IWA5「アッサンブラージュ6」と鳳凰美田の挑戦──日本酒に広がるアッサンブラージュの可能性

シャンパーニュの伝説的醸造家、リシャール・ジョフロワ氏が手掛ける日本酒ブランド「IWA5」から10月1日、「アッサンブラージュ6」が発売されます。今回のテーマは「余分なものを削ぎ落とす」というものです。アッサンブラージュとは本来、複数のワインや原酒をブレンドし、理想の味わいを形作る手法を指します。ジョフロワ氏は日本酒にこの概念を持ち込み、米・水・酵母といった異なる要素を組み合わせながら、調和の中に個性を生み出すことを試みています。

新作の「アッサンブラージュ6」では、あえて華美な要素を抑え、無駄をそぎ落とすことで、日本酒が本来持つ透明感や奥深さを際立たせるものだといいます。この「削ぎ落とす」という発想は、日本の美意識にも通じるものであり、シンプルさの中に多様性を見出す姿勢が感じられます。ワインの世界ではアッサンブラージュはしばしば“足し算”の技術と語られますが、日本酒においては“引き算”の美学として新たな解釈が可能になるのかもしれません。

一方で、栃木の銘酒「鳳凰美田」も、このたび初めてアッサンブラージュに挑戦しました。長らく単一の仕込みや特定の酒米にこだわってきた酒造が、複数の原酒を組み合わせることで新しい味わいを表現する。その背景には、単一のスペックでは表現しきれない複雑さや奥行きを追求したいという思いがあると考えられます。鳳凰美田が持つ果実味豊かな酒質と、アッサンブラージュによる調和の技法の融合は、日本酒ファンにとって大きな関心事といえるでしょう。

日本酒業界において、アッサンブラージュはまだ新しい試みです。従来、日本酒は仕込みごとの個性や純米・吟醸といったカテゴリーに重きを置き、ブレンドという発想は限定的でした。しかし、原酒を組み合わせることで生まれる表現の幅は、酒蔵にとっても新しい可能性を切り拓きます。たとえば、米や酵母、醸造年度の異なる原酒を組み合わせることで、単一の酒では実現できない奥行きや余韻を創出することができます。さらに、気候変動や米の収量変化といった外的要因への対応策としても、アッサンブラージュは有効です。

また、海外市場に目を向けると、ブレンドの概念はすでに一般的です。ワインやウイスキーに親しむ消費者にとって、アッサンブラージュによる日本酒は理解しやすく、興味を持ちやすいカテゴリーとなるでしょう。IWA5の挑戦は、まさにその可能性を世界に示すものといえます。そして国内の酒造もまた、その流れに続くことで、日本酒がさらに多彩で柔軟な表現を獲得していくことが期待されます。

IWA5「アッサンブラージュ6」と鳳凰美田の新しい挑戦は、日本酒におけるアッサンブラージュの可能性を示す象徴的な出来事です。足し算と引き算、両方の視点を活かしたこの技法が、日本酒の未来にどのような景色を描くのか。今後も注目していきたいところです。

▶ 日本酒に広がる「アッサンブラージュ」の可能性〜ブレンドがもたらす新しい酒造りのかたち〜

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