株式会社柴田屋酒店(東京都中野区)は、宮城県加美町の老舗・田中酒造店と共同で開発したプライベートブランド日本酒「土音(つちのね)sound of terroir」を、2025年9月4日(木)に発売しました。この酒は、発売直後から日本酒ファンや業界関係者の間で注目を集め、サステナブルな酒造りの象徴として高い評価を受けています。
「土音」は、粒の形状やサイズが規格外とされる「等外米」を原料に使用しています。これまで廃棄や飼料化されてきた等外米に新たな価値を見出し、農家の努力と土地の恵みを酒として昇華させるというコンセプトは、環境意識の高まりとともに多くの共感を呼んでいます。使用される酒米はすべて契約栽培によって供給され、「みやぎの環境にやさしい農産物」認証を取得。農薬や化学肥料の使用を極力控え、堆肥による土づくりを重視した持続可能な農法が採用されています。
味わいにおいても「土音」は独自性を放っています。穏やかな香りの中に、餅やキャンディ、カンロ飴、アップルパイといった甘いニュアンスが重なり、地層のように幾重にも重なる味の深みが特徴です。旨味と甘味が層を成し、長い余韻を残すその味わいは、メインディッシュとのペアリングにも適しており、鯖の棒鮨やすき焼き、牛肉の赤ワイン煮などとの相性が良いとされています。
発売から約10日が経過した現在、柴田屋酒店のオンラインショップの注目度もアップし、消費者の関心の高さをうかがわせます。SNS上でも「土音」の味わいや背景に共感する声が多く見られ、「土地の声を感じる酒」「環境と文化をつなぐ一杯」といったコメントが寄せられています。
▶ 土音つちのね sound of terroir(柴田屋酒店のオンラインショップ)
この酒が持つ意味は、単なる新商品の枠を超えています。まず、等外米の活用という点で、食品ロス削減への貢献が期待されます。さらに、契約栽培や環境認証米の使用は、持続可能な農業の推進に寄与するものであり、酒造りを通じて地域の農業や環境保全に光を当てる取り組みといえます。
また、「sound of terroir」という副題が示すように、この酒は土地の気候や土壌、栽培者の技術といった“テロワール”を体現する存在です。ワインの世界では一般的な概念であるテロワールを日本酒に取り入れることで、より深い文化的・地理的背景を味わいに込める試みは、日本酒の新たな可能性を示しています。
柴田屋酒店と田中酒造店の協業によって誕生した「土音」は、伝統と革新、環境と文化、そして人と土地をつなぐ象徴的な一杯です。今後の展開にも注目が集まる中、この酒が日本酒業界に与える影響は小さくないでしょう。持続可能性と物語性を兼ね備えた「土音」は、これからの日本酒のあり方を問い直すきっかけとなるかもしれません。
