シャンパンファイトに変わるか『AWA SAKE』~ドジャースとともに闘う八海山

新潟県南魚沼市の老舗蔵「八海醸造」は、メジャーリーグ・ロサンゼルス・ドジャースのリーグ優勝を記念した限定ボトル「八海山 ドジャース リーグチャンピオン記念ボトル」を発表しました。球団公式パートナーとして契約を結ぶ同社が、優勝の節目に合わせて記念酒をリリースするのは初の試みです。すでにアメリカ国内のファンや日本の野球ファンの間で話題となり、単なる限定酒にとどまらず、『日本酒が世界の祝祭に登場する瞬間』として注目を集めています。

日本酒をメジャーに導く八海山

八海山は、長年にわたり「淡麗辛口」を象徴する銘柄として国内外にファンを持つ蔵です。清冽な南魚沼の水と精緻な温度管理によるキレのある味わいは、アメリカ市場でも『HAKKAISAN』ブランドとして定着し、寿司店や高級レストランなどで高い評価を得ています。

今回の記念ボトルは、そうした国際展開の延長線上にあります。ドジャースという世界的チームとのコラボレーションは、日本酒がもはや「輸出される伝統産品」ではなく、「文化を共有する象徴的存在」へと進化していることを示しています。

スポーツという喜びを共有する舞台で日本酒が祝杯の中心に登場することは、文化的にも極めて意義深いことです。長年、勝利や祝福の瞬間にはシャンパンが定番とされてきましたが、そこに日本酒が並び立つ姿は、日本文化の新たな国際的地位を象徴します。特に八海山には、シャンパンを標榜する『AWA SAKE』があり、その清らかな酒質は、スポーツの美学にもよく似合うと思われます。

近年、日本酒の海外展開は「飲まれる」から「語られる」段階へと変化しています。八海山のような蔵が、スポーツや文化イベントと連動する動きを見せるのは、単なる販売促進ではなく、「体験価値」を生み出す戦略といえます。

ドジャースとの提携によって、八海山は国際的なブランドとしての存在感を強化しつつあります。これは他の酒蔵にとっても大きな刺激となるでしょう。音楽・映画・アートなど、異業種とのコラボレーションによる文化発信が今後さらに広がれば、日本酒が『文化資産』として世界の舞台に定着する可能性が高まります。

ワールドチャンピオンの瞬間には『AWA SAKE ファイト』を

今回のリーグ優勝記念ボトルの発売は、八海山が次のステージを見据えていることを示しています。現時点でこれほど話題性のある限定品を打ち出してきたことからも、もしドジャースがワールドチャンピオンに輝いた暁には、さらなる特別企画が待っているのではないかと期待されます。

そして、その瞬間には、シャンパンファイトならぬ「八海山 AWA SAKE ファイト」を見たい——そう願うファンも少なくないでしょう。八海山のスパークリング日本酒「あわ 八海山(AWA SAKE)」は、細やかな泡と上品な香りで、まさに祝杯にふさわしい一本です。もしその AWA SAKE がロッカールームで勢いよく開栓され、勝利の喜びを共有する姿が見られたなら、それは日本酒文化が世界に完全に受け入れられた瞬間になるはずです。


日本酒が国境を越え、祝祭の象徴となる未来。その先頭を走るのが八海山であり、今回のドジャース優勝記念ボトルはその道を切り拓く第一歩です。次なる舞台は、ワールドシリーズの頂点。もし再び八海山が勝利の瞬間を彩ることになれば、日本酒の新たな歴史が、世界の歓声とともに刻まれることになるかもしれません。

▶ 「美味しいお酒」が「SAKE」に! 大谷翔平選手MVPインタビュー通訳が生んだ日本酒への熱視線

▶ 日本酒をメジャーに導く、ドジャース公式日本酒「特別本醸造 八海山 ブルーボトル」

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女性審査員が選ぶ美酒コンクール2025『吟天 龍王』が日本酒界の頂点に

今年3回目を迎えた『第3回 美酒コンクール 2025』の審査概要および結果が公表され、「吟天 龍王」(小田切商事株式会社/兵庫県)が、最高賞である「美酒 of the Year 2025」に輝きました。主催の 一般社団法人『日本のSAKEとWINEを愛する女性の会』は、「香り・味わい」という感性を切り口に、女性審査員のみで審査を行う新しい日本酒コンクールとして注目を集めています。

