大石酒造、ダム本体で日本酒熟成! サステナビリティでも注目される天然の冷蔵庫

京都丹波に位置する老舗蔵元、大石酒造が、画期的な日本酒の熟成方法に乗り出し、注目を集めています。同社は、市内のダム本体が持つ年間を通じて約15℃という安定した天然冷却環境を利用し、7月下旬に日本酒の熟成を開始しました。この取り組みは、近年高まる熟成酒への需要、特に中国市場での人気に呼応するものでもあり、日本酒の新たな価値創造への可能性を秘めています。

自然の恵みを活かした日本酒熟成への挑戦

日本酒の熟成は、ワインやウイスキーと同様に、時間とともに酒質が変化し、より複雑で奥深い味わいを生み出します。特に長期熟成させた日本酒、いわゆる「熟成古酒」は、琥珀色に輝き、ナッツやドライフルーツのような芳醇な香りと、まろやかで円熟した口当たりが特徴です。しかし、熟成には温度と湿度の安定した管理が不可欠であり、大規模な設備投資や維持コストが課題となっています。

大石酒造が着目したのは、ダム本体が持つ自然の冷却力です。ダム内部は、分厚いコンクリートと大量の水に囲まれているため、外気温の影響を受けにくく、年間を通じて安定した低温を保つことができます。今回は、熟成が好影響をもたらすと考えられる銘柄が選定され、ダム内の特定の区画に搬入されました。15℃前後という温度は、日本酒の熟成にとって理想的な環境です。この天然冷却による熟成は、環境負荷の低減だけでなく、コスト面でも大きなメリットをもたらすはずです。

高まる熟成酒の需要とヴィンテージ市場の可能性

さらに重要なのは、熟成期間を経た日本酒が、ワインのように「ヴィンテージ」としての価値を持つようになることです。近年、中国をはじめとするアジア圏では、富裕層を中心に高品質な日本酒への関心が高まっており、特に限定品や希少性の高い熟成酒は、贈答品としても高い人気を博しています。ヴィンテージ市場が形成されれば、日本酒のブランド価値向上に大きく貢献し、新たな収益源となることが期待されます。

現在、日本酒は多様な楽しみ方が提案されていますが、ワインのようなヴィンテージの概念はまだ浸透していません。今回の取り組みは、日本酒に新たな価値観をもたらし、コレクターズアイテムとしての魅力を高める可能性を秘めています。長期保存が可能で、時間の経過と共に味わいが深まる熟成酒は、消費者にとって新たな選択肢となり、日本酒市場全体の活性化に繋がるでしょう。

全国に広がる天然冷却熟成の動きと新たな観光資源化への展望

今回の取り組みは、大石酒造だけの専売特許ではありません。日本全国には、ダムに限らず、廃坑になったトンネル、歴史的な石蔵、地下水が豊富な鍾乳洞など、年間を通じて安定した低温を保つことができる天然冷却空間が数多く存在します。そして、このような場所を熟成に活用する動きは、少しずつ広がりを見せています。例えば、佐渡の尾畑酒造は金山の坑道を、神奈川県の熊澤酒造では防空壕を利用して日本酒を熟成させるなど、各地の酒蔵がそれぞれの地域の特性を活かした取り組みを進めているのです。

これらの場所は、これまで有効活用されてこなかったのですが、今回の事例を参考に、日本酒やワイン、さらにはチーズや生ハムといった食品の熟成庫として活用する動きが広がる可能性を秘めています。

さらに、これらの天然冷却空間は、新たな観光資源としての可能性も秘めています。熟成庫の見学ツアーや、そこでしか味わえない熟成酒のテイスティングイベントなどを開催することで、地域の活性化にも繋がるでしょう。ダムや廃坑、地下貯蔵庫といった場所に、新たな価値を与えることで、これまでとは異なる視点での地域振興が期待されます。

大石酒造のダム熟成は、単なる日本酒造りの進化に留まりません。それは、日本全国に眠る豊かな自然環境と、日本の伝統文化である日本酒が融合することで生まれる、新たな産業と観光の可能性を示す試金石となるでしょう。

今回の大石酒造の取り組みは3か月という比較的短い熟成時間を設定しているようですが、この試みを長期熟成への試金石とし、新たな市場を切り拓くことを期待したいものです。

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タイ最大級の酒類展示会で日本酒が存在感

2025年7月24日から27日にかけて、タイ・バンコクでアジア屈指の酒類展示会「Pub Bar Asia 2025」が開催されました。本イベントはアジア全域のバイヤーや飲食業関係者が集う大規模な場として知られ、今年も例年以上の来場者数を記録しました。その中で特に存在感を放っていたのが、日本酒の展示ブースでした。
今回は小西酒造など、全国から15の酒蔵・関連団体が参加し、純米酒からスパークリングタイプ、さらには低アルコール商品まで、多くの日本酒が並びました。来場者の約7割が飲食業界関係者とされる中で、日本酒への関心は非常に高く、「食中酒としての可能性が広がっている」といった声が複数のバイヤーから聞かれています。
中でも現地メディアが注目したのがスパークリング日本酒です。爽やかな口当たりと美しいボトルデザインが好評を博し、「現地の若年層や女性層にも訴求できる」と高く評価されました。

