントとして「鍋と燗」のペアリング会を開けば、季節行事として定着しやすくなります。
立冬つまり「鍋と燗の日」は、暦と食文化を結びつける現代の記念日として、冬の食卓に新しい気づきと会話をもたらしています。季節の始まりを味わう一杯と一鍋で、心も体もあたたかく過ごしてみたいものです。