▶ 『女性審査員による日本酒コンクール』ホームページ

今回、国内外から127社293アイテムが出品され、審査員数も海外からの参加者を含め165名に及びました。審査方式も一般的な「特定名称」別ではなく、香りと味わいの特徴に応じて分類された全6部門(フルーティー/ライト&ドライ/リッチ&旨味/エイジド<熟成酒>/スパークリング/ロウ・アルコール)で構成され、酒類資格を保有する『正規審査員』と、一般女性の『アマチュア審査員』の両輪でブラインド・テイスティング形式の評価が行われました。

本コンクールが掲げる三つの理念――「日本の伝統文化の継承」「地域経済の活性化」「女性が活躍する社会の実現」――もあわせて強く打ち出され、特に女性審査員による審査という構造が、これまで日本酒コンクールであまり見られなかった女性の感性を活かした評価基準を提示しており、新たな価値づくりの場となっています。

今回「美酒 of the Year 2025」に選定された『吟天 龍王』は、エイジド(熟成)部門の金賞受賞酒でもあり、熟成という時間を経た酒の深み、香味の重層性、果実的なアロマとコクのバランスなどが、女性審査員の評価軸と好相性を示した結果と言えるでしょう。

今後このコンクールを展望すると、香味を起点とした部門構成によって「自分好みの味わいを選ぶ」消費者動線の構築が進む可能性があります。蔵元にとっても、女性審査員のコメントやアマチュア消費者の意見をマーケティングに活かす機会が増えており、酒造りのブランディングや流通展開にも新たなヒントをもたらしています。たとえば、銘柄ラベルに香味部門を明示することで、消費者にとって敷居の低い選びやすい日本酒となる可能性が開けてきています。

まとめると、第3回となる今回の美酒コンクールは、出品数・審査員数ともに規模を固めつつ、従来の枠を超えた女性審査・香味別部門という切り口で日本酒ジャンルに新風を吹き込みました。そして、その最高賞に選ばれた『吟天 龍王』の受賞は、熟成日本酒の魅力が改めて女性の審美眼によって讃えられた象徴とも言えます。今後、全国各地の蔵元がこの評価制度を刺激源とし、より多彩な味わいを表現していくことが期待されます。

美酒 of the Year 2025
(エイジド部門)吟天 龍王小田切商事兵庫県
TOP OF THE BEST
フルーティー部門作 槐山一滴水清水清三郎商店三重県
ライト&ドライ部門赤城山 本醸造辛口生貯蔵酒近藤酒造群馬県
リッチ&ウマミ部門萬歳楽 石川門 純米 小堀酒造店石川県
エイジド部門夢乃寒梅 古酒 2000鶴見酒造愛知県
スパークリング部門琵琶のささ浪リンゴ印スパークリング麻原酒造埼玉県
ロウ・アルコール部門賀茂泉酒造 COKUN賀茂泉酒造広島県
特別賞
ソムリエ賞CatskillsBrooklyn Kuraアメリカ
客室乗務員/CA賞天賦 純米吟醸西酒造鹿児島県
アマチュア賞越乃雪椿 Grand-Cuvée 純米大吟醸原酒雪椿酒造新潟県
ラベル賞吟天 花龍小田切商事兵庫県

▶ 大吟醸も純米酒も同じ土俵で――美酒コンクール2025の入選酒発表を受けて

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「美味しいお酒」が「SAKE」に! 大谷翔平選手MVPインタビュー通訳が生んだ日本酒への熱視線

ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が、ナ・リーグ優勝決定シリーズの最優秀選手(MVP)に輝いた後のインタビューで、通訳のウィル・アイアトン氏が発した「SAKE」という言葉が大きな話題を呼んでいます。大谷選手が「今日は美味しいお酒を飲んでください」とファンへ向けたメッセージを、アイアトン通訳は「SAKE」と直訳に近い形で伝達。この瞬間に、球場は一層の歓声に包まれました。この粋な計らいは、単なる通訳を超えた文化の発信として、世界中の人々に「SAKE(日本酒)」という言葉を印象づけました。

ドジャースと八海醸造のタッグが追い風に

この「SAKE」の背景には、ドジャースと八海醸造(新潟県南魚沼市)が結んでいる契約があります。八海醸造は、今年からドジャースとパートナーシップ契約を締結し、ドジャースタジアム内で日本酒を提供するなど、積極的なブランド展開を行っています。

大谷選手という世界的スターのメッセージと、それに乗じたアイアトン通訳の「SAKE」という言葉が、この八海醸造の取り組みと相まって、日本酒の存在感を飛躍的に高めました。これは、日米のトップスポーツチームと老舗酒蔵という異業種間の連携が、文化交流という形で実を結んだ好例と言えるでしょう。