商談と試飲が盛況、輸入への期待も高まる

展示会場では商談専用スペースが設けられ、日本酒ブースには終日活発な交流が見られました。タイ料理とのペアリングを意識した商品説明や試飲が行われ、来場者からは「果実味が豊かで現地料理に合う」「ワインや焼酎とは違った魅力がある」といった声が寄せられました。
一部の酒蔵は、現地企業との販売提携の可能性について前向きな姿勢を示しており、輸入希望を示すバイヤーも多数出現。特に「日本酒のラベルや商品説明の多言語対応が進んでいる点が安心材料になる」との評価があり、実務面でも着実な進化が見られます。
こうした動きは、東南アジアにおける日本酒の普及にとって重要なステップとなるでしょう。タイは親日的な文化を持ち、食の多様性があることから、日本酒にとって理想的な浸透先と見る声も増えています。

セミナーで技術革新も紹介、参加者の理解が深化

会期中には日本酒の魅力を伝えるためのミニセミナーも複数開催されました。発酵や熟成技術についての解説が行われ、“海底熟成”や“宇宙酵母”といった革新的な事例が紹介されると、会場からは驚きの声が上がりました。「日本酒がここまで進化しているとは思わなかった」との感想もあり、従来の「伝統酒」というイメージを覆す新たな認識が広がりつつあることを実感しました。
このような技術的イノベーションの共有は、日本酒のブランド価値向上につながるだけでなく、今後の海外展開を後押しする要素ともなります。展示会を通じて、日本酒は文化的・技術的側面の両面から海外市場へのアプローチを強化していることが明確になりました。

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日本酒と泡盛が合体:本日発売された「SAKE×AWAMORI 大吟醸2025」とは

本日8月1日、沖縄県那覇市を拠点に企画販売を主な事業とする株式会社OneSpiritから、日本酒の常識を覆す画期的な新商品「SAKE×AWAMORI 大吟醸2025」が満を持して発売されました。この画期的なボトルは、福井県の老舗蔵元である田嶋酒造株式会社が手掛けた上質な日本酒と、OneSpiritの関連会社である沖縄の瑞穂酒造が提供する泡盛を融合させた、驚きの一本です。

革新的なコラボレーション「SAKE×AWAMORI」シリーズの背景

この「SAKE×AWAMORI」シリーズは、2022年に株式会社OneSpiritが立ち上げて以来、毎年異なるコンセプトで展開され、日本酒と泡盛の新たな可能性を追求し続けてきました。 今回発売されるのは、その革新的な試みの第八弾にあたります。異なる風土と歴史を持つ二つの酒文化が、OneSpiritの独創的な企画力のもと、融合することで一体どのような新たな味わいが生まれるのか、大きな注目が集まっています。

田嶋酒造株式会社は、福井県で古くから続く歴史ある酒蔵として、「福千歳」など高品質な日本酒を世に送り出してきました。その卓越した醸造技術によって生み出される日本酒は、繊細でありながらもしっかりとした米の旨味が特徴です。一方、沖縄の瑞穂酒造は、150年以上の長きにわたり泡盛造りに情熱を注いできた老舗であり、その泡盛は奥深いコクと香りで知られています。今回のプロジェクトは、まさに異質の酒造りの匠が、OneSpiritのプロデュースによって見事に合体したものなのです。

「異種ブレンド」が提案する新たな飲用シーン

「SAKE×AWAMORI 大吟醸2025」では、田嶋酒造が精魂込めて醸した日本酒の中でも最高峰とされる「大吟醸」クラスの日本酒をベースに使用。そこに、瑞穂酒造が誇る泡盛が絶妙なバランスでブレンドされています。この組み合わせがもたらす効果は多岐にわたります。まず、大吟醸特有の華やかでフルーティーな吟醸香はそのままに、泡盛が加わることで奥行きのある複雑な香りが生まれます。泡盛が持つ独特の熟成香や力強さが、大吟醸の繊細な香りを包み込み、より一層魅力的なアロマのハーモニーを奏でます。

味わいにおいても、このブレンドは驚くべき変化をもたらします。大吟醸のクリアで洗練された口当たりに、泡盛由来の豊かなコクとまろやかさが加わり、唯一無二のテクスチャーが実現されています。一般的に、日本酒はスッキリとした後味が特徴的ですが、「SAKE×AWAMORI」は、泡盛が持つ余韻の長さや複雑な旨みが加わることで、飲み終わった後にも深い満足感をもたらします。これにより、単なる日本酒でも泡盛でもない、新しいカテゴリーの味わいが確立されたと言えるでしょう。

さらに、この「SAKE×AWAMORI 大吟醸2025」は、「酒ハイ」(日本酒のソーダ割)のベースとしても大いに活躍が期待されています。 大吟醸の持つ洗練された香りと泡盛のしっかりとした骨格が、ソーダで割ることで軽やかさの中に複雑な香りと味わいを保ち、これまでの日本酒ハイボールとは一線を画す、新しい体験を提供してくれるのです。特に、食事のシーンを選ばず楽しめる汎用性の高さは、今年のトレンドを牽引する一本となる可能性を秘めています。

また、泡盛は熟成によってその風味が深まる特性を持つため、この「SAKE×AWAMORI 大吟醸2025」も、時間の経過とともにさらに豊かな表情を見せる可能性を秘めています。購入後も、涼しい場所で寝かせることで、より一層まろやかで奥深い味わいへと変化していく過程を楽しむことができるかもしれません。

伝統と革新が融合する酒文化の未来

この革新的な商品は、日本酒愛好家だけでなく、泡盛ファン、さらにはこれまで日本酒や泡盛に馴染みがなかった人々にも、新たな発見と驚きをもたらすことでしょう。食中酒としてはもちろんのこと、特別な日の乾杯の一杯として、あるいは食後にゆっくりと味わう一杯としても最適です。和食はもちろん、洋食や中華、エスニック料理など、幅広い料理とのペアリングにも挑戦できる可能性を秘めており、食卓に新たな楽しみを提案してくれます。

