貴醸酒「白狐」発売――旧醸造試験所と王子の狐が開く新年

東京北区観光協会は、水の代わりに日本酒を仕込みに用いた貴醸酒「白狐(びゃっこ)」の販売を、クラウドファンディングサイト「Makuake」で行っています。日本酒文化と地域の物語性を重ね合わせた本商品は、年末年始という節目の時期にふさわしい一本として注目を集めています。

貴醸酒とは、仕込み水の一部、あるいはすべてを日本酒に置き換えて仕込む、非常に贅沢な製法で造られる酒です。通常の日本酒に比べ、糖分や旨味が凝縮され、まろやかで奥行きのある甘味が特徴となります。「白狐」もその例に漏れず、口当たりは柔らかく、余韻には豊かなコクと品のある甘さが広がる仕上がりとなっています。

この「白狐」という名称には、東京北区・王子の地が持つ歴史と伝承が重ねられています。王子といえば、古くから「狐の町」として知られ、王子稲荷神社には関東各地の狐が大晦日に集まるという「狐の行列」の伝承が残されています。白狐は神の使いともされ、豊穣や繁栄の象徴です。年の瀬から新年へと移り変わる特別な時間に、この名を冠した日本酒を味わうことには、どこか縁起の良さが感じられます。

さらに、「白狐」は北区が誇る近代日本酒史の重要拠点、旧醸造試験所の存在とも深く結びついています。現在の独立行政法人酒類総合研究所の前身にあたる醸造試験所は、明治時代に王子の地に設立され、日本酒の品質向上と技術革新を支えてきました。全国の酒蔵へと広まった酵母研究や醸造技術の礎は、まさにこの地から発信されたものです。

「白狐」は、そうした日本酒の知の原点ともいえる土地の記憶を、現代のかたちで伝える存在とも言えるでしょう。単なる土産品や限定酒ではなく、北区という土地が育んできた日本酒文化そのものを一杯の中に閉じ込めた商品として位置づけられています。

年末年始は、日本酒が最も文化的な意味合いを帯びる季節でもあります。年越しの一献、正月の祝酒、家族や親しい人との語らいの場において、日本酒は「時間を共有するための酒」としての役割を担ってきました。甘味と厚みを備えた貴醸酒は、食後酒やゆったりと味わう一杯としても相性が良く、慌ただしい年末年始の中で、ひと息つく時間を演出してくれます。

東京北区観光協会による「白狐」の販売は、観光振興にとどまらず、日本酒と地域文化を改めて結び直す試みとも言えます。旧醸造試験所の記憶、王子の狐の伝承、そして現代の醸造技術が交差するこの貴醸酒は、年の終わりと始まりを彩る象徴的な存在となりそうです。日本酒の持つ物語性を味わいながら、新たな一年への願いを込めて杯を傾けたいところです。

▶ 特別な日に開けたい一本。貴醸酒「白狐」プロジェクト【Makuake】

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