日本酒業界への計り知れない影響

今回の出来事が日本酒業界に与える影響は、非常に大きいと考察されます。

【国際的な認知度の向上】

「SAKE」というシンプルな単語が、MVPという輝かしい舞台で、大谷選手という影響力を持つ人物を通じて発信されたことで、英語圏における日本酒の認知度が格段に向上しました。これにより、「SAKE=美味しいお酒」というイメージが、これまで日本酒に馴染みのなかった層にも広く浸透することが期待されます。

【消費拡大への期待】

特にアメリカでは、若者を中心に健康志向が高まっており、日本酒が持つ「グルテンフリー」や「天然の醸造酒」といった特性が、新たな消費層を開拓する強力なフックとなり得ます。ドジャースタジアムという「ハレの場」での提供実績が相まって、アメリカ国内での日本酒の販売拡大に直結する可能性を秘めています。

【プレミアム化とブランド価値の向上】

八海醸造のような、すでに国際的に評価の高い酒蔵だけでなく、他の日本酒ブランドにとっても、今回の出来事はブランド価値向上のチャンスです。スポーツと結びつくことで、日本酒が「洗練された」「セレブが楽しむ」といったポジティブなイメージをまとい、プレミアムなアルコール飲料としての地位を確立する大きな一歩となるでしょう。

ワールドシリーズ制覇で熱狂は最高潮へ

さらに、ドジャースがこの勢いでワールドシリーズを制覇すれば、日本酒への注目度は最高潮に達するでしょう。大谷選手が再びMVPなどの栄誉に輝く場面や、優勝後の祝賀ムードの中で、日本酒がメディアに露出する機会が増えることは間違いありません。

「世界一のチーム」と「公式SAKEパートナー」という強固な結びつきは、日本酒を「勝利の美酒」として世界に印象づけます。この「勝利」というイメージは、日本酒のブランド力をさらに高め、特にアメリカをはじめとする海外輸出に決定的な追い風となります。日本酒業界は、この歴史的な瞬間を、グローバル市場での飛躍につなげる絶好の機会と捉えるべきでしょう。


大谷選手の偉業と、通訳の機知に富んだ「SAKE」という一言は、八海醸造とのパートナーシップを基盤に、日本酒を世界的なアルコール飲料へと押し上げる起爆剤となりそうです。そして、ワールドシリーズ制覇という快挙が実現すれば、その熱狂は一過性のものでは終わらず、日本酒を「クールな日本文化」の象徴として世界に定着させるでしょう。この波を最大限に活かし、日本酒業界全体がグローバルな展開を加速させることが、今後ますます重要になってくるはずです。「美味しいお酒=SAKE」が世界の共通語となる日も、そう遠くないかもしれません。

▶ 日本酒をメジャーに導く、ドジャース公式日本酒「特別本醸造 八海山 ブルーボトル」

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月桂冠『アルゴ』グッドデザイン賞受賞|若者に響く革新で日本酒離れに挑む

月桂冠株式会社(本社:京都市伏見区)が開発したアルコール度数5%の日本酒「アルゴ」が、2025年度グッドデザイン賞を受賞しました。従来の日本酒のイメージを刷新する革新的な商品として、デザイン性と飲みやすさの両面から高く評価されました。

「アルゴ」は、ギリシャ神話に登場する伝説の船「アルゴー号(Argo)」にちなみ、新しい価値の探求から生まれた商品です。爽やかでフルーティな味わいを特徴とし、平日にも気軽に楽しめる日本酒として開発されました。一般的な日本酒のアルコール度数が15%前後であるのに対し、「アルゴ」はその約3分の1。これにより、飲酒のハードルを下げ、若年層やライトユーザーにも親しみやすい商品となっています。

日本酒離れに立ち向かう革新の一手

近年、日本酒業界では若者離れや消費量の減少が深刻な課題となっています。伝統的な酒造りの技術や文化が継承される一方で、現代のライフスタイルや嗜好に合った新たな提案が求められてきました。そうした中で「アルゴ」は、低アルコールという切り口と洗練されたデザインによって、これまで日本酒に馴染みのなかった層へのアプローチを可能にしています。

月桂冠の調査によれば、日本酒は週末に飲まれる傾向が強く、平日の需要は限定的でした。一方で、低アルコール市場は近年急速に拡大しており、ビールやチューハイに加え、日本酒にもその波が押し寄せています。「アルゴ」は、こうした市場の変化に応える形で誕生した製品であり、同社の挑戦的な姿勢がうかがえます。

デザインと味わいで新たな層へ

グッドデザイン賞の審査員は、「非炭酸でアルコール度数5%という新しい日本酒の提案」「ネーミングと数字の“5”による直感的な訴求」「青を基調とした軽やかで上質なパッケージデザイン」などを高く評価しました。これらの要素が相乗的に機能し、従来の日本酒に対する敷居の高さを感じていた層にもアプローチできる点が受賞の決め手となりました。