「SAKE×AWAMORI 大吟醸2025」は、株式会社OneSpiritの情熱とビジョン、そして田嶋酒造と瑞穂酒造の持つ別次元の匠の技術が融合した結晶です。この「新時代の日本酒」は、日本の酒文化に新たな風を吹き込み、醸造アルコールを添加する「本醸造酒」などの復権につながる潮流を生み出すかもしれません。

▶ SAKE×AWAMORI 大吟醸 2025(OneSpirit)

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日本酒がシェイクに!? Shake Shack広島と賀茂鶴がコラボ

2025年8月1日、広島に新たな旋風が巻き起こります。米国発の人気ハンバーガーレストラン「Shake Shack」のミナモア広島店が、広島が誇る老舗酒蔵「賀茂鶴酒造」との異色コラボレーションにより、なんと「日本酒シェイク」を発売するというのです。一見すると意外な組み合わせですが、これは伝統的な日本酒の楽しみ方に一石を投じ、その可能性を広げる画期的な試みとして注目を集めています。

近年、日本酒は国内外でその多様な魅力が再評価され、消費者の裾野も広がりを見せています。しかし、その多くは食事と共に、あるいは単体でじっくりと味わうという従来のスタイルに留まっていました。そんな中で登場する日本酒シェイクは、日本酒をよりカジュアルに、より親しみやすい形で楽しむことを可能にする、まさに「新しい日本酒の楽しみ方」を提案するものです。

日本酒シェイク、その萌芽と進化の軌跡

実は、日本酒とシェイクの組み合わせは、今回のShake Shackと賀茂鶴のコラボが初の試みではありません。日本酒業界では、伝統に縛られず、新しい飲用スタイルを模索する動きが以前から見られました。

その発祥は2010年代の佐渡を含めた新潟周辺にあるようで、「久保田」で知られる朝日酒造は、ホームページにレシピを掲載しています。その久保田は、若年層や日本酒になじみのない層に向けて、カクテルやデザートへの活用など、多様な飲用シーンを提案してきました。このような老舗酒造が、その伝統にあぐらをかかず、新しい価値創造に挑む姿勢は、業界全体に刺激を与えたと言えるでしょう。

また、日本酒の可能性を広げる動きとしては、2020年に始まった山口県の銘酒「獺祭」とモスバーガーのコラボレーションも特筆すべき事例です。こちらはノンアルコールではあったものの、「まぜるシェイク 獺祭」として販売され、日本酒の香りを気軽に楽しめる飲み物として大きな話題を呼びました。アルコールを含まないことで、幅広い層にアプローチできるという利点に加え、日本酒の持つフルーティーな香りをシェイクという形で表現することで、日本酒に対するイメージをより身近なものにしたと言えるでしょう。この獺祭の試みは、日本酒の「香り」をキーにした新しいドリンク開発の可能性を示し、今回のアルコール入り日本酒シェイクへの布石となったとも考えられます。

これらの先行事例を踏まえると、今回のShake Shackと賀茂鶴のコラボレーションは、単なる一過性のトレンドではなく、日本酒の進化における自然な流れの中で生まれた必然的な出会いであると捉えることができます。「日本酒×シェイク」という概念を、より洗練された形で実現し、獺祭が示した「日本酒の香りを楽しむ」というアプローチを、さらにアルコール入りという形で深化させたものと言えるでしょう。

賀茂鶴とShake Shack広島で紡ぐ新たなハーモニー

今回の主役である賀茂鶴酒造は、広島を代表する酒蔵の一つであり、その歴史と品質には定評があります。伝統的な製法を守りつつも、常に新しい挑戦を続けてきた賀茂鶴が、若者を中心に絶大な人気を誇るShake Shackとのコラボレーションに踏み切ったことは、その挑戦的な姿勢の表れと言えるでしょう。

この日本酒シェイクは、日本酒に馴染みのない層、特に若い世代にとって、日本酒に触れるきっかけともなるでしょう。シェイクという親しみやすい形で提供されることで、日本酒に対する敷居が下がり、「日本酒って意外と美味しいかも」「こんな楽しみ方があったんだ」という新たな発見をもたらすはずです。また、すでに日本酒を愛飲している人々にとっても、これまで経験したことのない新しい日本酒の顔を垣間見ることができる、エキサイティングな体験となるでしょう。

今回のコラボレーションは、単なる話題性だけでなく、日本酒業界全体に与える影響も大きいと考えられます。伝統に安住することなく、異業種との連携を通じて新たな価値を創造していく。この動きは、日本酒の可能性をさらに広げ、その魅力を世界に向けて発信する上で重要な一歩となるでしょう。

2025年8月1日、ミナモア広島店に登場する「Shake Shack広島×賀茂鶴コラボの日本酒シェイク」。この一杯が、広島から全国へ、そして世界へと、日本酒の新しい楽しみ方を提案する、まさに歴史的な一杯となることを期待せずにはいられません。

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日本酒とPodcastが織りなす新時代の晩酌革命:本家松浦酒造場の挑戦が示す「共に楽しむ」文化の開花

