日本酒が伸びる韓国~「量」だけでなく「タイプ」が変わり始めた市場

日本酒の海外市場において、近年ひときわ存在感を増しているのが韓国です。米国や中国市場が成熟局面に入る中、このたび宝ホールディングスが韓国市場への注力姿勢を明確にしたことは、日本酒輸出の新たな潮流を象徴する動きと言えるでしょう。

数字が示す韓国市場の確かな成長

韓国における日本酒の輸入は、ここ数年、金額・数量ともに右肩上がりで推移しています。輸入額は前年比で10%以上の増加を示す年が続き、数量ベースでは数年前と比べて2倍以上に拡大したとされます。注目すべきは、他の輸入酒類が伸び悩む中で、日本酒が堅調に成長している点です。

この背景には、日本酒が単なる「日本料理店の酒」から、「日常的に選ばれる酒」へと位置づけを変えつつある現状があります。宝ホールディングスが韓国市場に可能性を見出す理由も、まさにこの構造変化にあります。

焼酎文化の国で起きた嗜好の変化

韓国は焼酎(ソジュ)が圧倒的な地位を占める市場ですが、若年層を中心に飲酒スタイルは変わりつつあります。アルコール度数の高さよりも、味わいの多様性や香り、食事との相性を重視する傾向が強まり、日本酒はその受け皿となりました。

特に、日本酒をワイン的に捉える飲み方が浸透し始めたことは大きな転換点です。香りや酸味、米由来の旨味といった要素が評価され、飲み比べやペアリングを楽しむ文化が広がっています。

その韓国市場で顕著に伸びているのは、純米酒・純米吟醸酒と吟醸・大吟醸系のフルーティーな香りを持つ日本酒です。

純米酒・純米吟醸酒は、米の旨味が分かりやすく、香りが強すぎないことから、韓国料理やシェアスタイルの食事と相性が良く、食中酒として受け入れられています。また、フルーティーな香りを持つ日本酒は、若年層や女性を中心に支持を集めており、SNS映えするラベルや「華やかな香り」という分かりやすさが人気を後押ししています。

いずれも共通しているのは、「日本酒らしさ」を押し出しすぎず、飲み手が直感的に楽しめる点です。

宝ホールディングスが描くローカライズ戦略

宝ホールディングスは、こうした市場特性を踏まえ、単なる輸出数量の拡大ではなく、現地の飲食文化に合わせた商品提案を重視しています。価格帯、酒質、提供シーンを細かく設計し、日本酒が「特別な酒」ではなく「選択肢の一つ」となることを目指しています。

政治的な日韓関係とは切り離され、生活文化として日本酒が定着し始めている点も、同社が韓国市場を重視する理由の一つでしょう。


韓国で日本酒が伸びている理由は、単なるブームではありません。消費者の嗜好変化、日本酒タイプの進化、そして企業側のローカライズ戦略が噛み合った結果です。宝ホールディングスの動きは、その象徴的な事例と言えます。

韓国市場は今、日本酒にとって「量を売る場」から「価値を磨く場」へと変わりつつあります。この市場で選ばれる日本酒の姿は、今後の世界展開を占う重要なヒントを与えてくれるでしょう。

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