業界への影響も大きいと考えられます。「アルゴ」のような低アルコール・高デザイン性の商品は、新たな顧客層の開拓につながる可能性があります。また、グッドデザイン賞の受賞は、酒類業界におけるデザインの重要性を再認識させる契機ともなり得ます。

さらに、「アルゴ」は食品ヒット賞にも選ばれており、その商品力と市場での評価は確かなものです。スパークリングタイプや缶入りなど、ラインアップの拡充もあり、日本酒の新しい楽しみ方を提案する存在として注目が集まっています。

月桂冠の「アルゴ」は、単なる新商品にとどまらず、日本酒の未来を切り拓く一歩となるかもしれません。伝統と革新が融合したこの一杯が、より多くの人々の暮らしに寄り添うことを期待したいところです。

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白鶴、「HAKUTSURU SAKE CRAFT No.12」発売 ― 大手酒造が挑む“小ロット時代”の象徴に

白鶴酒造株式会社(神戸市)は、同社のマイクロブルワリー「HAKUTSURU SAKE CRAFT」で醸造した新作酒「HAKUTSURU SAKE CRAFT No.12」を10月4日より白鶴酒造資料館で数量限定(219本)販売しました。大手酒造が自社内であえて小ロットの実験的な酒造りを行う試みとして、業界関係者の注目を集めています。

「HAKUTSURU SAKE CRAFT」は、2024年に始動した白鶴の小規模醸造プロジェクトです。酒造資料館の一角に設けられたガラス張りのミニ蔵で、来場者が発酵や搾りなどの工程を間近に見ることができます。従来の大量生産では試みづらい、酵母や発酵条件の違いによる新たな香味表現に挑む場として設計されました。

今回の「No.12」は、ワイン酵母と日本酒酵母を掛け合わせた白鶴独自の改良酵母(Hi-EtCap434、Hi-TRP475)を用い、マスカットのような果実香と穏やかな酸味を特徴とする純米酒。オリジナル酒米「白鶴錦」を100%使用し、精米歩合50%、アルコール度数12%。価格は720mlで税込6,600円と高価格帯に位置づけられています。

大手が小さく造る意味

大手酒造の主戦場はこれまで、安定した品質と供給量を求められる全国流通市場でした。しかし、消費者の嗜好が多様化し、特定の地域やスタイル、香味個性を求める声が高まる中で、「一つの味で全国をカバーする」時代は過ぎつつあります。

白鶴がマイクロブルワリーを立ち上げた背景には、そうした変化への対応力を磨く意図がうかがえます。大量生産のノウハウを持つ大手こそ、小規模で柔軟な開発力を内包する必要がある――「HAKUTSURU SAKE CRAFT」は、その象徴的な一歩といえます。

業界では近年、月桂冠や宝酒造など他の大手メーカーも限定醸造やコラボ製品を相次いで展開しており、かつて“実験的な挑戦”が地酒蔵の専売特許だった時代から、明確な潮流の変化が見て取れます。

多様性がもたらす広がりと課題

今回の「No.12」は、香りと味わいの新境地を示すだけでなく、日本酒の「多様性」を正面から捉える試みでもあります。
マスカットや白ワインを思わせる酸味の効いた味わいは、従来の清酒とは異なる層――特に若年層やワインユーザーを意識したアプローチとも言えます。

日本酒市場は人口減少と嗜好の分散によって縮小傾向にありますが、同時に「クラフト日本酒」「低アルコール」「ボタニカル日本酒」など、新しいカテゴリが次々と登場。多様性はもはや一時的な流行ではなく、業界の生存戦略として無視できないものになっています。

白鶴のような大手がその多様化を自らの手で体現することは、業界にとって大きな意味を持ちます。品質管理力や資本力を備えた企業が、小規模ながら挑戦的な製品を市場に出すことで、消費者側も「新しい日本酒」への関心を高めやすくなるからです。

“変化に応える軽さ”こそ、次代の鍵

今回のプロジェクトで注目すべきは、白鶴が自社の巨大生産体制の一角に“軽やかな醸造部門”を組み込んだ点です。変化を恐れず、企画から醸造、販売まで短期間で回せる仕組みを作ったことが、従来の大手モデルとの最大の違いといえます。

市場の動きが早まる中、変化に対応できる「軽快さ」は、日本酒業界全体の課題です。地方蔵では柔軟な発想が強みとなる一方、大手は組織の大きさゆえに動きが鈍くなりがちでした。白鶴の挑戦は、その構造的課題を突破する試みとして注目されます。