近年、私たちのライフスタイルは大きく変化し、特に「おうち時間」の充実が求められるようになりました。リモートワークの普及や、多様なエンターテインメントコンテンツの台頭により、自宅で過ごす時間は単なる休息の場から、自己表現や自己研鑽、そして何よりも「豊かな体験」を追求する場へと変貌を遂げています。このような社会の変化の中で、日本の伝統文化である日本酒の楽しみ方もまた、大きな転換期を迎えています。単に味わうだけでなく、物語や情報、そしてコミュニケーションを「共に楽しむ」という新たなスタイルが、今まさに花開こうとしているのです。

本家松浦酒造場の挑戦

この新時代の到来を象徴する出来事の一つが、創業200年の歴史を持つ本家松浦酒造場(徳島県鳴門市)が発表した【月巡り、酒巡り。】「毎月1本の限定酒×Podcastで晩酌革命」という新企画です。これは単なる新商品のリリースに留まらず、日本酒の消費体験そのものに革新をもたらす、意欲的なDX(デジタルトランスフォーメーション)への挑戦と言えるでしょう。

【月巡り、酒巡り。】の核となるのは、「毎月1本、その月だけの特別な一杯」を数量限定で提供するというコンセプトです。これは、単なる「飲む」という行為を超え、季節の移ろいやその時々の気分に合わせた「体験」を提案するものです。限定酒であるという希少性は、消費者の所有欲を満たし、その一杯が特別な意味を持つことを際立たせます。さらに、単なる美味しさだけでなく、特別仕様のラベルデザインにもこだわることで、五感で楽しむ日本酒体験を追求している点が特筆されます。これは、現代の消費者が求める「モノ」ではなく「コト」の消費、つまり体験価値の重視に他なりません。

そして、この限定酒をさらに魅力的に彩るのが、連動するPodcast番組「ナルトタイのちょっと語りタイ」の存在です。この音声コンテンツは、単に商品の説明をするだけでなく、お酒に込められた造り手の情熱や苦労、そしてその背景にある物語を深掘りします。なぜこの時期にこの酒なのか、どのような思いが込められているのか、そしてこの酒が最も輝く「ひと皿」は何か――これらの情報が造り手自身の言葉で語られることで、消費者は単に日本酒を味わうだけでなく、その「生い立ち」や「個性」を深く理解し、共感することができるようになるのです。

Podcastというメディアの選択もまた、現代のライフスタイルに合致した優れた戦略と言えるでしょう。視覚的な情報に溢れる現代において、音声コンテンツは耳から情報を得ることで、他の作業と並行して楽しむことが可能です。家事をしながら、あるいはリラックスした環境で、ゆったりと酒の物語に耳を傾ける。これは、かつての酒場での会話のように、知的好奇心と共感を刺激し、日本酒に対する愛着を深める新たな接点となります。ゲストを招いてのトークも予定されており、日本酒を軸としたコミュニティ形成にも寄与する可能性を秘めています。

「共に楽しむ」スタイルが示す日本酒の未来

この本家松浦酒造場の取り組みが示唆するのは、日本酒がもはや単なる飲料ではなく、豊かな暮らしを彩るための「コンテンツ」としての可能性を秘めているということです。日本酒を「共に楽しむ」スタイルとは、単に家族や友人と酌み交わす物理的な行為に限定されません。限定酒という希少性を「共に分かち合う」喜び、Podcastで語られる物語や情報を「共に学ぶ」喜び、そしてその情報に基づいて自分なりの楽しみ方を「共に創造する」喜びへと拡張されていくのです。

この流れは、日本酒業界全体のDXにも繋がるでしょう。デジタル技術を活用することで、酒蔵は消費者との新たな接点を生み出し、ブランドのファンを育成することができます。また、消費者の嗜好や行動データを分析することで、よりパーソナライズされた商品やサービスを提供する道も開かれるでしょう。

本家松浦酒造場の【月巡り、酒巡り。】は、単なる晩酌を「晩酌革命」へと昇華させる試みであり、日本酒が持つ計り知れない可能性を私たちに示してくれています。それは、日本酒を巡る物語を共有し、その価値を共に創造していく、まさに「共に楽しむ」新時代の幕開けを告げる号砲と言えるでしょう。この新たな挑戦が、日本酒文化の更なる発展と、私たちの日々の暮らしにおける豊かな体験の創出に、大きく貢献していくことに期待が寄せられます。

▶ 【月巡り、酒巡り。】(NARUTOTAI SHOP)

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地元グルメと日本酒の絶妙なペアリング~佐賀発「ミンチ天にがばいぃーよ」で広がる地酒の可能性

近年、日本酒の世界では「ペアリング」が注目を集めています。これまでワインと料理の相性を指す言葉として一般的だったペアリングは、今や日本酒にも広がりを見せ、料理との絶妙な組み合わせを楽しむ新しい文化として定着しつつあります。全国各地で、地域の食材や料理に合う日本酒が次々と誕生するなか、佐賀県からもユニークな取り組みが登場しました。

華々しく登場「ミンチ天にがばいぃーよ」

2025年7月26日、「ユニークなお酒との出会い 酒日向」から、「ミンチ天にがばいぃーよ」という日本酒が発売されました。このユニークな名称の日本酒は、佐賀のソウルフード「ミンチ天」にぴったり寄り添う味わいを目指して造られた純米酒です。地元で古くから親しまれてきたミンチ天とは、魚のすり身にミンチ肉と玉ねぎを加えて揚げた惣菜で、濃厚ながらも親しみやすい味が特徴です。

