酒造業界に参入するには免許が必要で、従来は新規蔵の取得が極めて厳格でした。よって、明治維新前に創業した酒造が大半を占め、創業100年であっても“新参者”と呼ばれる状況が続いています。
そんな中、2020年度の税制改正で「輸出用清酒製造免許制度」が創設され、輸出向けに限り、清酒製造免許の新規取得が可能になりました。また、日本酒特区では、地域振興・観光目的で、条件付きで新規蔵が免許を取得できることとなりました。クラフトサケメーカーでは、「その他の醸造酒」として参入を果たしたところもあるようです。
近年の日本酒ブームの広がりとともに、3Kとも見なされていた酒造に対する見方は大きく変わり、現在では、参入希望が若手の間にも広がっているといいます。ここ数年は、こころざしある酒造の起業もあり、固着した業界に少しづつ変化が生まれているようです。
ここでは、クラフトサケ作りなどを目的として、近年「その他の醸造酒免許」を取得した酒造をいくつかピックアップしてみます。
【その他の醸造酒免許で参入した酒造】
カヤマ醸造所
2015年に千葉県茂原市で、自分達が飲みたいお酒を造りたいとの思いから、どぶろく製造をはじめました。「純米発泡濁酒かやま」などを製造しています。
WAKAZE
2018年に東京三軒茶屋で創業。世界でSAKEが造られ飲まれる世界の実現を目指し、フランスとアメリカを含めた3拠点で展開しています。今夏、スパークリングSAKE「SummerFall」は、アメリカから日本へと人気が広がりました。
木花之醸造所
2020年に東京浅草でどぶろく製造を始めました。「ハナグモリ」という商品があります。
LIBROM Craft Sake Brewery
2020年、福岡市に設立されました。「自由な醸造スタイルで酒造りにロマンを」をコンセプトにして、全国で「LIBROM」ブランドを展開しています。
haccoba
2020年に、福島県南相馬市で創業。酒造りを通じて、原発事故で被災した地域を再生する目的を掲げています。どぶろく文化を現代的に再解釈し、花酛製法などを活用しているところに特徴があります。「はなうたホップス」などの商品が出ています。
稲とアガベ
2021年に、秋田県男鹿市で「男鹿の風土を醸す」を掲げて創業。日本酒の可能性を広げるために「交酒」に取り組んでいます。
LAGOON BREWERY
2021年に「感激できる、多様なおいしさ」をモットーにして、新潟市の福島潟湖畔に設立。国内ではクラフトサケ「翔空」を展開。輸出用に本格的な日本酒も手掛けています。
ハッピー太郎醸造所
2022年に、滋賀県長浜市でどぶろく製造を開始。もとは麹屋で、完熟糀を使用した「ハッピーどぶろく」などを商品化しています。
足立農醸
2023年に、大阪府高槻市に団地内マイクロ酒蔵が完成。八戸酒造で修業の後、2021年に足立農醸を設立し、農業から手掛けています。「世界へ日本酒文化を伝える」という目的を掲げ、クラフトサケ「MIYOI」が生み出されました。
でじま芳扇堂
2023年、長崎市出島に「風土の景色を表現する」を掲げてどぶろく醸造を開始。「芳扇」などを商品化しています。
平六醸造
2024年、岩手県紫波郡紫波町にかつてあった酒蔵を、クラフトサケ醸造所として復活させました。代表は、菊の司酒造の経営に関わっていた人物で、大きな実績を積んでいます。「平六醸造」の銘が入った商品が出ています。
Sake Underground
2024年、兵庫県南あわじ市で、長慶寺農園の農園主が、生酛造りでのどぶろく醸造を開始。「菩提泉 長慶寺」などを醸す。
ぷくぷく醸造
2022年にファントムブルワリーとして設立されたぷくぷく醸造は、2024年に福島県南相馬市でクラフトサケづくりを始めました。「ぷくぷくホップ」などが商品化されています。