「HAKUTSURU SAKE CRAFT No.12」は、単なる新商品ではなく、大手酒造が自ら“変化の装置”を内製化した象徴的なプロジェクトです。
日本酒の多様性を受け止め、実験的な小ロット生産を通じて次代の味を探る姿勢は、今後の業界に新しい風を吹き込むでしょう。

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超硬水と超軟水で醸す日本酒セット『浅間嶽 阿吽』誕生——“水の個性”を味わう新たな挑戦

10月11日土曜日、長野県小諸市の酒蔵「大塚酒造株式会社」 が、超硬水と超軟水という対極の水質で醸した日本酒セット『浅間嶽 阿吽』の予約販売を、クラウドファンディング方式で開始すると発表しました。水という要素を対比させたコンセプトを掲げる日本酒としては、非常に異例の試みといえます。

水の違いを打ち出す意義と背景

日本酒の約八割を占める仕込み水。多くの酒造は、水の清らかさ、湧水地、軟水・硬水の良さなどを宣伝文句として掲げています。しかし、それはあくまで「この水は優れている」という訴求が中心であり、異なる水を意図的に使い分け、その違いを飲み手に体験させる商品は極めて少ないのが現実です。

大塚酒造が今回のプロジェクトで明確に打ち出したのは、「超硬水での酒」と「超軟水での酒」という対照ペア。双方とも同じ原料米、同じ精米歩合、同じ酵母、同じ酒造という前提ながら、仕込み水を変えるだけでどう変化するかを飲み比べられるという設計になっています。これは、水質を実験的に可視化するような商品とも言えるでしょう。

小諸市は、浅間山を含む地域が長年かけてろ過を続けた地層を通して湧き出る水により、超硬水から超軟水までバリエーションある湧水群 を擁している地域とされています。その恵まれた水資源を、「飲み比べ」という体験型商品に昇華させるという点で、このプロジェクトは、水そのものを“商品軸”に据える野心的なものです。

二水源使いの異例さ

酒造りにおいて最も安定を求められるもののひとつが、仕込み水の品質と供給体制です。多くの酒造は、一つの水源に依拠して年間を通じて安定した条件を確保し、発酵プロセスを再現可能にすることを重視します。異なる水を使うということは、発酵速度、温度管理、酵母の挙動など多くの変数が増え、醸造管理が複雑になります。

その点を理解したうえで、大塚酒造はあえて「二つの水源」を使う道を選びました。浅間山近傍の硬度の高い伏流水(通常の「浅間嶽」ブランドでも用いられてきた水源)を「超硬水」側に採用し、また別の軟水寄りの湧水を「超軟水」側に据えることで、水質そのものの差異を明示的に表現しようという意図です。

このように、醸造変数を敢えて揺らす構造を採る蔵は極めて限定されており、技術と胆力が求められる挑戦とも言えます。中には、仕込み水をアッサンブラージュする先駆的取り組みを行っている市野屋(長野県大町市)のような酒造もありますが、「対比構造」による今回のような商品化は、極めて珍しいと言えます。

今回、「水の違いで飲み比べる」商品が登場したことは、日本酒の価値観を揺さぶる可能性があります。これまで「この水がいい」「この水源が清らかだ」という抽象的な訴求はありましたが、水質の違いを飲み手に体感させるフェーズには至っていなかったからです。

これはまた、地方酒蔵や水資源を抱える地域にとって、“水をストーリー資源化する”手法として参考になるモデルになり得ます。水源保全・管理といったインフラ課題を抱える地域こそ、水の魅力を可視化できれば、観光や地域振興と結びつけやすくなるでしょう。

また、醸造技術の面でも、異なる水質に対応する酒造の醸造ノウハウが蓄積されれば、新たなスタイルの日本酒づくりへの展開も期待できます。たとえば、今後「三種水飲み比べ」「地域複数水源ミックス酒」などの拡張も考えられます。こうなると、日本酒を通じてさまざまなコラボが促進されるかもしれません。

ただし、リスクもあります。温度管理、発酵進行の差異、酵母ストレスなど技術的困難に直面する可能性は高く、計画通りの熟成安定性を得られないケースも想定されます。加えて、飲み手に“水の違い”を明確に感じてもらうストーリーテリングと解説が不可欠で、マーケティングの力も問われます。


大塚酒造が手がける『浅間嶽 阿吽』は、水を味わいの主役へと昇華させた挑戦です。クラウドファンディングという形式も、単なる販路ではなく、地域と飲み手をつなぐコミュニケーション手段として機能しようとしています。