佐賀県といえば、つい先日も「SUSHIDA 辛口純米 七田」が登場し、日本酒ペアリングに新風を吹き込んだところです。「SUSHIDA」は、寿司に合う日本酒をコンセプトに開発され、全国の寿司ファンから喝采を浴びています。その流れを受けて、今度は地元のソウルフードへと一歩踏み込んだのです。

製造を担当したのは、佐賀県の老舗酒造「光武酒造場」です。味わいは、ミンチ天の濃い味わいに負けないしっかりとした旨味をもちつつも、脂をさっぱりと流してくれる後口の良さが特徴です。地元食材に合わせることで、日本酒の魅力をより引き立てる工夫がなされており、普段日本酒をあまり飲まない若い世代にも受け入れられやすいよう、ややライトな仕上がりとなっています。

地域文化と日本酒が生む新しい価値

このような動きは、単なる「日本酒の地域限定バージョン」とは異なり、地域文化と密接に結びついた「地酒の進化形」ともいえるものです。日本酒は長らく「格式高い伝統の酒」として認識されがちでしたが、近年ではよりカジュアルに、日々の食卓に寄り添う存在として再評価されています。ペアリングという視点から見ると、日本酒は地域の料理ともっとも相性の良い飲み物であり、そこにしかない魅力を育てる可能性を秘めているのです。

佐賀県のような地方から、こうした新しい提案が発信されることは、日本酒文化全体の活性化にもつながります。地元料理との組み合わせを通じて、新たなファン層の獲得や観光との連動も期待されるでしょう。今後も、各地の食文化と結びついた日本酒の取り組みから目が離せなくなりました。

▶ 「石鎚 純米 土用酒」が誘う、深まる日本酒ペアリングの愉しみ

▶ 「SUSHIDA 辛口純米 七田」とは

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夏酒の常識を覆す!『日本酒dancyu vol.2』好評発売中

7月26日、食のエンターテインメント雑誌『dancyu』の別冊『日本酒dancyu vol.2』が発売されました。2025年より「日本酒dancyu」として生まれ変わった第2号となる今号は、「夏酒」に焦点を当てた、dancyu誌上初の本格的な夏の日本酒特集です。

『dancyu』が日本酒業界に与えてきた影響

『dancyu』は、長年にわたり食文化を深く掘り下げ、特に日本酒特集は高い評価を得てきました。そして、多くの日本酒ファンにとって「バイブル」のような存在となり、日本酒業界全体に強い影響を与えてきたのです。

中でも特筆すべきは、日本酒の魅力を一般層に広く伝える役割を担ってきた点です。専門的な知識がなくても、写真の美しさや識者の解説、そしてなにより「食とのペアリング」に重きを置いた構成が、これまで日本酒に馴染みがなかった層にも興味を持たせるきっかけを作ってきました。多くの読者がdancyuをきっかけに日本酒の世界に足を踏み入れ、その奥深さに魅了されていきました。

また、『dancyu』は特定の銘柄や酒蔵のブレイクスルーにも大きく貢献してきました。誌面で取り上げられた酒蔵や銘柄は、一躍脚光を浴び、全国の酒販店や飲食店で品切れが相次ぐほどの人気を獲得することも少なくありませんでした。例えば、「而今」などの人気銘柄が今日の地位を確立する上でも、dancyuは大きな役割を果たしたと言われています。

さらに、日本酒の多様な楽しみ方を提案してきたことも、業界への大きな貢献です。単に「飲む」だけでなく、どのような料理と合わせるか、どのような器で飲むか、どのようなシチュエーションで楽しむかといった、ライフスタイルとしての日本酒を提示することで、日本酒文化の裾野を広げてきました。低アルコール酒や発泡性日本酒、熟成酒など、新たなトレンドが生まれるたびに、それをいち早く紹介し、消費者の理解を深める役割も担っています。

そして、『dancyu』の誌面は、酒販店や飲食店にとっても重要な情報源となっています。掲載された酒蔵や銘柄は、仕入れの参考にされたり、お客様への提案材料になったりすることで、日本酒市場の活性化に寄与してきました。データが詳しく書き込まれている点や、掲載された日本酒を販売する酒販店リストを毎号掲載している工夫も、読者の購買行動を後押しし、酒販店の売上にも貢献しています。

『日本酒dancyu vol.2』の特集概要

今回の『日本酒dancyu vol.2』のテーマは、「進化!の夏酒」。これまで夏酒といえば、ガス感があったり低アルコールだったりと、飲みやすさを全面に出したものが主流でしたが、今号では「ランクアップした“大人の夏酒”」に注目しています。

誌面では、造り手が自由な発想で翼を広げた、いわば「フリーダム」な日本酒たちが紹介されています。例えば、この夏初リリースの「光栄菊 Noon Crescent」は、酸を抑えながらドライに仕上げた一本で、酒販店で人気になっているといいます。また、「ヤマノコトブキ グッドタイムズサマーセッション」は、独自開発の泡沫(うたかた)発酵製法による軽快なガス感が特徴とされており、新たな夏酒の可能性を感じさせます。

さらに、近年注目を集める「菩提酛・水酛の酒」や「クラフトサケ」といったテーマも深掘りされています。菩提酛は奈良県の菩提山正暦寺にルーツを持つ伝統的な製法で、「みむろ杉 木桶菩提酛 山田錦」のように、低アルコールながら奥深い味わいを実現した銘柄が紹介されています。クラフトサケについても、日本酒の製法をベースにしつつ、米や米麹以外の原料を使用したり、新たな技術を取り入れたりした革新的なお酒に光を当てています。

