2025年9月20日、埼玉県川越市の氷川神社で開催される「恋酒川越2025」に、オーディオ機器メーカーとして知られるオンキヨー株式会社が出展することが発表されました。出展内容は、同社が独自に開発した「加振技術」を活用した日本酒、いわゆる「加振酒」です。伝統文化と先端技術の融合がテーマとなる同イベントにおいて、加振酒の登場は大きな注目を集めることが予想されます。
音の振動を酒造りに活かすオンキヨーの挑戦
オンキヨーの加振技術は、音楽の振動を特殊な装置を通じて醸造タンクに伝え、酵母や発酵環境に働きかける仕組みです。従来の“音楽を聴かせる”試みとは異なり、音波そのものを酒の熟成プロセスに活かす点が特徴です。研究の過程では、発酵中に生成される香味成分が通常よりも増加する傾向が確認されており、バナナの香りに似た酢酸イソアミルや、リンゴ様のカプロン酸エチルなどが強調されるケースも見られました。科学的な裏付けとともに、新たな醸造手法としての可能性が広がっています。
全国で広がる「加振酒」の輪
オンキヨーの技術はすでに複数の酒蔵で実用化され、独自のブランド展開が進んでいます。岡山県の菊池酒造「燦然 蔵リズム」、新潟県の北雪酒造「北雪 純米 加振音楽酒」、愛媛県の八木酒造部「山丹正宗 Jazz Brew」、徳島県の三芳菊酒造「純米吟醸 ワイルドサイドを歩け 音楽振動熟成」など、各蔵が音楽ジャンルや地域性を掛け合わせた商品を発表しています。さらに、北海道の国稀酒造や大阪の山野酒造も参画し、全国に「音楽と酒の融合」という新たな潮流が広がりつつあります。
特筆すべきは、京都市交響楽団とのコラボレーションにより誕生した「聚楽第 京乃響」です。交響楽団の演奏が発酵過程に加振されることで、芸術と酒造りの共演が実現しました。加振酒は単なる技術応用にとどまらず、文化や地域資源を結び付ける媒介としても存在感を増しています。
恋酒川越2025での意義
「恋酒川越」は、日本酒を通じて人と人とを結び付けることを目的とするイベントで、着物来場者への特典なども用意される華やかな催しです。そこにオンキヨーが加振酒を携えて参加することは、伝統的な日本酒の場に新しい価値観を提示する試みといえます。歴史ある川越の町並みにおいて、最先端技術で育まれた酒を体験できることは、多くの来場者に驚きと興味を与えるでしょう。
未来に向けて
加振酒は、今後さらに研究が進めば、音楽ジャンルや周波数の違いによって味わいや香りを自在にデザインする可能性があります。イベントでの体験をきっかけに、消費者が「どんな音楽で育った酒なのか」というストーリーを楽しむ時代が到来するかもしれません。
オンキヨーの出展は、日本酒が進化し続ける文化であることを強く印象付けるものです。伝統と革新が交わる「恋酒川越2025」での披露は、日本酒の未来を語る上で大きな一歩になるでしょう。