水という目に見えにくい要素を、飲み比べという体験に変えるこの試みが成功すれば、日本酒産業の価値観を刷新する起点となるかもしれません。飲む人が「この水はこういう風に効いているのだな」と感じられる対話型の酒。それが『浅間嶽 阿吽』という物語なのです。

▶ 小諸の水源から生まれた奇跡 超硬水と超軟水で醸す日本酒セット『浅間嶽 阿吽』

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月桂冠「炭酸割りでおいしい純米酒」が通年販売へ 1.8Lパックで広がる“酒ハイ文化”の定着

月桂冠株式会社(京都市伏見区)が今年3月に発売した「炭酸割りでおいしい純米酒」がこの秋、通年販売となりました。発売当初は春から夏にかけての期間限定商品という設定でしたが、想定を上回る販売実績とリピート購入の多さを受け、年間を通じて提供されることとなったのです。日本酒を炭酸で割る“酒ハイ(SAKE HIGH)”が、いよいよ一過性のブームを超え、飲酒文化として根づきつつあることを示す動きです。

炭酸で引き立つ旨み 家庭で手軽に“日本酒ハイボール”

「炭酸割りでおいしい純米酒」は、炭酸で割ることを前提に設計された純米酒です。米の旨みや香りをしっかり残しながら、炭酸を加えることで軽やかで爽快な口当たりを実現しています。アルコール度数はやや低めで、氷を入れたグラスに注ぎ、炭酸水で1:1に割ると、刺激のあるすっきりとした“日本酒ハイボール”が完成します。特に夏場は冷たく爽やかに、寒くなれば柚子や生姜を加えるなど、季節に合わせてアレンジを楽しむこともできます。

同商品は1.8リットルの紙パックで販売されており、軽量で冷蔵庫にも収まりやすく、保存や注ぎやすさに優れた形態です。パック酒というと、「晩酌用にコスパ重視」といったイメージがありましたが、この商品は「自由にアレンジできるベース酒」としての新しい価値を提案しています。炭酸水やレモン、ハーブなどを加えた自分好みの味付けを楽しめ、自宅での「おうち酒ハイ」を楽しむユーザーが増えているようです。

“酒ハイ”がファッションから文化へ

“酒ハイ”という飲み方は、焼酎ハイボールやウイスキーハイボールの流行に続く形で広まりました。当初は「SNS映えする新しい日本酒の飲み方」として注目されていましたが、現在ではすっかり定番化。アルコール度数を自分で調整できること、炭酸による飲みやすさ、料理との相性の良さなどが支持され、幅広い世代に浸透しています。

そのような中、1.8Lパックの当商品が通年商品に移行したということは、酒ハイが一時的なファッションではなく、日常の飲酒文化として根づいた証ともいえます。

日本酒の未来を変える“日常化”の流れ

これまで日本酒は“特別な日に飲む酒”という印象が強くありましたが、近年はスパークリング日本酒や氷専用酒など、よりカジュアルな方向へと進化しています。月桂冠の「炭酸割りでおいしい純米酒」は、その流れの中心にある商品です。伝統的な清酒の枠を守りつつ、現代のライフスタイルに合わせた提案を行うことで、新しい層を取り込み、日本酒の裾野を広げています。

“酒ハイ”がファッションを超え、文化として定着する今、1.8Lパックの純米酒を手に取る姿は、もはや「庶民的」ではなく「時代のスタンダード」といえるかもしれません。炭酸割りというシンプルな発想が、古くて新しい日本酒の魅力を再発見させているのです。

▶ 意外な組み合わせがトレンドに!日本酒ハイボールが拓く和酒の新境地

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SHUWAN、意匠登録を取得~五感に響く“体験型酒器”の誕生

酒器「SHUWAN」を展開する株式会社シュワン(福岡市)は、同ブランドの酒器デザインが日本国特許庁より意匠登録を正式に認定されたと発表しました。日本酒業界では、酒そのものの多様化が進む一方で、それを受け止める酒器の進化にも注目が集まっています。今回の登録は、SHUWANが単なるデザイン性の高い器ではなく、“体験としての酒器”を志向していることを象徴する出来事です。

「香り」中心の酒器から“五感”に響く体験へ

ここ数年、日本酒専用グラスの開発は「香り」を最大限に引き出すことに焦点が当てられてきました。リーデルや木本硝子の専用グラスに見るように、香りの拡散性を高めるチューリップ型の酒器がその代表です。これらは、ワイングラスの文脈を日本酒に応用した“香りの可視化”を目的としていました。