「日本酒は、夏こそ旨い!」を掲げ、夏の食卓を豊かに彩る日本酒の多様な魅力を、美しい写真と詳細な解説で余すことなく伝えています。日本酒ファンはもちろんのこと、これまで夏酒にあまり関心がなかった層にも、新たな発見と驚きを提供してくれる一冊となるでしょう。

『日本酒dancyu vol.2』は、紙版が1,700円(税込)で、電子版も同時発売されています。日本酒の新たな楽しみ方を提案し続けるdancyuの最新刊は、夏の日本酒ライフをより一層充実させること間違いなしです。

▶ 『日本酒dancyu vol.2』紙版

▶ 日本酒dancyu vol.2(dancyu 2025年8月号別冊) [雑誌]【電子書籍】[ dancyu編集部 ]

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日本酒、深まる酩酊と情感:サブカルチャーが紡ぐ新たな物語

日本酒と聞くと、私たちはしばしば、その繊細な香りや奥深い味わいを想起します。米と水、そして杜氏の技が織りなす芸術品として、じっくりと吟味し、その多様な表情を楽しむのが一般的な嗜み方でしょう。しかし、現代において、日本酒は必ずしも「味わう」ことだけを目的とする存在ではありません。時には、純粋に「酔うための存在」として求められ、その酩酊が、私たちの魂を揺さぶり、深い感情的な体験へと誘うことがあります。

この現象は、特に日本酒がサブカルチャーと深く結びつき始めたことで顕著になっています。アニメ、ゲーム、VTuberといったジャンルのファンたちは、お酒を飲む行為そのものに、共通の情熱や推しへの愛情を重ね合わせます。彼らにとって、グラスの中の日本酒は、単なるアルコール飲料ではなく、共有された体験の触媒であり、時には自らを解き放ち、感情を揺さぶるための大切なツールとなるのです。酔いがまわるにつれて、会話は弾み、推しへの熱い思いが溢れ出し、共通の趣味を持つ仲間との絆がより一層深まる。日本酒は、まさに「魂を揺さぶる」存在として、彼らの心に寄り添っています。

そして、この感情的な結びつきを一層強固なものにするのが、コラボレーションによって生まれた特別なボトルデザインです。従来の日本酒のボトルは、伝統的な書体や紋様、シンプルな意匠が主流でした。しかし、サブカルチャーとの融合により、ボトルデザインは、愛されるキャラクターのイラストや作品の世界観を表現した、色彩豊かで魅力的なアートワークへと変貌を遂げています。

これらのデザインは、単なる容器に留まりません。ファンにとって、それはまるでフィギュアやぬいぐるみのように、「抱きしめることができる」存在となるのです。お酒を飲み干した後も、ボトルは捨てられることなく、コレクションの一部として大切に飾られます。棚に並んだコラボボトルは、手にするたびに、そのお酒を飲んだ時の高揚感、推しを応援した日々、そして仲間たちとの語らいの記憶を呼び起こします。一本一本のボトルが、その人だけの特別なエピソード、つまり「個人の物語を紡ぎだす」きっかけとなるのです。それは、推しとの出会いや成長、作品への深い共感、あるいは人生の節目を彩った思い出など、多岐にわたるでしょう。日本酒のボトルが、単なる消費財から、感情的な価値を持つパーソナルなアイテムへと昇華していくのです。

このように、日本酒はサブカルチャーと非常に馴染みやすい特性を持っています。その理由の一つは、日本酒がもともと持っていた「地域性」や「物語性」が、キャラクターや作品の持つ世界観と共鳴しやすい点にあります。特定の地域で生まれたお酒が、特定のキャラクターやストーリーと結びつくことで、より深く、多層的な魅力を帯びるのです。また、日本酒の多様な味わいや製造方法が、コラボレーションの幅を広げ、キャラクターの個性や作品の雰囲気を表現する上で、無限の可能性を提供します。

そして、この日本酒とサブカルチャーの密接な関係を象徴する最新のニュースが、今日7月27日まで予約受付して発売されるVTuberグループ『あおぎり高校』所属、春雨麗女さんのコラボ日本酒「純米吟醸 人生で起こることは全て酒を飲むための口実」です。彼女のデビュー2周年を記念して、福島県の奥の松酒造と共同開発されたこの日本酒は、ファンにとって「推し」との絆を深め、共に感動を分かち合うための特別な一本となるはずです。このコラボは、日本酒が単なる飲み物ではなく、感情を揺さぶり、物語を紡ぎ、そして「抱きしめることができる」存在へと進化を遂げていることを、何よりも雄弁に物語っています。

▶ あおぎり高校 春雨麗女コラボ日本酒「純米吟醸 人生で起こることは全て酒を飲むための口実」

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和酒フェス in 中目黒:猛暑を吹き飛ばす日本酒の新潮流と進化する楽しみ方

かつて日本の夏といえば、キンキンに冷えたビールが定番でした。30度を超えるような盛夏に、わざわざ日本酒を選ぶ人は少数派。熱燗はもちろんのこと、冷や酒でさえも「夏向きではない」という認識が一般的だったように思います。しかし、時代は変わり、日本酒の楽しみ方も多様化の一途を辿っています。そんな変革の象徴とも言えるイベント、「第28回 和酒フェス in 中目黒」が、熱気と活気に包まれて7月27日まで開催されています。

