近年、日本酒の世界では「ペアリング」が注目を集めています。これまでワインと料理の相性を指す言葉として一般的だったペアリングは、今や日本酒にも広がりを見せ、料理との絶妙な組み合わせを楽しむ新しい文化として定着しつつあります。全国各地で、地域の食材や料理に合う日本酒が次々と誕生するなか、佐賀県からもユニークな取り組みが登場しました。
華々しく登場「ミンチ天にがばいぃーよ」
2025年7月26日、「ユニークなお酒との出会い 酒日向」から、「ミンチ天にがばいぃーよ」という日本酒が発売されました。このユニークな名称の日本酒は、佐賀のソウルフード「ミンチ天」にぴったり寄り添う味わいを目指して造られた純米酒です。地元で古くから親しまれてきたミンチ天とは、魚のすり身にミンチ肉と玉ねぎを加えて揚げた惣菜で、濃厚ながらも親しみやすい味が特徴です。
佐賀県といえば、つい先日も「SUSHIDA 辛口純米 七田」が登場し、日本酒ペアリングに新風を吹き込んだところです。「SUSHIDA」は、寿司に合う日本酒をコンセプトに開発され、全国の寿司ファンから喝采を浴びています。その流れを受けて、今度は地元のソウルフードへと一歩踏み込んだのです。
製造を担当したのは、佐賀県の老舗酒造「光武酒造場」です。味わいは、ミンチ天の濃い味わいに負けないしっかりとした旨味をもちつつも、脂をさっぱりと流してくれる後口の良さが特徴です。地元食材に合わせることで、日本酒の魅力をより引き立てる工夫がなされており、普段日本酒をあまり飲まない若い世代にも受け入れられやすいよう、ややライトな仕上がりとなっています。
地域文化と日本酒が生む新しい価値
このような動きは、単なる「日本酒の地域限定バージョン」とは異なり、地域文化と密接に結びついた「地酒の進化形」ともいえるものです。日本酒は長らく「格式高い伝統の酒」として認識されがちでしたが、近年ではよりカジュアルに、日々の食卓に寄り添う存在として再評価されています。ペアリングという視点から見ると、日本酒は地域の料理ともっとも相性の良い飲み物であり、そこにしかない魅力を育てる可能性を秘めているのです。
佐賀県のような地方から、こうした新しい提案が発信されることは、日本酒文化全体の活性化にもつながります。地元料理との組み合わせを通じて、新たなファン層の獲得や観光との連動も期待されるでしょう。今後も、各地の食文化と結びついた日本酒の取り組みから目が離せなくなりました。
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