しかし、SHUWANが提示したのは、その一歩先を行く「五感に訴える酒器」という新たな方向性です。
形状は、口縁から胴張り部にかけて柔らかく広がり、高台に向かって絞り込む流線形。上から見ると円形と楕円形が交錯する独特のフォルムをもち、手に取った瞬間の“触感”や“重量バランス”までもが設計に織り込まれています。

この曲線がもたらす香りの対流や温度変化は科学的にも検証されており、ガスクロマトグラフィー分析によって、従来の猪口やワイングラスよりも香気成分の安定性と拡散性が優れていることが報告されています。香りだけでなく、視覚・触覚・温度感覚までを統合的に演出する――まさに“飲む”という動作そのものを体験化した酒器といえます。

今回の意匠登録は、こうしたSHUWAN独自のフォルムと機能性が「創作性と新規性をもつもの」として公的に認められたことを意味します。外観の模倣を防ぎ、ブランドの知的財産を守る基盤を得たことに加え、今後の製品展開やライセンス戦略の強力な支えにもなります。酒器が「工芸」から「デザイン知財」へと昇華する流れを示した点でも意義深いといえるでしょう。

みむろ杉とのコラボなどに見る新しい酒器の未来

SHUWANはまた、奈良の今西酒造が手がける人気ブランド「みむろ杉」とのコラボレーションを発表しています。これは、酒器ブランドが単に器を提供するのではなく、“酒そのものの世界観を共に構築する”という新しいアプローチです。
香りや味わいを受け止める「器」ではなく、酒造と共に“体験の設計者”として関わる姿勢は、これまでの酒器業界には見られなかったものです。みむろ杉の透明感ある旨味と、SHUWANの柔らかな香気表現は、共振するようにして飲み手の感覚を刺激します。

酒器がもたらす“新しい日本酒体験”

意匠登録によって保護された独創的デザイン、科学的裏付けを持つ香り設計、そして酒蔵との協働――SHUWANが描く未来は、日本酒を「味わう」から「感じる」文化へと進化させることにあります。

これまで香り中心に設計されてきた酒器の世界に、触れる、見る、聴く、香る、味わう――そのすべてを統合した体験価値を持ち込むことは、日本酒文化の拡張でもあります。

SHUWANの挑戦は、酒器という小さな器の中に、五感と知性、伝統と革新をどう共存させるかという、日本酒の未来を映す実験でもあるのです。

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静岡の地酒『からっ風会』オリジナル酒が今年も登場|花の舞酒造と地域酒販店が日本酒の日に届ける伝統の味

静岡県内の酒販店で組織する「からっ風会」が、1989年から継続して取り組んでいるオリジナル日本酒の販売が、今年も10月1日の「日本酒の日」に合わせて始まります。この日本酒は、県内を代表する蔵元である花の舞酒造に醸造を依頼し、地域酒販店が自らの発意と責任を持って企画するもので、すでに三十年以上の歴史を刻んでいます。

「からっ風会」は、静岡県西部を中心とした酒販店の有志が集まり、日本酒の魅力を広めるとともに、地域の消費者と地元酒をつなぐことを目的として発足しました。会の名称は、冬に吹き荒れる遠州のからっ風に由来し、厳しい風土を逆に力強さへと転じる象徴として掲げられています。その精神は、日本酒の販売を単なる商取引にとどめず、文化的・地域的なつながりとして育んでいこうという思いに根ざしています。

花の舞酒造は、静岡県浜松市に本拠を構える老舗の酒蔵で、地元産米と天竜川水系の伏流水を生かした酒造りで知られています。全国的にも「地酒」ブームが起こる以前から、地域性を重んじた醸造姿勢を守り続けてきた蔵であり、からっ風会との協働はまさに「地元と共に歩む酒造り」の象徴といえます。

この取り組みの大きな意義は、酒販店が主導するという点にあります。一般的に新商品の企画や販売戦略は蔵元が中心となりますが、からっ風会では「売り手」である酒販店自らが発案し、顧客の声を直接反映させています。地域の消費者と最も近い距離にいる小売店だからこそ、求められる味わいやスタイルを的確に把握できるのです。そのため、この日本酒は毎年「消費者目線」を強く意識した味わいに仕上げられ、購入者からの支持も長年にわたって安定しています。

また、酒販店が主体となることは、販売意欲の向上にも直結します。自らが関わった商品であれば、ただの仕入れ品ではなく、自店の看板商品として積極的に紹介したいという思いが自然と芽生えます。こうした主体性が、酒販店と消費者の関係性をより強固にし、地域市場に根ざした日本酒文化を支えてきました。