猛暑の中の熱狂

今年の夏の暑さは特に厳しく、フェス初日の今日も気温は35度に迫る猛暑日となりました。しかし、そんな中にもかかわらず、会場である中目黒GTタワー前広場には、開場前から長蛇の列ができていました。来場者の顔には汗が滲んでいましたが、その目には期待と興奮の色が宿っており、まさに「猛暑を吹き飛ばす熱気」といった様相を呈していました。この光景は、日本酒がもはや特定の季節に限定されるものではなく、一年を通して楽しめる飲み物として、幅広い層に浸透していることを如実に物語っていました。

スパークリングと酒ハイ、夏の主役に躍り出る

会場内では、全国各地から集まった個性豊かな蔵元が、自慢の銘酒を来場者に振る舞いました。その中でも特に注目を集めていたのが、スパークリング日本酒と酒ハイ(日本酒ハイボール)です。

スパークリング日本酒は、その繊細な泡立ちとフルーティーな香りが、夏の暑さに疲れた体を爽やかに癒してくれます。シャンパンやスパークリングワインのように乾杯酒としても楽しめることから、若者や女性を中心に高い人気を博しています。今回、「日本酒はちょっと苦手意識があったけれど、これなら飲みやすい!」といった声も多く聞かれ、新たな日本酒ファンを獲得するきっかけとなっているようでした。各ブースでは、微発泡からしっかりとした発泡感のあるものまで、多様なスパークリング日本酒が用意されており、来場者はそれぞれの好みに合わせて飲み比べを楽しんでいました。

そして、もう一つの主役は酒ハイ。ウィスキーや焼酎のイメージが強いハイボールですが、日本酒をソーダで割ることで、より軽やかで飲みやすいカクテルに変身します。日本酒本来の旨味や香りを損なうことなく、清涼感をプラスした酒ハイは、まさに夏の暑さにぴったりの選択肢でした。

酒ハイの可能性にいち早く着目し、その魅力を発信してきた宮城県の一ノ蔵も、酒ハイブースにボトルを並べていました。一ノ蔵は、2020年に「無鑑査本醸造辛口」をソーダで割る「無鑑査ハイボール」という新たな飲み方を提案し、長年愛されてきた定番商品に新たな光を当て、その復権に大きく貢献しました。この成功は、伝統ある日本酒に現代的なアレンジを加えることで、新たな需要を喚起できることを証明しました。今回の和酒フェスでも、レモンやライムなどの柑橘類を添えたりするなど、趣向を凝らした提案がされており、来場者はその多様性に驚きと喜びの声を上げていました。「日本酒はロックで飲むのが好きだったけど、酒ハイもアリだね!」「これなら何杯でも飲めちゃう」といった感想が飛び交い、夏の新しい定番ドリンクとしての可能性を強く感じさせました。

これらの新しい飲み方は、伝統的な日本酒のイメージを打ち破り、よりカジュアルでスタイリッシュな楽しみ方を提案するものです。これにより、日本酒は、ハレの日だけでなく、日常の様々なシーンに溶け込むことができる、親しみやすい存在へと進化を続けていると言えるでしょう。

和らぎ水がもたらす安心感と新たな関連商材の可能性

和酒フェスの会場で、もう一つ印象的だったのは、多くの来場者が「和らぎ水」を積極的に利用していたことです。和らぎ水とは、日本酒を飲む際に、合間に飲む水のこと。アルコールの分解を助け、悪酔いを防ぐ効果があると言われています。特に猛暑の中での飲酒は、熱中症のリスクも高まるため、和らぎ水の重要性は一層増します。

一部のブースでは、和らぎ水を意識したオリジナルのミネラルウォーターや、フレーバーウォーターが販売されており、これらも好評を博していました。和らぎ水を積極的に取り入れる文化は、日本酒をより安全に、そして長く楽しむための知恵として、徐々に浸透してきているようです。これにより、来場者は安心して日本酒を堪能し、イベントを心ゆくまで楽しむことができたでしょう。単なる飲酒イベントではなく、参加者の健康と安全にも配慮が行き届いている点が、和酒フェスの質の高さを物語っていました。

今回の和酒フェスのように、多くの人が集い、特定のテーマを深く掘り下げるイベントは、メインの商品だけでなく、「和らぎ水」のような付随する新たな関連商材を発掘する力にもなります。和らぎ水の重要性が認識されることで、高品質な水、携帯しやすいおしゃれなボトル、あるいは飲酒前後に摂取するサプリメントなど、周辺ビジネスの可能性も広がることは想像に難くありません。イベントが単なる消費の場に留まらず、新たな市場を生み出すきっかけとなり得ることを示唆しています。

日本酒文化のさらなる発展へ

今回の「第28回 和酒フェス in 中目黒」は、猛暑の中での開催ながらも、多くの来場者で賑わい、日本酒の新たな可能性を大いに感じさせるイベントとなっています。スパークリング日本酒や酒ハイといった新提案、そして和らぎ水への意識の高まりは、日本酒が時代とともに進化し、多様なニーズに応えようとしている姿を浮き彫りにしています。

かつて夏の酒の主役ではなかった日本酒が、今や真夏のイベントで大行列を作るほどの人気を博していることは、日本酒業界にとって大きな希望となるでしょう。これからも、伝統を守りつつも、革新的な取り組みを続けることで、日本酒は国内外でさらに多くのファンを獲得し、その文化を深化させていくに違いありません。

