2025年9月3日、秋の気配が漂い始めた大阪・難波にて、「第8回 大阪タカシマヤ日本酒祭」が華やかに幕を開けました。高島屋大阪店の7階催会場には、全国の酒蔵が一堂に会し、伝統と革新が交差する日本酒の祭典が繰り広げられています。香り・色・味わいをテーマにした9つのBARでは、来場者が五感を使って酒を楽しむ体験型企画が展開され、会場は平日にもかかわらず多くの人々で賑わっています。
その中でも注目したいのが、「My Sake World」のブースです。来場者が自ら日本酒をブレンドし、世界に一つだけの“マイサケ”を創るという体験ができるブースで、従来の「飲む」から「創る」へと酒の楽しみ方を大きく転換させる試みです。吟醸酒、純米酒、熟成酒など、個性豊かな酒を組み合わせる工程は、まるで調香師が香水を調合するような繊細さと創造性を要します。スタッフの丁寧なサポートのもと、来場者は自分の味覚と向き合いながら、理想の一杯を探し出していきます。
この取り組みは、単なるイベントの一企画にとどまりません。「My Sake World」は、京都の出版社『Leaf』を母体とする株式会社リーフ・パブリケーションズが展開するプロジェクトであり、日本酒の新たな価値創造を目指す挑戦でもあります。現在、全国55蔵との連携を実現し、ブレンド許可を得た酒を活用した商品開発を進めるほか、NFT技術を活用した「Sake World NFT」マーケットプレイスも展開。ユーザーが自らのレシピを保存・再販売できる仕組みは、酒の個人化と流通の可能性を大きく広げています。
このような動きは、日本酒文化の未来に対して重要な示唆を与えています。かつて日本酒は、酒蔵が造り、消費者が選び、飲むという一方向的な関係性の中にありました。しかし「My Sake World」は、消費者自身が酒の創造者となることで、酒との関係性を能動的かつ個人的なものへと変えていきます。これは、クラフトビールやナチュラルワインの潮流とも共鳴する動きであり、若年層や海外の酒ファンにとっても魅力的なアプローチとなるでしょう。
さらに、今後の展望としては、飲食店やホテルとのコラボレーションによるオリジナル酒の開発、酒蔵の買収によるブレンド工程の内製化、そして体験型観光との連携などが挙げられます。ユネスコ無形文化遺産に登録された日本酒造りの技術と精神を背景に、創造性とテクノロジーを融合させた新しい酒文化が、今まさに関西で芽吹いているのです。
「創る楽しみ」が酒をより深く、より個人的なものに変えていく──その可能性を体感できる場として、「大阪タカシマヤ日本酒祭」は今週いっぱい、来場者を迎え続けています。日本酒の未来は、飲むだけではなく、創ることでさらに豊かになるのかもしれません。
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