さらに、こうした取り組みは、酒蔵と酒販店が対等な立場で協力する新しい関係性のモデルともいえます。日本酒業界では、かつて酒販店が蔵元に完全に依存する構造が主流でした。しかし流通の自由化や消費者嗜好の多様化が進む中で、売り手が自ら動き、商品づくりに参画する姿勢は、時代の変化に即した形といえるでしょう。

三十年以上続いていること自体が、この試みの成功を証明しています。単なる限定酒としての一過性に終わらず、毎年恒例の行事として地域の人々に浸透しているのです。消費者にとっては、秋の訪れとともに待ち望む「風物詩」のような存在となり、地元の誇りを象徴する酒として愛されています。

近年、日本酒市場は縮小傾向にある一方で、クラフト的な小ロット醸造や、地域の物語を背負った商品が注目を集めています。その意味でも、からっ風会の取り組みは先駆的であり、全国的に見ても独自の価値を放っています。地域に根差した販売網と、伝統ある蔵元の技術力が結びついたこのプロジェクトは、日本酒の未来を考える上でも重要な示唆を与えてくれるでしょう。

10月1日から店頭に並ぶ今年の「からっ風会」オリジナル酒も、きっと地域の食卓を彩り、人々の交流を温める存在になるはずです。酒販店が主導することで生まれる地域性と親しみやすさこそが、この酒の最大の魅力といえるのではないでしょうか。

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「メガネ専用」発売10周年 本家以外の酒蔵も参加し、日本酒とメガネの文化をつなぐ

日本酒業界には数多くの銘柄がありますが、その中でも異彩を放ってきたのが「メガネ専用」というユニークな名前のお酒です。宮城県の萩野酒造が2015年に発売したこの一本は、インパクトのあるネーミングと確かな味わいで人気を集め、発売から10周年を迎えた今年も注目を浴びています。

「日本酒の日」と「メガネの日」が生んだ異色の銘柄と、その広がり

そもそも「メガネ専用」という発想は、10月1日が「日本酒の日」であると同時に「メガネの日」にも制定されていることに由来します。日本酒の需要喚起とメガネ文化のユーモラスな融合を狙ったこの試みは、多くの人に驚きを与えました。当初は遊び心に満ちた企画のように見えましたが、その軽やかな発想が日本酒に新しい楽しみ方をもたらしたのです。

今年は特に記念すべき年となりました。10周年を迎えるにあたり、本家の萩野酒造だけでなく、全国の複数の蔵が賛同し、それぞれの「メガネ専用」を発売するという広がりを見せています。これにより、「メガネ専用」は一つの銘柄を超え、日本酒業界全体で楽しむイベント性を帯びるようになりました。まさに、メガネと日本酒を結ぶ文化現象といえるでしょう。

メガネと日本酒が持つ共通性と遊び心

メガネと日本酒の組み合わせは一見奇抜ですが、そこには共通する魅力があります。メガネは単なる視力矯正の道具にとどまらず、ファッションや自己表現の象徴でもあります。同じように日本酒もまた、米や水、造り手の哲学によって個性を映し出す存在です。つまり、両者は「日常を支えながらも、その人の個性を表す」という点で重なり合います。

また「専用」という言葉がもたらすユーモアも忘れてはなりません。飲み手がメガネをかけているかどうかは関係なく、ラベルに描かれた印象的な眼鏡マークを見るだけで、飲む人は自然と笑みを浮かべます。そしてメガネ愛用者同士でグラスを傾ければ、まるで秘密のサークルに参加しているかのような一体感が生まれます。これは従来の日本酒では得がたい新しい楽しみ方です。

さらに「メガネ専用」が示したのは、日本酒の世界における「遊び心」の価値です。伝統と格式を大切にする日本酒にあって、ユーモラスな銘柄は挑戦ともいえます。しかし、そうした軽やかな発想こそが若い世代や新規層の関心を引き寄せます。実際に、この銘柄をきっかけに日本酒に親しむようになったという声も少なくありません。

10年で育った「文化」とこれからの展望

発売から10年を経て、今や「メガネ専用」は一つのシンボルとなりました。今年のように複数の蔵が参加する動きは、単なる話題づくりではなく、日本酒業界全体が消費者との距離を縮めようとする意志の表れです。加えて10月1日という「日本酒の日」と「メガネの日」が重なる記念日性が、今後さらに盛り上がりを後押ししていくことでしょう。

「メガネ専用」が築いたものは、ユーモラスな一本のお酒にとどまりません。日常を彩るメガネと、日本文化を体現する酒が響き合うことで、飲む人の生活や趣味と一体化する新しい日本酒文化の可能性を示したのです。これからの10年も、こうした遊び心と共感を大切にした発想が、日本酒の世界をより豊かにしていくに違いありません。

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