おいしい日本酒が見つかる最新トレンドと飲み方ガイド

世界が注目する「ロゼ酒」! 米「Food & Wine」が切り開く日本酒の新たな地平

ロゼワインの次なる潮流は日本酒? 米「Food & Wine」が報じる新動向

近年、世界のワインシーンで大きな潮流となっている「ロゼワイン」。その軽やかで美しい色合い、食事との幅広いペアリング、そして何よりもその洗練されたイメージは、特に若い世代や女性を中心に熱狂的な支持を集めています。そんな中、権威ある食とワインの専門誌、アメリカの「Food & Wine」誌がロゼワインに並び、あるいはそれを超える可能性を秘めた「ロゼ酒」の存在に注目しているというニュース(2025.6.17)は、日本の酒蔵にとって、そして世界の日本酒愛好家にとって、まさにエポックメイキングな出来事と言えるでしょう。

「Food & Wine」誌が報じる「ロゼ酒」とは、単に色がついている日本酒という範疇を超え、その醸造プロセスや、味わいの多様性、そして何よりも食との調和性において、ロゼワインが切り開いてきた領域に、日本酒が新たな光を当てる可能性を示唆しています。これまでの日本酒のイメージを刷新し、よりグローバルな食卓への浸透を加速させる、まさに「ニュースター」の誕生とも言えるでしょう。

日本の革新的な酒蔵が牽引する「ロゼ酒」の多様性

では、一体どのような日本酒が「ロゼ酒」として脚光を浴びているのでしょうか。同誌が特にピックアップしているのは、伝統的な日本酒の製法に、ある種の「遊び心」と「革新性」を加えることで生まれる、個性豊かなロゼ酒を手がける蔵元です。

その代表例として挙げられているのが、滝沢酒造(埼玉県)、塩川酒造(新潟県)、丸本酒造(岡山県)です。これらの酒造は、それぞれ異なるアプローチでロゼ酒の可能性を追求しています。

一つは、古代米の一種である「赤米」や「黒米」を使用する方法です。これらの米が持つ色素が、醸造過程で自然な美しいピンク色や赤みを帯びた色合いを日本酒にもたらします。赤米由来のロゼ酒は、その色合いだけでなく、通常の日本酒にはない独特の酸味と、米本来の優しい甘みが特徴で、食前酒としてはもちろん、アペリティフからメインディッシュまで、幅広い料理に寄り添う懐の深さを持っています。例えば、軽やかな和食はもちろんのこと、ハーブを効かせた鶏肉料理や、白身魚のカルパッチョなど、これまで日本酒とのペアリングが難しかった洋食との相性も抜群です。

また、もう一つの注目すべき潮流は、特定の酵母を使用することで自然なピンク色を引き出す手法です。これは、酒蔵の技術と探求心が詰まった、まさに「アート」とも言える領域です。これらの酵母は、発酵過程で赤色酵母などが生成する色素を日本酒に与え、それによって生まれるロゼ酒は、透明感のある淡いピンクから、少し濃いめのサーモンピンクまで、多様な色合いを見せます。味わいもまたバラエティに富み、フルーティーで華やかな香りと、きめ細やかな酸味が特徴のものや、米の旨味がしっかりと感じられる、ややドライなものまで、各蔵の個性が光ります。これらのロゼ酒は、例えばプロシュートやチーズといった前菜、さらには中華料理やエスニック料理といった、風味の強い料理とも見事なマリアージュを奏でてくれるのです。

「ロゼ酒」が拓く日本酒の新たな可能性

アメリカからの「Food & Wine」誌がこの「ロゼ酒」に注目する背景には、単なる見た目の美しさだけではありません。それは、日本酒が持つ本来のポテンシャル、すなわち「食事との調和性」が、ロゼワインのそれと同じく非常に高いという点を見抜いているからでしょう。ロゼワインがそうであるように、ロゼ酒もまた、特定の料理に限定されることなく、和食、洋食、中華、エスニックといったあらゆるジャンルの料理を受け止める、驚くべき汎用性を持っています。これにより、これまで日本酒に馴染みがなかった層、特にワイン愛好家や海外の消費者に対しても、日本酒の新たな魅力を効果的にアピールできる可能性を秘めているのです。

さらに、ロゼ酒の登場は、日本酒の消費シーンを多様化させることにも貢献するでしょう。これまでの日本酒は、どちらかというと「和食と共に」「特別な席で」といったイメージが強かったかもしれません。しかし、ロゼ酒の持つ軽やかでスタイリッシュなイメージは、カジュアルなホームパーティーや、友人とのブランチ、さらにはアウトドアシーンなど、より日常的で多様な場面での日本酒の楽しみ方を提案してくれます。ワイングラスに注がれた美しいロゼ色の日本酒は、それだけで会話のきっかけとなり、場の雰囲気を華やかに彩ります。

日本酒の未来を担う「ロゼ酒」への期待

アメリカからの「Food & Wine」誌の報道は、単なるトレンドの紹介に留まらず、日本酒が世界市場で新たな地位を確立するための重要なヒントを与えてくれたと言えるでしょう。滝沢酒造、塩川酒造、丸本酒造をはじめとする各酒蔵が、それぞれの個性と技術を活かし、多様な「ロゼ酒」を生み出すことで、日本酒はさらにその裾野を広げ、従来の日本酒のイメージを刷新し、若年層や海外の消費者にアピールする「戦略的な役割」を担うでしょう。国際的な食のトレンドに呼応し、多様な食文化に寄り添うロゼ酒は、まさに日本酒がグローバル市場でさらなる成功を収めるための強力な「一手」となるはずです。

▶ 世界的日本酒コンクールでトロフィーを獲得した滝沢酒造のロゼ酒「菊泉 ひとすじ ロゼ」

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